インディーズシーンで活躍するロックバンドがぶち当たる壁というのはやはり金銭のやりくりである。

楽器、メンテナンス、弦やピックなど消耗品、スタジオ、レコーディング、プレス、機材車、ガソリン、HPの管理…

とにかくお金がかかる。
これだけのお金がかかるのに、更にはCDが売れない、お客さんが呼べなくてノルマを払わなくてはならない…
などお金に関する悩みは尽きない。

しかしそんな厳しい厳しいと言われている中でも音楽バブルを実現しているのがV系、アイドルである。

長い間ライブハウスで働いていた私がV系・アイドルのイベントの時に大勢のお客さんが押しかけ、経済が活性化しているのを目の当たりにしているが、なるほど売れないロックバンドとの違いはこういうことか、と感心したことを紹介しよう。



①見た目への気遣いが半端ない

V系・アイドルのファンは見た目8割音楽2割くらいの割合で楽しんでいると言っても過言ではない。
かっこいい・かわいいがまずは大前提で、音楽はファンがアーティストと一体化出来る号令のようなものである。
ライブと言うものはショービジネスであり、「音楽で勝負したいから」なんてことを言って見た目に気を使わないということがむしろ大間違いなのである。
flumpoolやNICO Touches The Wallsなどが「顔がいいから売れたんだろ」なんて皮肉を言われることもあるかも知れないが、まことその通りである。
じゃあブサイクバンドと言われているサンボマスターなんかはどうなんだと思うかも知れないが、あれはあれでV系と言っても過言ではない。ブサイクを全面に押し出してブサイクが愛を叫ぶからこそ伝わるものがある、まさに自分たちのことをよくわかっている成功例である。
やはり人前に立つ以上、見た目への気遣いが無ければお金を払って見に来ている人にも失礼だと考えるのが自然である。
あと、個人的な見解だがやはりステージでの見た目が普段着に近いと、ステージに上がる前と代わり映えがなくファンの「友達感覚」が抜けない一因でもある様な気がするのである。

②ステージ演出が半端ない

ライブであるからには演出があってこそである。
インディーズロックバンドの進行表(セットリスト)には「ここでMCをして、次回のライブ告知をして…」などは書かれているが、果たしてこれを演出と呼べるのだろうか。
これがV系になると「ここでMCをするのでこのBGMを流してください。そしてギターがフィードバックからのカウント→オールイン」「ボーカルだけにピンスポット」「ライブ終演後フライヤーをマネージャーが配布します」など演出がビッシリと書き込まれている。
これこそがしっかりとファンの心を掴んで離さないライブなのだろう。
世間話をMCでするのも悪くないかも知れないが、とりわけロックバンドのライブに来るお客さんが求めてくるのはやはりワクワクやドキドキであって和気藹々とほのぼのしに来てるわけではないのだ。
そういう点でもただ演奏するだけでなくドキッとする演出で惹きつけることをやってみても良いと思うのだ。

③グッズの売り方が半端ない

V系にもアイドルにも、チェキ(インスタントカメラ)は必須の様である。
メンバーと一緒に写真が撮れて500円というのが大体の相場だが、チェキのフィルム50枚入りパックが4,000円前後で売っているとして1枚につき80円の原価に対して定価が500円なので利益率が84%という脅威の回収率である。
それだけでなく、最近アイドルの物販で見かけるのがガチャガチャである。
もちろんあのガチャガチャ、つまりお金を入れてツマミを回すとカプセルが出て来て中に景品が入ってるやつである。
あの中に「ハグしてチェキ」など当たり要素の強いものから「ステッカー2枚」などハズレまで用意しており、一回につきこれまた500円。
ハグなどは原価はかからないサービスなのでチェキの利益率はやはり84%、ステッカーなどもはや数十円の話なので利益率はさらに90%超えもあり得るわけわからん状態である。
さらにすごいと思ったのは「告白される」という当たりガチャ。
もはや原価はゼロだが、皆が幸せになれる素晴らしいグッズ(?)である。

④V系はホスト、アイドルはキャバ嬢

これは職業批判とかそういうことではない。
ホストやキャバ嬢が水商売として軽く見られがちではあるが、ホストやキャバ嬢は己のキャラクターのみで商売をしている、厳しい接客業の全てを知り尽くしている存在であると言っても過言ではない。
では、「俺たちの音楽はかっこいいから認められて当然」「俺たちは人見知りだからそっちから物販に声かけに来てね」なんて言う高飛車で人見知り全開で見た目も地味なバンドマンと、少々チャラいなりにもホストやキャバ嬢並に誠心誠意のこもった接客をして盛り上げてくれるかっこいいお兄さん・かわいい女の子なら、同じお金を使うのであれば私なら当然後者をとる。
V系・アイドルたちの物販の様子を見ていると本当に「楽しんで帰ってもらおう」という気持ちが自然と出ているのがわかるのである。
「ライブを終えたらあとは物販に立っていれば自分たちの音楽を気に入ってくれた人が話しかけに来てくれてCDを買って行ってくれる」なんてそんな都合のいいことが、まぁ数回ならあるかも知れないがそうそうないことである。
次回のライブのフライヤーでもいい。すでに入り口で折り込みチラシとして配布されているものと同じフライヤーでもいい。それを自分の手で持って行って、話して、顧客を獲得するのである。
そんなときにホストばりの話の盛り上げ方、キャバ嬢ばりの気配りが出来ればなお良いだろう。



普段あまりこういった他のジャンルのイベントに参加することはほとんどないが、学べることはたくさんある。
V系やアイドルのイベントにも行ってみようとまでは言わないが、「あいつらは見た目で売ってて音楽で勝負してない」なんて批判をして売れないままジリ貧になっていくよりも、良いところはどんどん取り入れていくべきではないだろうか。


記事:ftmftm


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