大阪府寝屋川を拠点に活動を行う日本語ロックバンド、yonige。女の子ならではの等身大の心境や景色を綴った歌詞と、シンプルながら心に響くサウンドでリスナーの支持を得てきた。2015年7月に公開した「アボカド」のMVはYouTubeにて200万回以上の再生数を誇るなど、知る人ぞ知るアーティストだ。
そんなyonigeが4月19日、『Neyagawa City Pop』という5曲入りの新譜をリリースした。約9カ月振りのこの新譜は、yonigeの現在地点がよくわかる1枚だ。豪快なギターリフから始まる1曲目「our time city」は、〈一体何が起こるのかな 怖くはないよ〉と不敵な歌詞が印象的。終始明るい旋律が、聴き始めたばかりの今作への期待を高まらせる、そんな曲である。
2曲目はリード・トラック「さよならプリズナー」。こちらも明るい音色のギターから始まるが、先程よりも鋭利な歌詞が耳に残る。〈何にもない何にもない〉と繰り返される歌い出しに、後半では〈どうせずっと愛されてると思ってたんだ〉〈もう二度と人を好きになれない気がしている〉とドキっとするような歌詞。どこか気怠げで、だけれど澄んだ声で歌われるこれらの言葉は、一篇の物語のようにリスナーを惹き込んでいく。
yonigeのヴォーカル・牛丸ありさは、声を張り上げたり、必要以上に感情を込めて歌い上げるシンガーではない。ベーシスト・ごっきんも、超絶技巧を見せつけるタイプのプレイヤーではない。彼女たちの鳴らす音楽は、いたってシンプルだ。決して幸せじゃなくて、現状に満足していなくて、いろんなことを考えながらも一生懸命生きている、どこにでも居るような女の子の歌。3曲目、4曲目と今作を聴き進めていくうちにふと、楽曲に出てくる人物と自分とを重ね合わせてしまっていることに気づいた。
アルバムの最後の曲「最愛の恋人たち」は、ミドルテンポの壮大な楽曲。アンニュイな雰囲気のバンドサウンドに乗せて、〈愛されたかった私は あなたを愛してる振りをした〉なんてショッキングな言葉が、淡々と歌われる。ともすればひどい歌詞にも見えるけど、「好きだったかどうかさえ分からなくなる」経験のある人にとっては痛いほど突き刺さる曲だ。長いアウトロのギターは、どこか泣いているような、忘れられなくなるような余韻を残す。
英語をほとんど使わず、日本語で歌い上げるからこそ、聴き手の心をざわつかせるyonigeの音楽。『Neyagawa City Pop』の5曲を聴き、あなたの心はどのように動くだろうか。今まさに何かに葛藤している女の子も、かつて女の子だった人も、女の子の気持ちを知りたい男性も、全ての人が聴くべき1枚だ。
文・小島沙耶
『Neyagawa City Pop』
small indies table
発売中
yonige
2013年結成、大阪寝屋川出身のyonige。牛丸ありさ(Vo, Gt)、ごっきん(Ba, Cho)の2人からなる日本語ロックバンド。これまでに2枚のミニアルバムをリリース。2015年7月に公開したMusic Video「アボカド」が200万回再生を超えるなど大きな注目を集めている。2017年4月19日、5曲入りのEP『Neyagawa City Pop』をリリース。