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アレがあるからイマうたう:連載16日目「テレキャスター」

アレがあるからイマうたう:連載16日目「テレキャスター」

『それでも弾こうテレキャスター』『COME TOGETHER』の配信リリースを記念して、QOOLANDの平井拓郎による期間限定の日替わりコラムを連載中。第16回目は「テレキャスター」です。


テレキャスター。何の言葉かご存知だろうか。エレクトリックギターの名前だ。


りんごにふじ、ジョナゴールド、つがる、王林と名前があるように、パスタにペペロンチーノ、ボロネーゼ、ジェノベーゼと名前があるように、実は、ギターにも名前がある。テレキャスター、ストラトキャスター、レスポール、ジャズマスター、ジャガー、ムスタング、SG、フライングV、モッキンバード etc.…


本当にたくさんある。今日はその中でも、僕の愛器「テレキャスター」についてのお話。

今から56年前の1950年。世界最初のエレキギターとして、フェンダー社の「ブロードキャスター」通称ノーキャスターが誕生した。商標の問題で、翌年「テレキャスター」と名を改め、今日まで世界中のプレイヤーに愛されている。

僕は15歳のときに初めて、エレキギターを買った。エレキギターは、ギブソン社とフェンダー社の二大ブランドと言われるが、僕はどこかギブソン社を敬遠していた。「ハードロック」や「やたら上手いロン毛のおっさんが弾くもの」というイメージがあったのだ。

消去法により、僕はフェンダー派になった。

15歳のときに買ったギターは、フェンダーのストラトキャスターだった。1954年に、テレキャスターのモデルチェンジをテーマに制作されたギターだ。後発の商品のため、機能は追加され、テレキャスターよりも出せる音色は多い。テレキャスターよりも音が柔らかい印象を受ける。

しばらくストラトを弾いていたが、ある日、僕はテレキャスターを買い、ストラトキャスターは売ってしまった。楽器屋で一度、試しに弾いたテレキャスターの魅力に、ぞっこんになってしまったからだった。

シンプルで、無骨で機能も少ないテレキャスターには、ストラトキャスターには無い、独特の魅力があった。まるで、すっぴんのようなギターだと思った。それはキング・オブ・エレキギターと呼ばれる、レスポールにすら無い魅力だった。

サスティーンと呼ばれる音の伸びが短く、妙に金属的なカキーンとした、制御しづらい暴れがちのサウンド。バンドサウンドで鳴らしても、変に目立ち、調和がとりづらい。でも、調和よりも自分の感性に直結してくれるような、その音色に魅了された。

6弦をジャランと鳴らすと、他のギターと、コードの鳴り方がまるで違う。テレキャスにしかない「鳴り」があった。全部の弦が完全に鳴りきるというか、アコースティックに近いフィーリングで弾ける。

「素晴らしい楽器」というよりも、直接的に自分が表現したい音が飛び出る感覚だった。「テレは覚悟のいるギター」と表現しているギタリストもいた。そのとおりだと思った。それらの特性は、ずっと独りで音楽を作ってきた僕にぴったりだと思った。「この音をバンドで鳴らせるギタリストになりたい」と思った。

大好きなビートルズも後期になると、レコーディングでテレキャスターを効果的に使っていた。最も有名な曲、「Let It be」のギターソロもテレキャスターによるものだ。

ただ、この頃のビートルズの状態は末期だったため、ジョージ・ハリスンも思い入れが無かったのか、このテレキャスターは友人のデラニー・ブラムレットにあげてしまう。このジョージのあげたテレキャスターのサウンドはデラニー&ボニーのアルバム『オン・ツアー』で聴ける。

そんなテレキャスにまつわる話も大好きだった。テレキャスはとても丈夫なギターなので、コンディションが安定している。そして、ギターとしての寿命が長い。そのせいか逸話や名言が多い。

QOOLANDでも僕はずっと、テレキャスターを弾いてきた。『毎日弾こうテレキャスター』というアルバムを作るまでに至った。そして、昨年ついに、自分のオリジナルのテレキャスターを作ってもらえることになった。フェンダー社ではない、自分だけのテレキャスターだ。

市販のテレキャスターよりも、さらに軽量化した。軽いギターは、ピックが当たってから、すぐに音が出るというか、反応がとても良い。さらに、市販の物よりも、音に少しねばりが生まれたように思う。シェイプはオリジナルのものにして、内臓部はすべてテレキャスターのエッセンスを引き継いだ。根本的なサウンドは変えたくなかったからだ。

後発のストラトキャスターはムダがなく、理にかなった完璧なエレキギターだ。テレキャスターの不便さやデメリットを、すべて解決したギターとも言える。

しかし、1954年以降もテレキャスターは廃盤にならなかった。フェンダー社の中で、ストラトとテレキャスは共存し続けた。テレキャスターには、完璧さとはほど遠い、不器用で直情的なロマンが詰まっているからだと思っている。

それを求めるギタリストは、いつの世もいる。僕らテレキャス使いのギタリストは品質じゃなく、ロマンを弾いている。




文・平井拓郎(QOOLAND)



QOOLAND

平井 拓郎(Vo, Gt)

川﨑 純(Gt)
菅 ひであき(Ba, Cho, Shout)
タカギ皓平 (Dr)

2011年10月14日結成。無料ダウンロード音源「Download」を配信。2013年5月8日、1stフルアルバム『それでも弾こうテレキャスター』をリリースする。同年夏、ロッキング・オン主催オーディション RO69JACKにてグランプリを獲得。ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013に出演した。その後もROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014、COUNTDOWN JAPAN 14/15等の大型ロックフェスに続けて出演。2015年夏、クラウドファウンディングで「ファン参加型アルバム制作プロジェクト」を決行。200万円を超える支援額を達成し、フルアルバムの制作に取りかかった。2015年12月9日、2ndフルアルバム『COME TOGETHER』発表。2016年8月6日、ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016に出演。 HILLSIDE STAGEのトリを務めた。

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公式ブログ

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