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アレがあるからイマうたう:連載31日目「5年間」

アレがあるからイマうたう:連載31日目「5年間」

『それでも弾こうテレキャスター』『COME TOGETHER』の配信リリースを記念して、QOOLANDの平井拓郎による期間限定の日替わりコラムを連載中。最終回は「5年間」です。


僕がQOOLANDというバンドをやってきて、来月で5年になる。
そう、5年間も続けてきたのだ。今までの人生で5年以上、続けたことなんて、小学生を6年続けたぐらいだ。


5年前は2011年だった。
『家政婦のミタ』や『魔法少女まどか☆マギカ』がヒットし、『女々しくて』『上からマリコ』という曲が、街中でかかっていた。
金正日やビン・ラディン、スティーブ・ジョブズがこの世を去り、そして、とても大きな震災があった。


思い返すと、とても昔のように感じる。やはり、「5年」という月日は、決して短くない。
何しろ、当時中学生だった人が、20歳なのだ。
世の中の様相も、ずいぶんと変わった。スカイツリーも建っていなかったし、渋谷のヒカリエも無かった。LINEなんてアプリも無かったし、ダルビッシュ有も日本で野球をしていた。
もちろん、QOOLANDもいなかったし、muevoだって無い。


そして世の中同様、僕自身も5年前と比べると、ずいぶん変わったように思う。


人体を構成する分子は、5年ですべて入れ替わる。
つまり、2011年のあなたと今日のあなたは、全く違う細胞で構成されているのだ。
誇張でもなんでもなく、僕たちは分子レベルで、生まれ変わっている。5年前の分子は、あなたの身体のどこを探しても、もう無い。僕もそうだ。心の分子だってソックリ変わった。


そして、僕を変えてくれたのは「いい出会い」と「いい戦」だった。



QOOLANDというグループを5年やることで、いろいろな人と出会った。そして、乗り越えなくてはいけない壁に、幾度もぶつかった。
いいこともあったが、いいことばかりでは無かった。むしろ、泣いたり傷ついたことのほうが多かったかもしれない。
勝ったり負けたりを繰り返しながら、なんとか走ってきた。
だけど、そのたびに少しずつ、変わってこれた。僕は天才でもないし、なんの力もない。いつも、ギリギリだった。


余裕があったことなんて、5年間まったくなかった。ずっと、限界ギリギリでやっていた。



出会った人たちと、目の前の壁を乗り越えていくのに、いつも必死だった。「ヴォーカルが悪い」「歌詞が分かりづらい」と、何度も言われた。言われるのは嫌だったし、苦しかった。足りない力で、作った歌を奏でて歌い続けた。
でも、必死だったからこそ、変われたのだと思う。


いろいろな人たちと、組み合って戦っていくうちに、僕にも変化が訪れた。「変わろう」などと、思ったわけではない。
ギリギリの環境に応じて、生態を変えないと、力の無い僕は生きていけなかったのだ。その結果、僕という人間ができた。
言い切れるが、『平井拓郎』は音楽を通して出会った人たちと、超えてきた壁によって、構成されている。
5年間のひとつひとつの出会いと壁が、僕の新しい分子になった。


出会う人にインスパイアされ、訪れた壁にインスパイアされてきた。
うまくいった日もいかなかった日も、すべてが僕をカタチ作った。今日で終わるこの「アレイマ」も同じだ。これだって、「QOOLANDの5年間」の一部だ。



原稿を31本書く前の、2016年8月30日の僕では見えなかったものが、今日の僕には見えている。


文章は「書く」というより、「作る」ものだという感覚を手にした。「書くんだけど、作る。組み立てる」という感覚は、ずっとやってきた音楽と一緒だった。
何よりも「デキルかどうか分からない」ことに、飛び込んだ経験を手に入れた。
この経験が、次の「デキルかどうか分からない」に飛び込む勇気になる。
「あのときだって俺はできた」はやがて、「自信」と呼ばれるものになる。


このお仕事も「いい出会い」からだった。僕がやりたいことをやるために、たくさんの人が動いてくれた。
毎日たくさんの文章を書くのは、大変なときもあった。だけど、どんなに大変なときでも書き続けた。
やりたいことをやり遂げられたときほど、嬉しいことはない。
一日でも原稿を落としたら、この達成感は味わえなかった。足りない力を振り絞ってやり抜いた。本当に、やって良かった。


「いい出会い」と「いい戦」で、人は変わる。
本気を出せば、「いい出会い」と「いい戦」はやってくる。
逆に言えば、本気を出していない人には「いい出会い」も「いい戦」も訪れない。
すべてを良くするも悪くするも、自分次第だからだ。


僕たちは気付いたらいつも、「それなり」に人生を歩んでいってしまう。勉強、部活、仕事、家族。僕たちの人生は、いろいろなファクターに彩られている。
しかし、その中の何かに対して、「本気」で取り組んだことが、いくつあるだろうか。


僕は、ひとつも無かった。
いつも人や環境、才能のせいにして、文句ばかり垂れていた。
「人のことを憎み始めたらヒマな証拠」という西原理恵子さんの言葉があるが、その通り、僕はいつも、ヒマだった。
「本気」という言葉からはほど遠い、ヒマ人だった。


つまらない自分の人生は、誰よりもつまらない自分のせいだった。しかし、あの頃の僕の気持ちも、分からないでもない。
やはり「本気でやる」というのは、ハードルが高いのだ。


「本気でやるのは難しい」と、5年目にして思った。


なかなか人は、リミッターを外せない。
一度外れても、ほとんどの場合、3日で戻る。本当に本気ならリミッターは、外し続けないといけない。
継続できないものは、誰も本気と呼ばないと思う。本気は発火と継続と成長で、できている。
それは思考停止した根性論なんかとは、まったく違う次元にある。



もはや僕の中では、「野球選手になりたい」「会社をやりたい」という言葉と「本気でやりたい」という言葉は、同等に並ぶ。
それぐらい難しいし、尊い。しかし、「本気でやる」しか、自分を変える手段はない。
あなたがもしも「変わりたい」なら、本気を出すしかない。
誰にでも「本気でやる」才能はある。
「変わりたい」と思えば、誰しもがギリギリの力を振り絞れる。


QOOLANDのおかげで、僕は本気になれた。
本気になれたことを、あたりまえだとは思っていないし、最高の財産だと感じている。
独りぼっちでは絶対にムリだった。メンバーやスタッフ、力になってくれた人。
何より、ファンの人たちのおかげで、僕は本気になり、人生の方角を変えた。


今日まで、休むことなくやってきた。
ライブは452本、リリースは8タイトル。
量が質を作ると信じてきた。


僕たちは、10月15日に455本目、5周年のライブを行う。4人でひとつの答えを出した。もう誰のせいにもせず、環境のせいにもしない。そう、誓った。出した答えを改めて、しっかりと伝えたい。


さて、この「アレイマ」も大詰めだ。


そもそもの「僕をインスパイアしたものについて書く」というアイディアは、スタッフによるものだった。
「アレがあるからイマうたう」というタイトルは、muevoのメディア担当さんが考えてくれた。
とても気に入っている。


最後になったけど、いつも読んでくれた人、たまに読んでくれた人、本当にありがとう。
31日間、楽ではなかったけど、とても楽しく充実した1カ月でした。
これからもとどまることなく、進んでいきます。


文・平井拓郎




QOOLAND

平井 拓郎(Vo, Gt)

川﨑 純(Gt)

菅 ひであき(Ba, Cho, Shout)

タカギ皓平 (Dr)


2011年10月14日結成。無料ダウンロード音源「Download」を配信。2013年5月8日、1stフルアルバム『それでも弾こうテレキャスター』をリリースする。同年夏、ロッキング・オン主催オーディション RO69JACKにてグランプリを獲得。ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013に出演した。その後もROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014、COUNTDOWN JAPAN 14/15等の大型ロックフェスに続けて出演。2015年夏、クラウドファウンディングで「ファン参加型アルバム制作プロジェクト」を決行。200万円を超える支援額を達成し、フルアルバムの制作に取りかかった。2015年12月9日、2ndフルアルバム『COME TOGETHER』発表。2016年8月6日、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016に出演。 HILLSIDE STAGEのトリを務めた。


QOOLAND オフィシャルホームページ

http://qooland.com/


公式ブログ

http://lineblog.me/qooland/


平井拓郎 公式ツイッター

https://twitter.com/takuro_qld

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