鹿子ちゃこ(Vo, Gt)、ハセ(Gt)、よね(Ba)、メル(Dr)の4人からなる密会と耳鳴りは、楽曲制作、MV制作など、すべてを自分たちで行う「完全自主バンド」だ。非モテ系と銘打っているからといって侮ることなかれ。彼女らが作り出す世界は非常にバイオレンスで、過激で、それでいてどこか愛おしい。
密会と耳鳴りは、2017年5月にセカンド・ミニアルバム『勝ち戦』の発売を予定しており、そのための「修行企画」として毎月ドキュメンタリー動画を発表している。1月に公開された第一弾はなんと「滝修行」。3度という極寒の中、奇声を上げて滝の中に飛び込み、「成し遂げた」とハイタッチをし合う様子は、どう見てもただの変態女子4人組だ。しかし、そんな4人は楽器を手にした途端、恐ろしいまでの色気と迫力を纏う。
まず聴いてほしいのは、昨年8月にリリースされた全国デビュー盤『美しい逆襲』の1曲目、「最低気分屋○○撲滅」。スーツ姿の4人が、〈給料上げろ〉〈有給増やせ〉〈残業さすな〉〈人材増やせ〉とOLの心の叫びを歌に乗せる。終盤には〈気分屋上司を辞めさせろ〉の連呼まで! 日々の鬱憤をすべて代弁してくれるようなこの曲には不思議と陰鬱さはなく、むしろ明るくさえも聴こえる。さらに、これだけ叫んでもまだ言葉にならないような怒りややるせなさは、ハセがフライングVに詰め込んで叙情的に弾き鳴らす。すべてのOL、いやすべての社会人に聴いてほしい応援歌だ。
同作の4曲目「ディスコ」のMVでは、バブリーな服に身を包んだり包まなかったりする4人が印象的(MVを凝視していると、曲がなかなか頭に入ってこないかもしれないので要注意だ)。吐息混じりのような鹿子の歌が、どこか和を感じさせる扇情的なサウンドに絡みつく。ひたすらに身体を動かすためだけに作られたかのような曲は、一度取り込まれてしまえば耳にこびりついて離れない。まさしく、バンド名に掲げられた”耳鳴り”のようである。
彼女らの次作は前述の通り、『勝ち戦』というタイトルだ。癖になるキラーフレーズの応酬に攻めまくりの楽曲、そして蠱惑的な鹿子の歌声……これだけの必殺技を持つ密会と耳鳴りなのだから、勝つのは最早当たり前。となると、気になるのはその”勝ち方”である。この戦、しかと見届けようではないか。
文・小島沙耶
密会と耳鳴り
鹿子ちゃこ(Vo, Gt)、ハセ(Gt)、よね(Ba)、メル(Dr)。2014年6月、失禁少女から改名。結成時から各音楽イベントで入場規制続出で話題を集める。2015年6月、梅田shangri-La 10周年イベント『失われない音楽祭』にてKANA-BOON、tricot、キュウソネコカミ等と共演。同年12月には完全自主制作の2ndミニアルバムをリリース。2016年8月には全国流通のミニアルバムを発売した。2017年、全国流通盤のミニアルバム2作目『勝ち戦』を5月17日にリリースする。
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