・photo by 木村和平


 



薄鈍色(うすにびいろ)とは、鈍色よりも薄いねずみ色のことを指す。


鈍色が平安時代には喪服に用いられたと聞くと、なんだか縁起の悪そうな印象を受けるかもしれないが、ラッキーオールドサンの美しいくすみ感にはぴったりな形容かと思う。


ラッキーオールドサンはナナ(Vo,Key)と 篠原良彰(Vo,Gt)による男女ポップデュオである。


視覚的要素に力を入れ、懐かしいフレーバーと可愛らしい見た目に拘った文字選びの光る作品たちは、30代の男性たちや音楽好きのツボを見事に押さえ、反骨精神のうかがえる姿勢や芯の感じられるテイストが人気を呼んでいる。


一方では、わかりやすく噛み砕かれた言葉と、光を浴びてきらきらと輝く波のようなポップな曲が若者の支持を集め、学生によるコピーバンドも多数存在している。


この幅広さがラッキーオールドサンの音楽性における懐の広さを証明していると言えるだろう。


■1stフルアルバム「ラッキーオールドサン」より


リードトラック『ミッドナイト・バス





 



 



まずタイトルの『ミッドナイト・バス』だが、その中黒が素晴らしい。これがあるかないかで文字列の印象は全然変わってくる。『ミッドナイトバス』でなく『ミッドナイト・バス』でなければ、ラッキーオールドサンではない。こうした細部での演出こそが、彼らの世界観の構築に不可欠な要素と言える。


彼らの楽曲に一貫していえることだが、ナナの無垢なヴォーカルに合わさる篠原のコーラスが、女子と男子という一線を踏み越え、交わったり反発しあったりする青春の一瞬を切りとるようで、素晴らしい。



 



 



■『坂の多い街と退屈





 



 



■ミニアルバム『I'm so sorry, mom』より


リードトラック『海へと続く道





 



 



こなれ感のあるサウンドと、つぶやきのような歌詞が心地よい。車のなか、この一曲だけを頼りにどこまでも走ってゆけそうだ。目的地はもちろん海。二度と同じ形を寄せない波のように、離れてしまいそうなふたりの気持ちが風に煽られきらめいて見える。


そんなラッキーオールドサンは、先月28日、ぴあ主催イベント“PMC presents MUSIC COMPLEX 2016,winter”にて、Lucky Kilimanjaro LUCKY TAPESとの共演を果たしている。


「ラッキー」のつくアーティストを集めた通称「ラッキースリーマン」は、その名の通り出演者や観客のすべてがラッキーな幸福感に満たされた夜となった。


「ラッキー」に恵まれたいあなたには、1stフルアルバム「ラッキーオールドサン」発売記念イベントに駆けつけていただきたい。」


3月6日(日)に新宿プーク人形劇場での開催が決定しているので、続報はラッキーオールドサンのtwitterをチェック!