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アレがあるからイマうたう:連載1日目「サマーソニック」

アレがあるからイマうたう:連載1日目「サマーソニック」

『それでも弾こうテレキャスター』『COME TOGETHER』の配信リリースを記念して、QOOLANDの平井拓郎による期間限定の日替わりコラムがスタート。第1回目は「サマーソニック」です。


フェスが増えた。本当に増えた。


数も増えたが形態も増えた。複数のライブハウスを行き来するサーキットフェスや、個人の企画である小規模なもの、アーティスト本人が主催するものまである。本当にフェスは年々凄まじい勢いで盛り上がっている。もはや音楽シーンで生きている者にとって、フェスは避けて通れなくなっているコンテンツだ。


気になったので、ちらっとフェスの動員数を調べてみた。正直トンデモない動員数だ。東京ドーム何個分の話だった。調べた先のサイトに「成長率は目を見張るものがあります」とか書いていたが、目を見張るどころの騒ぎじゃねぇよ!と思った。

今回書かせてもらうのは僕がこの「フェス」という怪物に初めて触れた話だ。そのフェスの名は『SUMMER SONIC 04 OSAKA』その名を知らないヤツは絶対にモグリ!と言っても過言ではない日本四大ロックフェスの一つ、通称サマソニだ。高校2年生だった僕はこのサマソニへ行くことにした。SUM 41というバンドが見たかったのだ。

当時の僕はSUM 41にハマりにハマっていた。暴力的なギターに風のような疾走感、美しいメロディとカリスマ性の宿る声。一発でファンになった。毎日SUM41のCDを聴き、必死にSUM 41の曲を練習した。当時の携帯のメールアドレスはsum-41-takuro-forever@docomo.ne.jpという最高にクレイジーでハイセンスなものに変更された。



このSUM 41がなんとサマソニにやってくる。行くしかない! 行かないという選択肢はなかった。

当日、会場の大阪・南港WTCオープンエアスタジアムは凄まじい熱気に包まれた。信じられないほどの暑さだった。熱気のせいかと思ったら、実際に気温が高すぎた。夏フェス初参加の僕は熱中症半歩手前になりながら、完全にグロッキーだった。まだ前半戦だった。

僕は馬鹿な子どもだったので、帽子、タオルなどの暑さ対策を何一つせずに行った。それがロックだと思った(みなさん夏フェスでは熱中症対策をしっかりしてください)。楽しいフェス会場で一人、死にかけていた。オマケにいろいろなステージを観に行けるフェスのシステムも知らなかったので、ひたすらメインステージで太陽に焼かれていた。身体より脳が焼けそうな苦しみだった。今でも忘れられない。KASABIANもThe Hivesも観なかった自分の愚かさも忘れられない。

もう限界だと思ったその時、SUM 41は出てきた。CDや雑誌の中の人間だったSUM 41がさっそうと登場したのだ。ここで「ムチャクチャ良かったー!」となれば美しい流れなのだが、申し訳ない。ぶっちゃけ良いのか悪いのか、ぜんぜんわからなかった。

彼らのステージのクオリティなのか、自分の脳みその配線が熱で焼かれてしまったのかは、今でも謎に包まれたままだ。だけど確実に言えるのは、立つはずだと思っていた僕の鳥肌はあの日、たしかに立たなかった。大好きなSUM 41が終わり、もう目当てのバンドはいなかった。帰りたい気持ち半分と、「おかねもったいないから最後までいなきゃ」という気持ち半分だった。

そうこうしているうちに、日が暮れて大トリのバンドの出演時間になっていた。サマソニの大トリはグリーン・デイだった。当時の僕からするとグリーン・デイは「SUM41より簡単な曲をやっているバンド」でしかなかった。SUM 41みたいに難しいギターを弾いていないからだ。簡単な曲しかできない。それはへたくそだから。グリーン・デイはへたくそ。そう思っていた。僕は馬鹿な子どもだった。

そして、彼らは一曲目にまだ発売前の「アメリカン・イディオット」を演奏した。



衝撃的だった。圧倒的だった。

ザーッと音がしそうな量の鳥肌は、物凄い速度で僕の身体をはいずり回った。「全身が総毛立つ」という体験を人生で初めてした。

演奏が簡単な曲ばかりなのに、誰もが感動する演奏と歌唱だった。CDの枠に収まらないダイナミックなステージングは世界最強のバンドの姿そのものだった。

「ライブってこんなに人の心が動かせるのか」と思った。そして僕をグリーン・デイの前に連れてきてくれたのはサマソニだった。サマソニが無ければ、僕はGREEN DAYの価値に気付けないまま人生を歩んだだろう。その日から僕はグリーン・デイにハマりまくった。その後すぐのジャパンツアーにも行った。素晴らしかった。

フェスは新しい音楽に出会う最大のチャンスだ。新しい音楽に出会い、感動する。それは自分でも知らない、自分に出会うということだ。僕はあの日、「大事なのはテクニックじゃなく魂に触れること」の素晴らしさに感動した。それに対して、感動する自分と出会えた。

2004年のサマソニがあったから僕はイマも歌えている。


文・平井拓郎(QOOLAND)



QOOLAND

平井 拓郎(Vo, Gt)

川﨑 純(Gt)

菅 ひであき(Ba, Cho, Shout)

タカギ皓平 (Dr)


2011年10月14日結成。無料ダウンロード音源「Download」を配信。2013年5月8日、1stフルアルバム『それでも弾こうテレキャスター』をリリースする。同年夏、ロッキング・オン主催オーディション RO69JACKにてグランプリを獲得。ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013に出演した。その後もROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014、COUNTDOWN JAPAN 14/15等の大型ロックフェスに続けて出演。2015年夏、クラウドファウンディングで「ファン参加型アルバム制作プロジェクト」を決行。200万円を超える支援額を達成し、フルアルバムの制作に取りかかった。2015年12月9日、2ndフルアルバム『COME TOGETHER』発表。2016年8月6日、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016に出演。 HILLSIDE STAGEのトリを務めた。


QOOLAND オフィシャルホームページ

http://qooland.com/


公式ブログ

http://lineblog.me/qooland/


平井拓郎 公式ツイッター

https://twitter.com/takuro_qld

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