現役高校生ながら、ヒップホップシーンに新たな風を巻き起こし、“天才、現る”と称されているラッパー・Lick-G(リックジー)。

幼少期に日本語ラップに影響を受け、ヒップホップへの関心を深めていったという彼は、ヒップホップを愛聴するという父親の影響により、さらに関心を深めていき、音楽の世界へのめり込んでいったという。
高校生となった頃にはすでに日本のヒップホップシーンでは大きな注目を集めており、MCバトルにも幾度と出場。また、高校生ラップ選手権への出場や、全国チャンピオンシップへの出場により、最年少ながら目まぐるしい活躍を見せ、その名を全国に轟かせた。
2018年、テレビ朝日で放映された「フリースタイルダンジョン」にチャレンジャーとして登場した際には、当時クリア不可能と言われていた相手に勝利し、100万円を手にするなど、大きな成果も残した。
ラップバトルでは、韻やフロー、アンサーなどすべてがずば抜けて一流と言われているLick-G。リリースする楽曲では、対立による熱の燃え上がりではなく、作品としての世界観の確立や、英語と日本語を交えて韻を踏むことで生まれる独特なリズムなど、“音楽”としての魅力に注力している。
現在はバトルシーンから一線を置き、自主レーベルを立ち上げ活動を続けている。
既存のヒップホップに囚われず、多彩な音色や表現方法を開拓し、オリジナルを求め続けるというパンク精神旺盛なラッパー・Lick-Gの魅力について今回2つの楽曲とともに紐解いていきたい。



●Lick-G - Takoyaki (Official Audio)



1月に公開されたばかりの新曲「Takoyaki」。

海外へのアプローチも込めて世界に親しみのある「たこ焼き」を曲名にチョイスしたという今作は、宅録アーティスト・琵琶ウード演奏家でもあり、Lick-G の実の父親でもあるHoodoo Fushimiとの初の共作となっている。
ビートの核をHoodoo Fushimiが作り、その後Lick-Gの手に渡り、それを基にしさらに構築し、その後Lick-Gの歌が入った時点でまたHoodoo Fushimiが楽器を重ね…と、互いの感性を受け止め、活かし合いながら作り上げたそうだ。
ファンクなテイストをベースに、琵琶や尺八という和楽器の音色を取り入れ、エレクトロと人的なサウンドが混ざり合う今までにない楽曲スタイルとなっている。この和の音色が楽曲の世界をより立体的に、底の見えないほどの奥行がプラスされていて、今までの楽曲よりもドラマティックな展開を見せている。
海外を巻き込みたいという思いから歌詞は全英詞にしたという。しかし“粉もん”が登場するたび親しみ感が湧きあがる。また、英詞の語感も良く海外に意識を向けているものの、日本人にとっても聴き馴染みが良い楽曲となっている。
従来の楽曲にはなかった新たなエッセンスを取り入れたヒップホップと和の融合は、まさに新感覚。ぜひ一度ご賞味あれ。



●Lick-G - Mellow Akira (Official Music Video)



こちらは2017年に公開された楽曲「Mellow Akira」。

“何を言っても良い”。それがヒップホップの最大の長所である。ディスリスペクトから始まる歌い出しに、皮肉と格差を告げる詞。それを彼は淡々と、そして言葉よりももっと優しく甘い声で紡ぐ。どの言葉も言葉の意思は強いが音は丸く、体の輪郭をなぞるように耳へ、頭へ流れてくる。それはするりと流れていくように、とても自然で、優雅でもある。
韻と吐息が混じりながら1小節を締めくくっては、流れるように韻が踏まれていく。この凹凸の無さがあまりにもナチュラル過ぎて、心地良ささえ感じられる。
しかし、ヒップホップといえば韻を踏むことが重要か、と思われる中で、彼の音楽の魅力といえば、リリカルな歌詞たちにある。
韻を踏んでいることに違いはないが、その言葉たちが並ぶことで1つの作品としての意を成しているのだ。
綴られているのはバトルのようにひとつの対象と張り合うものではなく、ジャンルあるいは幅広い人に対して“世界”でぶつかりあうものである。歌詞を追うごとに、皮肉よりも先に彼の本心と強気な姿勢に気づく。そしてそれさえも超えた純粋なる未知なるものへの欲求と、それこそが“頂点”であるという思いが伝わってくるようだ。
巧みな言葉遣いと、高校生らしいストレートな表現は、彼の純粋な気持ちをくっきりと表している。
また、MVとの世界観のリンクにも注目だ。渋谷の街を背景とし、大人数で賑わう街と対照的な小さな部屋にいる1人の人間。混沌と慣れあい、常識が渦巻く中に見える反面、決意こそあれば終わりのない世界への糸口にもなる。
総合的に作品として作り上げたであろう今楽曲、楽曲はもちろん歌詞、MVとまるごと楽しんでいただきたいと思う。


現在は世界へ意識を向け、自分にしかできないものを新しいジャンルの音楽として確立しようと活動を続けるLick-G。
勇ましくも気高い誇りを胸に掲げる彼の歌詞には、とてつもないパワーが秘められている。その言葉に胸を打たれることもあれば、共感することもあるだろう。なだらかな曲線を描き、流れるように吐き出すラップは、一度聴けばまた聴きたくなってしまう中毒性も秘めている。

ヒップホップにファンク、和サウンドと、幅広いエッセンスを取り入れ、ヒップホップの可能性を打ち出し続ける若き精鋭・Lick-Gに、世界は心を奪われ続ける。





最新リリースの3rd EP

1. Karasu

2. We Stay High

3. Karasu (Instrumental)

4. We Stay High (Instrumental)