CIVILIAN――「人間」そのものを歌で描くバンド

今回紹介するのは、一筋縄ではいかない人の感情の断片をつなぎ合わせ、楽曲に織り込んでいくスリーピースバンドだ。CIVILIAN（シヴィリアン）という名の彼らが奏でる楽曲は、聴き手の心をあまりにも強く惹きつける。

2016年の夏までは「Lyu:Lyu」という名前で活動していた。7月に改名し、CIVILIANというバンド名に。改名の理由についてコヤマヒデカズ（Vo, Gt）は当時、自らのブログに「新しい場所へ行きたいのなら、今までに築いてきた居心地の良い古い場所からは出発しなければなりません」と綴っている。実際、この改名は彼らにとって活動の幅を広げる契機になっており、同年11月にはシングル『愛/憎』でメジャーデビュー、今年3月には、アニメ「ALL OUT!!」の主題歌となるセカンド・シングル『生者ノ行進』をリリースしている。

メジャー・シングルの表題曲「愛/憎（アイトゾウ）」は、紙一重で異なる2つの感情を重ねた曲。重厚なベースラインが憎しみの深さを表しているように感じるけれど、ギターやコヤマの声がどこか悲しげなのは、それが単なる憎しみに留まらない感情をはらんでいるから。〈馬鹿馬鹿しくてさ涙が止まらない〉そんな歌が、いつまでも耳に残る。

そうやっていくつもの感情を掬い上げる音楽は、時として泣き笑いのようだ、と感じる。3月にリリースしたシングルの表題曲「生者ノ行進」の歌い出しは、〈「どうせこんなもんだ」って吐き出して笑っている〉と、諦めの言葉で始まる。それでも、曲が進むにつれて奮い立たせるような言葉がいくつも出てくる。コヤマのあたたかな声もあくまで前向きでだ。〈ほら一緒に歌おうぜ〉という言葉を体現するかのようなコーラス、それに疾走感あふれるドラムも印象的。泣きながら、叫びながら、それでも前を向こうとする音楽が、聴き手の背中を力強く押す。

また、同作にシングルに収録された「サクラノ前夜」は、もともと、コヤマヒデカズの別名義“ナノウ”が初音ミクのオリジナル曲として動画サイトで公開した楽曲だ。オリジナル・バージョンは無機質な音が耳に残るが、CIVILIANによるセルフカヴァーでは、エモーショナルなサウンドが際だつ。温かみのあるメロディに刻まれるのは、穏やかさとは程遠い“約束”の物語だ。中盤のギターソロは、聴きようによっては笑っているようにも、泣き叫んでいるようにも聴こえる。その結末は是非ご自身の耳で聴き届けていただきたいが、切なさと決意が入り混じったコヤマの歌声はやはり、泣き笑いのように聴こえてならない。

言葉にできる思いも、言葉にならない感情もすべて音楽に詰め込む彼らは、“人間”そのものを歌にしているかのようだ。5月18日からワンマンツアーで東名阪を巡るCIVILIANを、是非近くの会場で目撃してほしい。きっと、今のあなたそのものを表すような1曲と出会えるはずだ。

文・小島沙耶

CIVILIAN

コヤマヒデカズ（Vo, G）、純市（Ba）、有田清幸（Dr）によるスリーピース・ロックバンド。「Lyu:Lyu」として活動を始め、絶望的ともみられる言葉の連続の中に微かな希望をリアルに描写する圧倒的な世界を描き支持を集める。バンドとの活動とは別途、コヤマは「ナノウ」というボカロPとしても活動し、ニコニコ動画内で多数の殿堂入り楽曲を輩出している。2016年に、その全ての活動を包括し、より自由に、より広い表現をする事を目指してバンド名を「CIVILIAN」に改名。同年秋に放送したTVドラマ『黒い十人の女』の主題歌として書き下ろした曲「愛/憎」（読み方：アイトゾウ）でメジャーデビュー。2017年3月にはモーニング誌で大人気連載中のラグビーアニメ『ALL OUT!!』の主題歌として「生者ノ行進」をリリース。バンド自身とこれからの意思表明のアンセムとなっている。

CIVILIAN オフィシャルホームページ

http://civi-l-ian.com/

CIVILIAN ONE MAN TOUR「Hello,civilians.〜2017名古屋編〜」

2017年5月18日（木）名古屋ell.SIZE

開場 : 18:30

開演 : 19:00

チケット代 : 前売り¥3,500 当日¥4,000（ドリンク代別）

問い合わせ：サンデーフォークプロモーション（052-320-9100）

CIVILIAN ONE MAN TOUR「Hello,civilians.〜2017大阪編〜」

2017年5月19日（金）心斎橋Music Club JANUS

開場 : 18:30

開演 : 19:00