• muevo
  • muevo voice
アレがあるからイマうたう:連載21日目「風が吹けば桶屋が儲かる」

アレがあるからイマうたう:連載21日目「風が吹けば桶屋が儲かる」

『それでも弾こうテレキャスター』『COME TOGETHER』の配信リリースを記念して、QOOLANDの平井拓郎による期間限定の日替わりコラムを連載中。第21回目は「風が吹けば桶屋が儲かる」です。


風が吹けば砂ぼこりで失明する人が多くなる。失明すれば、三味線(しゃみせん)で生計を立てようとする。三味線を弾く人が増え、三味線の胴に張る、ネコの皮の需要が増える。そのためネコの数が減少し、猫が減れば、猫が捕まえるネズミの数が増える。ネズミは桶をかじるから、桶がよく売れるようになり、桶屋が儲かる。


影響がめぐりめぐって、作用することの例えだ。


僕はこのことわざ、ひいてはこの考え方が大好きだ。「パッと見ると関連性のないモノが、じつはヒモづいている」。僕が音楽を作るうえでも、文章を書くうえでも、人生を決めていくうえでも、大切にしている考え方だ。意外なモノを関連づけて、発想させていくことが、オリジナリティを生むと信じている。

この喩えは、江戸時代の浮世草子のお話がもとになっている。そのため、現代社会にあてはめると、少し分かりづらい。砂ぼこり程度で失明するとは思えないし、失明したとしても、三味線のプレイヤー以外にも仕事はあるだろう。「桶」と言われても、木製の桶を使っている家は少ないだろうし、日常的にネズミを見かける機会もほとんど無い。

引用だが、このことわざを美しく表現するうえで、こんな一節がある。

風が吹くと、木々の枝がさわさわと揺れる
それを見た詩人が美しい詩を書く
それを読んだ人が優しい気持ちになる
優しい人が増えると恋をして結婚する人が増える
結婚すると赤ちゃんが生まれ、産湯(うぶゆ)用の桶が売れる

すごい発想力とオリジナリティだと思う。

このことわざに対して、僕も僕なりの光の当て方をしている。浮かび上がるのは「行動すれば、現状の何かが変わる」という哲学だ。

人間は何かを学んで、変わっていく生き物だ。学びを辞めてしまえば、成長は止まってしまう。後は頭の固い偏屈な老人になっていくだけだ。表現者としては、もはや生きている意味がない。

「本を一冊読めば、明日は読んだ自分になれる。読まなければ今日と何も変わらない」とダルビッシュ有が言っていたが、そのとおりだと思う。学ばないと変わらないし、変わらなければつまらない。

しかし、「変わりたい」だけでは当然だけど、何も変わらない。人間は嘘をつく生き物だし、自分自身にもまわりにも信じてもらうには、行動を変えるしかない。「考えを変える」というフェーズは外から見ると、何も変わっていない。「行動を変える」というフェーズに至り、ようやく人は変わっていく。

僕は7月23日から、「自分の考えを誰かに伝えてみる」ということを始めてみた。「思っているだけ」というフェーズを超えたくなった。それまで「黙っている美学がある」とか、もっともらしい言い訳をして、逃げていた自分を、さらし上げることにした。その行動として、100日連続と365日連続を目標にして、日刊でブログを書いてみようと思った。

書いてみたら、一時間ぐらいかかった。一日に絶対に確保できる時間だけど、ボーッとしていたら簡単に失くなる時間だ。だが、365日「思考して、書き起こす」を積み上げれば、3650時間、15日分にもなる。その時間を「自分の考えを誰かに伝えてみる」時間にしてみたいと思った。

一週間ぐらい続くと、「最近毎日書いているね」と言われるようになった。一ヶ月を過ぎただけで、ずいぶんと違ってきた。「毎日書いている人」になって、「たくさん書く人」になった。いろんな人からメールやメッセージを頂くようになった。

そしてここ、muevoのメディア欄でも、日刊記事を書く機会に恵まれた。僕の文章が自分の庭を出て、ヨソの庭にまで広がった瞬間だった。ここに僕が足を踏み出したことで、今まで会えなかった人に会えたり、聞けなかった話が聞けたり、知らなかった本に出会えたり、新しい考え方に出会えた。

僕が書いてきたことで、muevoという会社の人たちにも新しい風を吹き込んだ。QOOLANDを好きな人たちが、muevoにアクセスすることにもなった。この連載を読んで『あしたのジョー』や『ホーリーランド』、『ホワイトアルバム』を買った人もいるそうだ。もしかしたら「テレキャスター」を買って、「レコーディング」を始めて、「カノン進行」で音楽を作りはじめる人が出てくるかもしれない。

もし、僕が「自分の考えを誰かに伝えてみる」という行動を起こしていなかったら、これらはすべて、発生しなかった。

何かを蹴りだしたら、何かが変わる。変わっていくことは熱くなるし、楽しい。短絡的に結果を追い求めても、それなりのモノしか手に入らない。風が弱いと、桶屋もそれなりにしか儲からない。


強い風を吹かせたい。「楽しいことしか楽しくない」のはつまらない。



文・平井拓郎(QOOLAND)



QOOLAND
平井 拓郎(Vo, Gt)
川﨑 純(Gt)
菅 ひであき(Ba, Cho, Shout)
タカギ皓平 (Dr)

2011年10月14日結成。無料ダウンロード音源「Download」を配信。2013年5月8日、1stフルアルバム『それでも弾こうテレキャスター』をリリースする。同年夏、ロッキング・オン主催オーディション RO69JACKにてグランプリを獲得。ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013に出演した。その後もROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014、COUNTDOWN JAPAN 14/15等の大型ロックフェスに続けて出演。2015年夏、クラウドファウンディングで「ファン参加型アルバム制作プロジェクト」を決行。200万円を超える支援額を達成し、フルアルバムの制作に取りかかった。2015年12月9日、2ndフルアルバム『COME TOGETHER』発表。2016年8月6日、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016に出演。 HILLSIDE STAGEのトリを務めた。

QOOLAND オフィシャルホームページ

公式ブログ

平井拓郎 公式ツイッター

連載記事

アレがあるからイマうたう:連載1日目「サマーソニック」
アレがあるからイマうたう:連載2日目「あしたのジョー」
アレがあるからイマうたう:連載3日目「ポケットモンスター」
アレがあるからイマうたう:連載4日目「自分の小さな『箱』から脱出する方法」
アレがあるからイマうたう:連載5日目「イチロー」
アレがあるからイマうたう:連載6日目「ドラえもん」
アレがあるからイマうたう:連載7日目「カノン進行」
アレがあるからイマうたう:連載8日目「走る」
アレがあるからイマうたう:連載9日目「ホーリーランド」
アレがあるからイマうたう:連載10日目「大阪十三」
アレがあるからイマうたう:連載11日目「カプセルホテル 」
アレがあるからイマうたう:連載12日目「下北沢」
アレがあるからイマうたう:連載13日目「スティーブ・ジョブズ」
アレがあるからイマうたう:連載14日目「デスノート」
アレがあるからイマうたう:連載15日目「ビートルズ」
アレがあるからイマうたう:連載16日目「テレキャスター」
アレがあるからイマうたう:連載17日目「レコーディング」
アレがあるからイマうたう:連載18日目「人間失格」
アレがあるからイマうたう:連載19日目「こち亀」
アレがあるからイマうたう:連載20日目「土方歳三」
アレがあるからイマうたう:連載21日目「風が吹けば桶屋が儲かる」
アレがあるからイマうたう:連載22日目「中学時代」
アレがあるからイマうたう:連載23日目「携帯電話」
アレがあるからイマうたう:連載24日目「書くということ、読むということ」
アレがあるからイマうたう:連載25日目「夜行バス」
アレがあるからイマうたう:連載26日目「淀川」
アレがあるからイマうたう:連載27日目「『断つ』ということ」
アレがあるからイマうたう:連載28日目「クラウドファンディング」
アレがあるからイマうたう:連載29日目「屋久島」
アレがあるからイマうたう:連載30日目「メンター」
アレがあるからイマうたう:連載31日目「5年間」

カテゴリ一覧