ーゆるめるモ!が2月26日に4枚目のフルアルバム「サプライザー」をリリースしました。相変わらずバラエティに富んだサウンドの楽曲がズラリと並んでいますが、全体的にはどんなアルバムになりましたか?
これまでの3枚のフルアルバムもそうですが、今回もゆるめるモ!らしさが詰まった作品になっています。踊れて楽しい曲も多いですね。また、全体を通しての狙いとしては、これまで以上にわかりやすさに挑んだつもりです。僕自身がコアでアンダーグラウンド寄りな音楽リスナーなので、初期の方が好みと言う人がいるのもすごくよくわかります。ただ、それだとなかなか届かない場所があると言う事実はこれまでの作品で痛感しましたし、より広く多くの人に届いてくれという希望と飛距離を意識した作品になっているはずです。
ー1曲目の「サプライザー!」から飛ばしてますよね。キレキレなサウンドでありながら、高純度なポップネスに満ちていて、痛快な幕開けだと感じました。
サプライザーというコンセプトを象徴した楽曲です。これは完成した時から1曲目しか考えられないと感じていました。
ーそのサプライザーというコンセプトはどのように決まったのですが?
世の中を常に驚かせていきたい!という想いは結成した頃からずっとありましたが、それを改めてグループのスローガンとして言語化した感じですね。見えない壁や常識、ジャンルやルールに閉じ込められてるように感じている人たちを救いたいということもよく言ってきました。いつもジレンマや理想と現実とのギャップに苦しみながら歩んでいるグループなんですが、この1年もひとつの山場のような感じでした。その過程でもやっぱり、ゆるめるモ!の楽曲が作り出す刺激や驚きで退屈や閉塞感に苦しむ人たちのそれらを吹き飛ばしていきたい!と思ったんです。あらためてグループの役割というか使命のようなものをこのタイミングだからこそ打ち出しておきたいと。 予期しないサプライズも引き寄せちゃったかもしれないですけどね。みんなでリアルに、身をもってコンセプトを体現してるというような解釈をしていただけたらありがたいです。それもゆるめるモ!らしさ、ということで。
ーゆるめるモ!は一貫して、誰かを救いたいとの想いを言っていますが、今回も同じ想いということですね。
そうですね。おこがましいかなとも思いますが、そこはずっと変わっていませんし、1人でも多く、1日でも早く、少しでも遠くの、苦しむ人たちを救うことができればと思っています。この音楽なら救えるはずだという確信が僕にはあるんですよね。それがなければ僕がゆるめるモ!と音楽を届ける目的もなくなりますし、ここまで続けることもできていないと思います。
ー「サプライザー!」の歌詞では、その辺りの想いがしっかり歌われているように感じました。玉屋2060%さんへの楽曲依頼は初ですよね。以前に「Hamidasumo!」のリミックスはありましたが。今回楽曲依頼した経緯を教えてください。
以前にもオファーさせていただいたことはあったのですが、タイミングが合わなくて。今回やっとご一緒できることになったんです。とても嬉しかったですね。これまでのゆるめるモ!のニューウェーブ感とパンク感を汲み取っていただきつつ、キャッチーで爆発力ある曲に仕上げてくれました。
ーポリシックスのハヤシさんが最初に作った「Hamidasumo!」の中に脈々とあるニューウェーブ感と同じベクトルにある曲にも感じました。今回ハヤシさんも久々の楽曲提供になりましたね。
「しんぼりくむ れすぽんす する」以来、約2年ぶりですかね。ハヤシさんにはもはやレギュラー感覚でお願いさせていただいております。ハヤシさんの方でも、今のゆるめるモ!に合う曲というのを常に考えてくださっているようです。今回は、よりキャッチーな曲というテーマで作っていただきました。歌詞も、現在のゆるめるモ!の置かれた状況を鑑みて、苦難を乗り越えようという内容になってます。ハヤシさんには珍しく?と言うか、ストレートなメッセージソングになっていると思います。
ーラストを飾る「うた」も、小林愛さんとハシダカズマさんという安定のタッグですが、サウンドの雰囲気はゆるめるモ!としては新境地という感じがします。ピアノとコーラスがフィーチャーされていて、神聖な感じと言いますか。
コーラスワークが生かされたようなゴスペルっぽいノリの曲がいいかなと思いまして。これまでは、シューゲイザーギターが盛り盛り! シンセが何重にも重なって! とかそういう重厚で壮大な曲は多かったですが、ピアノとコーラスだけで攻める曲は少なかったので。イメージはクイーン的な感じをベースにしつつ、ここ何年かのアメリカのR&Bな感じもあります。
ー安原兵衛さんがアレンジを手がけた「令和ワンダー」「ゴーアウト」も、ゆるめるモ!らしい楽しくてチャーミングな曲ですね。
新体制になって、なんかあっけらかんとした、ワチャッ!とした感じが全面に出た曲を、このタイミングでアルバムに入れておくのもいいかなと思い、入れました。「令和ワンダー」は、いつの時代もみんなにワンダーを届けたいゆるめるモ!の志を、元号が変わったこの機会にと考えてテーマにしました。ワンダーとは奇跡、驚き、感嘆、魔法、不思議、芸術的爆発とか、そんな意味が込められています。「ゴーアウト」は、いろんな境遇で外になかなか出ることができない生活を送っている方や、海外に行く機会のなかった昔のメンバーたちにも向けて、外へ出ることをテーマにしてます。どちらの曲も複雑性が少なく、凄くシンプルな展開ですが、振り付けも含めて、ライブでワチャッ!とした感じが出ればいいかなと。今回振り付けは、「サプライザー!」をはじめ新曲4曲を朝日太一さんにお願いしていますが、とても楽しい感じの振り付けをしていただいたと思います。ちなみに、「Here!」はようなぴによる振り付けで、これもさすがハヤシさんイズムをよく理解しているダンスだなと思います。ハヤシさんもとても喜んでくれました。
ー今回、全16曲が収録され、11曲が既発曲で、新曲5曲が5人での録音になっています。なにさん、ねるんさんの歌声はどのような変化、あるいは影響をもたらしているでしょうか。
なにはカラッとした声質で安定感があり、力強さがあって高音も広く太く出る。ねるんは声質が個性的なマイナスイオンボイスで、浮き上がってくるような、耳が行くというか。2人とも、ゆるめるモ!らしさのある声だと思っていますし、これからもっともっと伸びていくと思うので楽しみです。
ーそもそも、今回のアルバムのリリース情報と同時に、ようなぴさん引退、なにさん・ねるんさん加入も発表されました。まずはようなぴさん引退に関して伺っても大丈夫でしょうか。
ぜんぜんいいですよ(笑)。本当にここまでよく頑張ってくれたというのに尽きます。辛く悲しい気持ちももちろんありますが、彼女が作り上げてくれたものをしっかり活かして、僕らは前を向いて進んで行かないといけません。彼女の今後のソロ活動にも期待しています。
ーゆるめるモ!研修生「ぴゅーぴるモ!」から加入した、なにさん、ねるんさんについてはいかがですか?
メンバーとスタッフの合議で決定したんですが、皆納得の人選でした。でも実を言うと、本当はこの2人だけでなくもうちょっと加えたいという感じもあったんです。限られた時間のなかで精一杯の選択をしたつもりですが、同じく限られた時間のなかでゆるめるモ!に入っても大丈夫だと思わせてくれた2人です。なにはとにかく天真爛漫で溌剌としていて、今までのゆるめるモ!にはいなかったタイプかなと思います。喜怒哀楽もかなりメリハリがあって、グラマラスなメンタリティとでも言いましょうか(笑)、よく笑い、よく泣き、よく怒る。ただ、そのぶんあまり引きずったりしないですね。おっちょこちょいでズッコケキャラなところもあり、人柄に愛嬌があるので、見ていて面白い生き物だなと。彼女が入ることで、グループにフレッシュで晴れやかな光を照らしていってほしいですね。ねるんは研修生時代の初撮影の時、自分の世界に入って、一心不乱にゆるめるモ!の曲にノっていたんです。その姿を見て、クレイジーでアウトローな人間性とか背景がブワッと立ち上がってきたんですね。言葉で説明するのが難しいですが、初期からのゆるめるモ!らしさをすでに共有してる人だと感じました。もちろん、ゆるめるモ!が過去に伝えてきたメッセージもとてもよく理解していて、全曲をよく知っていて、見た目とは裏腹に芯の強さと熱さもあり、この場所で伸ばしたいと思わせてくれましたし、伸びたいという意志も感じました。ちなみに、イカれた僕が“だいぶイカれてる”と感じるので、相当イカしたキャラクターです。2人ともポテンシャルは間違いなく凄いものがあるので、期待していてください。
ーなるほど、面白そうな2人ですね。端から見たらメンバーの出入りもあり、波乱を迎えてるように感じます。
もちろん、危機感でいっぱいです。推進力のあるメンバーたちでしたからね。ただ僕自身これで終わるイメージはなかったです。続ける意志を伝えてくれたメンバーがいて、さらに今は新しく力を添えようと入ってきたメンバーもいるわけで、ワクワクしています。ゆるめるモ!の曲をもっと届けなくてはいけないという使命感もあります。そう思えるのも、これまでのメンバーたちがひとりひとり、土台を着実にしっかり築いてくれたからだと感じます。特にもっとも長かった4人(けちょん、しふぉん、ようなぴ、あの)は、ある意味でひとつの「完成形」にまで仕上げてくれたのだと、今改めて感じます。でも、ゆるめるモ!の完成形はその1つだけではないということでもあります。実際、すこし前の3人体制のゆるめるモ!も、とっても良かった。もちろん、3人が置かれた状況のなかで100%以上の力を出してくれたからだと思います。急に社会派ワードになりますが、「持続可能な発展」という意味でも、新しい形をいかに受け入れていくかが大事だと考えています。これまでのメンバーがつくってくれた土台がしっかりあるのだから、それは可能だと。
ー急に社会派な単語も飛び出しましたが、一方で家族の話のようでもありますね(笑)。
そうですね。娘を送り出したあとの中年夫婦の関係性の再構築みたいな(笑)。でも、本当にメンバーも僕たちも、辞めるという決断に触れることで、すごい成長になるとは思っています。辞めることを勧めるわけでは決してないですが、葛藤の先にそういうことを経ることでしか考えきれないもの、見出せないこと、到達できない想いもたくさんありますからね。辞めた後でひとつの、その人とグループとの関係が完成するということもある。誰かが辞める、何かが終わる、ということには皮肉なもので、進行形には成し得なかった“安定”や、その先の新しい形を生み出す“不安定という可能性”が滋養のように含まれている。それを一人ひとりが自分の内に取り入れていく機会でもあります。
ーなるほど。いつになくディープな話がきけました。さてそんな中、2月29日より東名阪を回るサプライザーツアーも始まります。どんなツアーになりそうですか?
まずはようなぴをしっかりと送り出したいです。ようなぴ自身もやり切ろうと意欲に燃えていますし、他のメンバーもアドレナリンでっぱなしですので、そんな気合いと熱量を観に来て欲しいですね。そして、新メンバーにとっては初のツアーです。しかもいきなりのゼップダイバーシティという大舞台が控えている。この短時間でそういったステージに立つということは過去のゆるめるモ!の誰も経験していません。いったい、どんなことが起こるのか? 彼女たちが何をみせてくれるのか、また何をみるのか? その先、グループがどんなトランスフォームを起こすのか? ここまで来たら僕たちスタッフ側も、やけくそに楽しみでしかないです!(笑) とにかく、今この5人の形をしっかり観ていただきたいです。あとは、今こそ新たなフェイズのゆるめるモ!らしい楽しさ溢れるライブができあがってきていると思いますので、しばらくゆるめるモ!のライブから離れていた方には、もう一度ここに還ってきて損はないですよと伝えておきたいです。まだ未体験な人にも、これでもかとゆるめるモ!の曲の良さ、ライブの楽しさを体感してもらいたいと思います。来ていただいた皆さんの人生を変えるような場になればいいなと思いますね。
ー非常に楽しみですね。ツアー以降の今後の展開はどう考えてらっしゃいますか?
これは大げさではなく、この曲があれば、なかった前の世界と後の世界が変わるだろうという曲が何曲も待機してまして、早く届けなくてはいけないという使命感しかありません。今まで誰も開いてなかった扉をこじ開ける鍵はすでにゆるめるモ!の中にあるので、どんどん開けていかないといけないですし、スピード的にも畳み掛けたいと思ってます。そして、曲だけじゃなく、この人たちがいることで、何かが起こりそうなワクワク感というか、地球の温度が5度くらい上がる感じというか、そういった存在でありたいと思いますし、そうできると思ってやっています。この先もずっと、皆さんの退屈を、笑顔でひょうひょうとぶち壊していきたいですね。
インタビュー:muevo編集部
(インタビュー実施日:2020年2月18日)
『サプライザー』
「ゆるめるモ!『サプライザー』リリースイベント」
「ゆるめるモ!サプライザーツアー」
https://www.hipjpn.co.jp/archives/56940
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