某映像視聴サイトでトクマルシューゴの名前を検索すると、表示されるのは音楽ファンであろうとなかろうと、一見した誰しもをあっと言わせる動画ばかりで驚かされる。
トクマルシューゴ 『 Katachi 』
ストップモーションを駆使した映像といい、その音楽といい、センスがあまりに日本人離れしていると感じるのは私だけではないはずだ。その証拠に彼のデビューは国内でより、海外で先駆けた。
トクマルシューゴは東京出身。ギターと玩具を主軸に無数の楽器を演奏する音楽家。楽曲の全てを作詞・作曲、演奏、アレンジ、レコーディング、ミキシングまでひとりで手掛ける。
2004年、米NYのインディ・レーベルより、1stアルバム『Night Piece』をリリース。無名の日本人、日本語歌詞であったにもかかわらず、各国のメディアで絶賛を浴び、世界中から注文が殺到して初回プレス分は瞬く間に売り切れる。
2ndアルバム『L.S.T.』も海外リリースされ、雑誌、新聞、ラジオ等で大きく取り上げられる。3rdアルバム『EXIT』はSony-BMG傘下のレーベルより海外リリース。北米ツアーでは4公演全てがソールドアウト。フジロック、NANO MUGEN FES、ヨーロッパ最大級の音楽フェス、ロスキレなど相次いで出演。
4thアルバム『Port Entropy』をリリース、日本全国13カ所でツアーを行い全公演が即ソールドアウト。NHK『トップランナー』に出演。「Clocca」がバンクーバーオリンピックのスポットCMに起用。無印良品のCMを手がけるなど、全国的に知名度を上げていく。
2011年には自身が主宰する"TONOFON"を立ち上げフェスなどを開催。フジロックにて満員のWHITE STAGEに出演。5thアルバム『In Focus?』をワールドリリース。"KATACHI"のMVが海外の様々な賞を受賞。2014年末には段ボールプレイヤー付きレコード『Lita-Ruta』をリリース。2015年いしいしんじ原作の舞台『麦ふみクーツェ』の音楽監督を勤める。
プロフィールを挟んだところでもうひとつ、彼の才に舌を巻く動画を紹介しよう。こちらは楽器の演奏を撮るために生まれたキャノン製品カメラ「iVIS mini X」で全篇撮影されている。
まずは最後までご覧いただき、クレジット欄のシュールさにひとしきり笑っていただきたい。しかしどこまでも続く「トクマルシューゴ」の羅列が事実であるというのは只事ではない。いやはや拍手喝采である。
ただあなたはお気づきだろうか。トクマルシューゴ本人のみによって形作られたパズルのようなこのパフォーマンスは、動画であるから完成しているのであって、ふたつとして同じピースの存在しえないこの世界では、どんなに願ってもリアルタイムで体感することは叶わないという現実に。
しかし、彼の音楽やそのパフォーマンスの内包するこうしたジレンマは、とんでもない強みでもある。
彼が4月20日にリリースする新譜『Hikageno / Vektor feat. 明和電機』に収録された約60分間のDVDを堪能した者にはその意味が通じるだろう。天才・トクマルシューゴの音楽を分かちあい、その一端を担うミュージシャンらと、トクマルシューゴ自身の漏らした言葉から、その真意を汲んでいただけると信じている。
ひとついえることは、彼の音楽は唯一彼自身のものであり、また携わったアーティスト全員のものでもあるということ。確たる輪郭を持ちながら、風にそよいで水面を揺らす海のように全てを受け入れる器。それがトクマルシューゴの世界だ。
オリジナルな楽器製作で世界的に知られる明和電機とのコラボレーションを果たした今作は、トクマルシューゴ史上最高にポップなロックチューンに仕上がった。トクマルシューゴの音楽世界と明和電機の先鋭的製品という、個性と個性の衝突によるビッグバンが見事に結実したCDは、音楽史上類を見ない無二の「インダストリアルポップ」として語り継がれるはずの一枚である。
4月20日 リリース 『Hikageno / Vektor feat. 明和電機』
復権の兆し甚だしい「テープ」をテーマにした『 Hikageno 』は、楽曲制作過程そのものにテープのテクノロジーを導入したという驚きの意欲作。ライブでおなじみのレギュラーメンバーによる一発撮りならではのバンドサウンドの臨場感と、テープ特有の有機的音像が手を取りあった名曲がライブではどんなふうに表情を変えるのか、期待を膨らませて待っていてほしい。
<CD>
1.Hikageno
2.Vektor feat.明和電機
<DVD>
「IMAGES & TOURS 2012-2016 for NEW RECORDINGS」(60分収録/副音声付き)
ライブ収録曲:Katachi、Such a Color、Button、Lita-Ruta、Avante、Everything is Symphony(麦ふみクーツェ楽団)、Rum Hee、Humorously(トクマルシューゴx上水樽力チェンバーミニオーケストラ)、Dohro Niwa(鈴木慶一 with マージナル・タウン・クライヤーズ)、Green Rain、Poker、Down Down
また、『Hikageno / Vektor feat. 明和電機』リリースを記念したイベントも開催されるが、チケットは即日完売しているので、チャンスを逃した方は続報をチェックしてほしい。運よくチケットを手にしたあなたは、二度とない当日のパフォーマンスを網膜に焼きつけるように!
『ニューシングル発売記念イベント 〜SATURDAY NIGHT SYMPOSIUM〜』
[ 日時 ] 2016年5月28日(土)
[ 会場 ] 東京・渋谷TSUTAYA O-NEST
[ 出演 ] トクマルシューゴ
[チケット] -THANK YOU SOLD OUT-