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アレがあるからイマうたう:連載7日目「カノン進行」

アレがあるからイマうたう:連載7日目「カノン進行」

『それでも弾こうテレキャスター』『COME TOGETHER』の配信リリースを記念して、QOOLANDの平井拓郎による期間限定の日替わりコラムがスタート。第7回目は「カノン進行」です。



音楽にはコード進行というものがある。作曲をするとき、メロディやサウンドを彩る骨格のようなものである。このコード進行の中でも僕が愛してやまない「カノン進行」というものがある。ヨハン・パッペルベルの作曲したクラシックの名曲「カノン」で用いられたコード進行だ。






「愛は勝つ」「さくら(独唱)」「ジングルベル」「翼をください」「明日への扉」「TOMORROW」「勇気100%」etc.

これら数多くのヒットソングにもカノン進行は使われている。このカノン進行とともに僕は成長してきた。というよりもカノン進行が無ければ僕は何もできなかった。僕が作曲を始めたのは中学二年生のときだった。当時所属していた野球部を辞め、3万円のアコースティック・ギターを鳴らして、ひたすら曲を作っていた。

学校にもあまり行かず、がむしゃらにノートに曲を書き続けた。聴くに耐えないような、独りよがりな音楽だったが、間違いなく一生懸命だった。自分の中の気持ちを吐き出して、世の中にまだ存在していないものを記録していく。それは当時の僕にとって、とても意味があることのように思えた。

そして音楽を聴く数よりも、作る数のほうが多かった。「インプットをしないと良いアウトプットができない」といろいろな世界で言われているが、昔から僕は「インプット:アウトプット=1:10」の比率でやっていた。

吸収することは大切なのだが、何かを発する方が好きだった。今も昔もそこは変わらない。
しかし、その弊害もある。音楽をぜんぜん聴かなかったせいで、僕はコード進行を2つしか知らなかったのだ。その1つがカノン進行である。もう1つが「王道進行」と呼ばれるものである。

僕は当時19(ジューク)というユニットが大好きだった。19はこのカノン進行をひたすら使っていた。そして同じコード進行を用いても、ぜんぜん違う曲に仕上げることができることを19は体現していた。あの頃の僕は19ぐらいしか音楽を聴かなかったので、音楽性の幅はかなり狭かった。

中学時代の僕は「カノン進行」と「王道進行」の2つのコード進行のみで、60曲ぐらいの作曲を行った。どう考えても不自由すぎるのだが、それぐらいこの2つのコード進行に依存していた。

コード進行には著作権が無く、既存の曲と同じ進行を使って作っても問題はない。「さくら(独唱)」「ジングルベル」は同じカノン進行だが、とても同じには聴こえないと思う。


この「コード進行が2つのみ」という枠組みの中で、いろいろな毛色の曲を制作することは大変だった。行き詰まることが何度もあった。だが、カノン進行ばかりで曲を作っていた時期のおかげで、僕は人よりも深くカノン進行ついて、知ることができた。今も街中で音楽が耳に入ってきてもカノン進行で作られた音楽だけは瞬時にわかる。


自分にしかないカノン進行の崩し方もいくつもあみ出した。カノン進行は一部では「禁断の果実」とも呼ばれている。「カノン進行を使えばヒットソングを作れるが、一発屋で終わる」という都市伝説のようなものだ。ヨハン・パッペルベルも有名な曲は「カノン」1曲しか無い。

もちろんこれは迷信だと思う。Mr.Childrenやスピッツもカノン進行を連発しているが、何曲もヒットしている。しかし都市伝説が本当かウソかはともかく、コード進行という音楽の潜在的なもので、こんな話が出るのはカノン進行ぐらいのものだろう。

14歳の僕はカノン進行に依存して60曲近く作ったが、これは別の進行では作れなかった気がする。カノン進行特有の魔力や、その普遍性と柔軟性が作らせてくれたと思っている。


いまだにカノン進行を使うことがある。曲として発表されることもあるし、制作の段階でツールとして使うときもある。僕はどんなメロディを作っても、一度はカノン進行を当ててみることにしている。

カノン進行はコード進行自体に強いパワーがあるので、できたメロディの強度が弱いと飲まれてしまうのだ。この「強いメロディ」を選定するうえで、カノン進行はとても良い物差しになっている。そして、関門を通過した強いメロディが違う進行に乗ったり、そのままカノン進行に乗ったりする。

コード進行に絶対的なものなど無いが、僕の作家としての中核にはカノン進行がどっしりと根を生やしている。いろいろなコード進行を覚えた今もカノン進行には深い信仰がある。

ちなみに下記の曲は僕が作ったものだが、この曲も「カノン進行」と「王道進行」の2つの進行しか使っていない。

QOOLAND「Come Together」




文・平井拓郎(QOOLAND)




QOOLAND
平井 拓郎(Vo, Gt)
川﨑 純(Gt)
菅 ひであき(Ba, Cho, Shout)
タカギ皓平 (Dr)

2011年10月14日結成。無料ダウンロード音源「Download」を配信。2013年5月8日、1stフルアルバム『それでも弾こうテレキャスター』をリリースする。同年夏、ロッキング・オン主催オーディション RO69JACKにてグランプリを獲得。ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013に出演した。その後もROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014、COUNTDOWN JAPAN 14/15等の大型ロックフェスに続けて出演。2015年夏、クラウドファウンディングで「ファン参加型アルバム制作プロジェクト」を決行。200万円を超える支援額を達成し、フルアルバムの制作に取りかかった。2015年12月9日、2ndフルアルバム『COME TOGETHER』発表。2016年8月6日、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016に出演。 HILLSIDE STAGEのトリを務めた。

QOOLAND オフィシャルホームページ

http://qooland.com/


公式ブログ
http://lineblog.me/qooland/

平井拓郎 公式ツイッター

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