写真左から、甲斐亮多(Vo, Gt)、安藤大樹(Gt, Cho)、 宮城亮太 (Dr, Cho)、榎本秀一郎 (Ba)


現役音楽エンジニアであり、ギタリストのための音作りbot(@gt_sound_making)管理人である、またらんが話題のアーティストのサウンドやアレンジの効果等を解説させていただきます。

 

今回は結成5年目を迎え、さらに躍進を続けるライブバンド、NANOSCALEの楽曲を見ていきます。 彼らの強みはそのライブ。 ライブパフォーマンスやメンバーの人柄などライブでみられるものすべてを武器にしているバンドです。 ここではサウンド面よりもライブで彼らの楽曲がどう活きるのかを中心に掘り下げていこうと思います。 
 

まず見ていくのはこの曲。 



 

 


ドラムの宮城がかねてからずっと構想を練り、書きたいと願っていた念願の1曲だそうです。 
 

イントロの頭はギター1本でのフレーズですが、すぐに他の楽器隊も入ってショートブレイクの間にボーカルが入ってサビに突入します。このセクションではギターの儚げなコード進行とベースのグリッサンドを中心にしたフレーズによって煽られる昂揚感の対比が見事で、一気にサビで盛り上げられるでしょう。 サビの後半ではドラムが裏打ちに移行するのでライブではツーステなどでお客さんをノせることができます。 間奏では空間系をかけることで印象的になったリードギターが押し出されます。ライブではメンバーがステージ前方に出てオーディエンスを煽りやすく、ライブの熱を高めていきやすいです。

 

Aメロではある程度サウンドを落ち着けつつも、熱が冷め切らないように音数を減らしすぎないようにしているように思われます。 Bメロに入る前に間奏を挟む構成も面白いですね。ここはライブで楽器隊がどれだけ映えるかを意識しているのでしょう。ここでガンガン煽りながらBメロ~サビと進行していくことでより盛り上げていけるはずです。Bメロの入りのメロディーがサビの頭のメロに近いため、Bメロを抜けてサビで音程がしっかり上がりきった時により大きな高揚感を演出しています。つまりサビでオーディエンスのボルテージが爆発するように様々な仕掛けがされているわけですね。 
 
多少全体的にややこしい展開になっているのもライブでのリピート率を上げるのに役立つと考えられます。 確かにわかりやすい方が初見でもその場で予測したノリ方で楽しめますが、予想外の展開があった場合にはノリきれなかったという形になります。しかしながら周りのファンの動きは完全に楽曲とリンクしている。つまりは自分よりもNANOSCALEの楽曲をよく知っていると思えるわけです。 人間というのは何かをよく知っていると思われたいという欲求があるものなので「自分も次のライブではこうできたらNANOSCALEのファンとして認められる」というような心理が働いてきます。 


逆にライブの常連であったりするお客さんからすると周りの人がわからなかった展開に合わせて自分がノれたということに優越感を感じたりもします。 少し考えすぎでは?と思うかもしれませんが、こういったオーディエンスの心の機微を揺さぶっていくことでライブのリピーターを増やすことに繋がっているかもしれません。 

 

次に見ていくのは「fiction」という楽曲です。

 


 



イントロから踊りやすいリズムとフレーズで作られています。 ライブでの盛り上がっている光景の想像に難くない楽曲です。 Aメロの後半はバスドラが4分でノリやすいです。逆にBメロでは複雑なリズムとなるため、その緩急がオーディエンスを飽きさせない構成といえますね。 サビでもAメロと同じく後半が裏打ちになるため展開が予測しやすく楽しみやすいものだといえるでしょう。

 

サビの最後にはリズムの強い歌のフレーズに楽器がリズムを合わせたセクションがあります。 お客さんに歌わせたり手を上げさせたりしやすいポイントです。 また2番のAメロでは手を叩くタイミングがあるのも見逃せません。ここではリードギターが弾いていないためライブの場ではお客さんに手を叩かせるようなアクションを取りやすくなっています。 
  
ライブに重きを置いたバンドは「ライブをどうやったらより楽しめるものにできるだろうか」ということを常々考えています。 その結果ライブのパフォーマンスに留まらずそれを踏まえた楽曲になっていきます。 彼らはまさにそんなバンドあってライブでの新価を発揮する曲を揃えているでしょう。 ライブ力の強いバンドの楽曲を精査していくことでライブを盛り上げる楽曲の研究が進むといえるでしょう。 
 

そんな彼らの最新MVが公開されたというので、最後にチェックしてみてください。


 


文・またらん



NANOSCALE 

2011年11月、新宿Wildside Tokyoにて初ライブを行う。2013年12月、初のフルアルバム『Wonder of NANO square』をリリース。2015年9月、2nd EP『Ms.expression』リリース。レコ発を下北沢ReGで開催(4バンド共同レコ発【Joint struggle】)、チケットソールドアウトを記録。2015年10〜12月にかけて、「Ms.expression TOUR」で13都市15公演をまわり、ツアーファイナルを渋谷club kinotoで敢行し大成功に終わる。2016年7〜8月にかけて、「 新世界パラドックス」「Super Sonic」のミュージックビデオを公開した。「人間の生きる儚さ、そして生命の美しさ、偉大なる愛、絶望の中に必ず存在する希望」を歌うロックバンド。 バンド名は【誰も知らない、小さな新世界。】という言葉が由来。 


NANOSCALE オフィシャルホームページ

http://www.nanoscalejp.com/


公式ツイッター

https://twitter.com/NANOSCALE_Bands