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ORANGE POST REASON――「余白」が奥行きを与える

ORANGE POST REASON――「余白」が奥行きを与える

muevo編集部にリクエストが寄せられた「気になるアーティスト」を紹介するmuevo pick up。今回は「ORANGE POST REASON」のサウンドの魅力を現役音楽エンジニアのまたらんが分析します。


写真左から、折原大輔(Ba)、坂口 亮(Gt)、藤原裕輔(Vo, Gt)、山﨑涼平(Dr)


現役音楽エンジニアであり、ギタリストのための音作りbot(@gt_sound_making)管理人である、またらんが話題のアーティストのサウンドやアレンジの効果等を解説させていただきます。


今回は初のフルアルバム『BLUE』を9月28日にリリースしたORANGE POST REASONの楽曲を解説させていただきます。

 





『BLUE』に収録されている楽曲から、まずは「未タイトル」という曲です。


 




まず音を見ていくとリードギターは高音側で少し控えめに鳴っていて全体のサウンドを形作っているのはサイドギターの役割が大きくなっています。しかしながらサイドギターは多少ハイを抑えた音になっていて両方のギターが合わさって一つのコードが鳴っているようなバランスで作られています。ベースは適度に前に出つつも芯の抜けてしまうことのないバランスの良い音作りになっています。


楽曲アレンジについて見ていくと、この曲はイントロのギターのフレーズが印象的です。最初はバンド全体が長い拍で鳴っているためリードギターと被る高音域が抑えられています。シンバルもクラッシュシンバルだけでなくライドシンバルを使っていますね。こうやって音域が被る楽器を意識的にあまり鳴らさないことでリードギターのフレーズを印象的にすることができます。そのあとにリズムが立ち上がっていって近い音域が鳴るようになってもリードギターの音に意識が向きやすくなります。ショートブレイクを入れてリードギターだけ残しているのも同じような効果をもたらしていますね。


Aメロに入るとバスドラの4分打ちが主体になってギターがクリーンに近い音でコードを鳴らしています。多くの楽曲ではここから次の展開に向けて少しずつリズムを立ち上げていくなどして変化を付けていくのですが、彼らはここでベースを上手く使います。最初の一回し目はベースがいないのですが二回し目から入ってくるベースはかなり印象的なフレーズを聴かせます。ここで4分打ちとは違うリズムを入れることでリズムが立体的になってきて次の展開へとつないでいくことができるのです。そして続くAメロでは大きく空間が広がったように聴かせられます。


Bメロでは打って変わって音数も少なくリズムもタイトになります。そしてキメを入れることで一気にサビの盛り上がりが演出されます。サビのメロディは音符が長めであるためビートとの差で解放感をも感じることができます。こういったちょっとした点の積み重ねで非常に気持ちいいサビが作られるわけですね。またサビ前のブレイクから歌が入る事と「忘れないように」とわかりやすい言葉が入口にあるため歌詞がすんなりとは言ってきやすくなります。その歌詞は彼ら得意の情景描写であることも大きな点です。サビからビートを変えずに間奏に入っていくことで聴き手は歌のなくなった空間に心象風景を描くような構図になっているといえるでしょう。


続いては「風しるべ」という曲です。






この「風しるべ」では「未タイトル」よりはよりシンプルに作られている印象です。Aメロからの展開もドラムがバスドラ4つ打ち+アコギから徐々にフィルでリズムを立ち上げてギターのアルペジオが入って軽いキメを入れてビートに戻るというわかりやすいパターンです。


Bメロのアレンジについてもぜひ触れておきたい点があります。Bメロの前半はリードギターがアルペジオを弾いているのですが後半になるとオクターブ奏法でレンジを狭めています。同様の手法は例えばフルコードを弾いていたところからパワーコードに移行したり、白玉コードに切り替えるパターンもあります。これらは音域を一旦絞ることでサビでの盛り上がりをより印象付ける効果があります。


サビが終わると間奏に入りますがこのバンドはここの間奏で聴き手の想像力を刺激するのが本当に上手いなぁと思いますね。サビの盛り上がりの余韻を残すようにギターを片方は白玉コードにしてドラムはライドで刻むビートに切り替わります。ここに聴き手が曲に入り込む余地を与えています。このあたりの感覚は小説を読んでいる時に近いものがあると思います。


さて、この間奏から曲が終わるまでの流れは見事というしかない出来です。基本ビートに戻ってキメ主体になり、そのキメの雰囲気を残しつつCメロに入ることでここまでの曲全体の余韻が集約されていく。そしてリズムを立ち上げていって白玉に戻ってスネアロールでまたリズムを立ち上げて。波状で期待を膨らませていったところでギターと歌だけのパートに入ることでそこに大きな感情の揺さぶりを生み出します。途中でバンドインしてもまだ大きなリズムであることでその先への予感だけを示します。そしてキメが入ってからのラスサビで今まで存分に焦らしてきたものが帰結。その気持ちよさがただひたすらに気持ちいい。この高揚感を存分に味わうには少し短いアウトロにも強い意味があります。クレッシェンドで徐々に盛り上がるアウトロながら最高潮を迎えた後に残るものは無音。ここに残された大きな余韻がこの曲一番の醍醐味だといわんばかりのアレンジです。


行間を読ませる小説は良い小説だなんて言いますが同じように聴き手に曲の中にある何かを読ませるというかそういった適度な空白があって彼らの音楽にはあって面白いです。逆に彼らは行間を読めないような人からやいのやいの言われてきたかもしれませんが、それでも自分たちの音楽を信じて続けてきたであろう重みを感じることができます。 


文・またらん





『BLUE』

 UNDER:OVER

発売中


ORANGE POST REASON

長崎県出身。2013年8月、バンド結成。2014年2月、LIVE 会場限定デモCD『Demo』を発売。手売りのみで 1000 枚を売り切る(現在廃盤)。2015年8月、「Red Bull Live on The Road」で入賞し、8月にSUMMER SONIC(TOKYO)に出演。2016年6月、初の全国流通作品、TOWER RECORDS限定シングル「未タイトル」リリース。2016年9月28日、初のフルアルバム『BLUE』リリース。2016年10月~12月、アルバムを引っさげての全国ツアー「Paint it, BLUE tour」を 開催する。


ORANGE POST REASON オフィシャルホームページ

http://www.orangepostreason.com/

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