世間的にバンドにおけるベーシストというのは何故だか虐げられる傾向にある。
かく言う筆者も中学時代より吹奏楽部でコントラバスを演奏していたことからベースの魅力にとりつかれ15年来ベースを弾いているのであるが、やはりファンからの人気が高いのはボーカルやギターであり、「まぁどうせ俺はベーシストだし…」と卑屈になるというシチュエーションを身を持って体験してきた。
最近でもTwitterやNAVERまとめなどで「ベーシストは変態!近づくな!危険!」というようなあらぬレッテルを貼られている記事を目の当たりにして枕を濡らす夜もあった。

そこで「ベーシスト=変態」となってしまった経緯を個人的に考察してみたのだが、こういうことではないだろうか。


①ムッツリスケベ野郎説


バンドと言うのは目立ちたがり屋のすることだ。それは認める。
いい曲を作ってみんなに聴いてもらいたいという欲がなければ成立しないからな。
ところがベースというのは言わば縁の下の力持ち。
歌やリードを邪魔しないようにしながらコード感とビート感を与えるのが主な仕事である。


そこで一つの矛盾が生まれる。
「バンドやってるからには目立ちたい。でも注目されないようにつつましくやる」というスタンスの楽器、所謂「ムッツリすけべ野郎のやる楽器」だと思われているのに違いないのである。

②どスケベ野郎説


「低音は女性の子宮を刺激する」なんていう説を聴くことがある。
事実、ライブハウスなんかで演奏するときの低音の響き方はCDやテレビからでは到底感じることの出来るようなものではない。
それをわかっててやってるベーシストがいるとしればそれはもはや私生活からさぞド変態のどスケベ野郎なのだろう。

③ものすごいテクニシャン説


ベースには3種類の弾き方がある。
一つはピック弾き。
アタック音が強くゴリゴリとした音が出せるので心地よいビート感が出る。
また、激しいパフォーマンスにもぶれにくい。
二つ目はスラップ。
親指で叩くように慣らすサムピングと弦をバチっと引っ張るようにして鳴らすプリングを組み合わせる奏法で、難易度が比較的高い。
そして三つめが指弾き。
親指をピックアップなどに固定して人差し指と中指を使って弾く奏法。
一番オーソドックスな弾き方である。
これほどの奏法を使い分けながら奏でるベーシストはさぞすごいテクを持っているのだと誤解されるのだろう。
特に指弾きなんて見てしまった日にはそんなことを考える女性も少なくないはずである。

私が思うにベーシストというのは基本的にこの3つ全て当てはまっているのではないかと思う。
しかしベーシストを卑下したいわけではない。
前述したようにベーシストというのはギターやボーカルのように前に出るわけでもなく、落ち着いてビートを守りながら全体を見渡すような、言わばオーナーとバイトに板挟みにされたコンビニの雇われ店長のような中間管理職なのだ。
そんな役割を自ら進んでこなし、なおかつそこにベーシストたる所以を見出し、ベーシストたる喜びと快感に溺れているのである。
そんな人間が変態であることになんの疑問があるだろうか。

ベーシストはこういうものだと割り切った上でリスナーはそういう目で見て欲しいし、ベーシストのみんなは卑屈にならないで欲しい。
ベーシストに幸あれ。