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ゼノ――深さを湛えたサウンドスケープ

ゼノ――深さを湛えたサウンドスケープ

muevo編集部にリクエストが寄せられた「気になるアーティスト」を紹介するmuevo pick up。今回は大阪を中心に活動中のゼノの登場です。


大阪発、4ピースバンド「ゼノ」。彼らのオフィシャルサイトには、その音楽性を示す言葉はたった一言、《 illな音楽 》としか書かれていない。その言葉のみから

彼らの実像を思い浮かべることは難しいだろう。しかし実際の彼らの音楽を聴くと、その自己紹介は間違いない、と納得させられる。「ill」以外、言い表しようがないのだ。しかしそれでは紹介にならないので、本記事では7月7日にリリースした1st ep『E』を紐解きつつ、彼らの魅力をお伝えしてみようと思う。


再生を始めるとまずは、方方からノイズ混じりのギターの音が飛んでくる。続けて耳に入るのは、気怠げな女性ヴォーカル。ノチウラヒカル(Vo, Gt)の声には常に、深い憂いがこもっている。その声が紡ぐ歌は、決して言葉数が多くはない。1曲目「沈める」では〈空が笑う〉〈さよなら、またね〉と、いくつかの歌詞を繰り返す。歌詞の内容以上に耳に残るのは、叙情的な声そのものと、歌以上に饒舌なギター。言葉にすることができなかった“何か”をギターに乗せ、何かを伝えようとするかのような、そんな曲だ。



続くは、YouTubeでもMVを見ることができるリードトラック「美術館」。不穏な低音や細かに動くギターに乗せて、ノチウラは「色」「青」「空」といったキーワードが出てくる歌詞を繰り返す。やはり何度も同じフレーズが出てくるが、情感たっぷりなサウンドがその都度、少しずつ色を変えていく。情景、想い、色、様々なものが文字通り溢れ出るような、切ないような美しいような。聴くほどに曲の中へと引きずり込まれ、不思議な気持ちにさせられる。

少しスロウなテンポに乗せて独りごちるかのように歌うのは「蜉蝣」。物悲しげな声が、聴く人の寂しさをさそう。ちょうど、こんな夏の日にぴったりな曲だろうか。ゆったりと進んでいく楽曲だが、最後のセッションは圧巻の迫力。引き裂かれるような悲しみを含んだギターと、それをあくまで穏やかに支えるベースにドラム。その迫力は、アップテンポな最後の曲「溶ける」でさらに爆発する。混沌としたドラムに加え、リズムが目まぐるしく変わるから、聴いていてどうにも心がざわつく。

叫ぶように歌う最後のフレーズまで聴き終わる頃には、このバンドが自らの音楽を「ill」と言い表す意味が分かるだろう。物憂げで、病的で、どこか悲しくて、それでも聴かずにはいられない。あなたも、この音楽に病みつきになってみては。

文・小島沙耶


ゼノ
2016年結成。ノチウラヒカル(Vo, Gt)、ショウジタクヤ (Gt)、マツヤマ(Ba)、ヒラノヨウホウ(Dr)。RO69JACK 2016 for ROCK IN JAPAN FESTIVAL 入賞。2017年6月から現メンバー編成に。大阪を中心に活動を続け、新体制からわずか1カ月でNew ep『E』をリリースし、リードトラック「美術館」のMusic Videoは公開から2週間で2万回再生を超える。

オフィシャルホームページ

http://artist.aremond.net/xeno-band/

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