「誰も知らない物語」をコンセプトにジャパニーズロックを鳴らすCuckoo(クーク)。 “正式名称はカッコ部分を含める”“読み間違いをそのまま採用する”というこだわりのバンド名を引っ提げた彼らは、関東を中心に活動する2ピースバンドだ。 タワーレコード限定のコンピレーションアルバムへの参加、自身のミニアルバムの全国リリース, 東名阪ツアーなど結果を残していき、2016年からは大島健太郎(Vo&Gt)、サカグチマサノリ(Ba)の2人での活動を開始。現在に至る。 そして、今年5月5日に待望の自身初のフルアルバム『[fractalə dystopia] 』をリリース。 しかし、新譜リリースと共に発表されたのは、メンバーサカグチの脱退だった。 聴き馴染みの良い普遍的なメロディと、ストーリー性を感じて感情移入を誘う歌詞。それらを武器に、さまざまな土地であらゆるアーティストと共演を重ねては成長し続けてきた。 歴史を経て、彼らが紡いできたひとつの“Cuckoo(クーク)”の姿を焼き付けた『[fractalə dystopia] 』 。 初フルアルバムにして、大きな節目となる今作を用いて、Cuckoo(クーク)の音楽について迫りたいと思う。
●フルアルバム『[fractalə dystopia] 』
フラクタル=自己相似性。この作品の鍵を握るこの言葉を、最後まで忘れることはなかった。
今作は、彼らのテーマとする“おとぎ話”そのものだ。ただ、そのおとぎ話はけして空想の出来事を指すのではない。夢のような幻想的ストーリーと目の前にある現実の間に生まれる特別な世界を指しているのだ。
シーケンスとエレクトロサウンドで構成されたインストナンバー「CONNECT -to the world」から、彼らの世界観は開かれている。
まどろみにゆっくりと浸っていくように1分50秒の音の波に呑み込まれていく。 同じテイストのまま「battlecry」へ繋ぐと、くるりの「ワンダーフォーゲル」を彷彿とさせるようなみずみずしいサウンドと、呼吸が泡となるように、音がひとつひとつ吐き出されては煌びやかに弾けていく。徐々にバンドアンサンブルがプラスされていくと、ようやく彼ららしいバンドサウンドと普遍的メロディが姿を見せる。
爽やかなライトチューンで彩る今作は、明るく華やかな楽曲が多い。
「オオカミのうた」ではわかりやすいメロディの合間に変拍子を挟んで波をつけて、正統派ロックに切り替えてサビを駆け抜ける勇ましさを見せる。
「SMASH!!!」ではAメロとサビの格差をつけては明確に盛り上げをつける展開で、聴いていて爽快感がある。
タッピングならではの細かな音はすべて鮮明に残され、バーチャルでは感じられないリアルな音の粒を体感でき、高揚を誘う。
一方、「タイムマシン」では憂いの中にとびきり優しげな言葉と声を乗せていたり、しっとりと聴かせる「Eutopia」では曲展開は盛り上がりを見せるが、大島と女性コーラスの繊細な交わりが胸をぎゅっと締め付ける。「ひとりは怖くて」「さよならを言おうか。いや、やっぱり言えないな」と、弱さを見せる歌詞に切ない物語へ引き込まれていくようだった。 ライトチューンな中にも変化をつけ、まさに一冊のおとぎ話のような作品をつくりあげている。
アルバムが終焉に近づき、ラストナンバー「CONNECT」の美しいピアノメロディがはじまったところで、“フラクタル=自己相似性”という言葉を思い出すことになる。 描かれた物語世界と描けない現実世界を行き交うように、ストーリーじみた歌詞がリアルにリンクしていくのが体内ではっきりとわかるのだ。
それは時折挟んだSEにもある。「battlecry」ではガラスを割る音が。「Polyglot(s)」では最後にテープが切れたような音が組み込まれている。
切断音や破壊音は現実と物語の差をなくし、繋がっていく過程となっていたのだ。 そしてこの繋がりはこの2つの世界だけではない。
リスナーとCuckoo(クーク)が同じ世界を生きて、似通ったことに悩み、考え、愛すことを表現している。
この1枚を通して、夢のような現実を共に見ることができる。それを、とびきり詩的な歌詞に感情移入させながら。そんな“おとぎ話”を楽しめるアルバムとなっているのだ。
●Cuckoo(クーク) / Fragment(s)
アルバム1枚を通した意味合いももちろん大切なのだが、言葉で語るほど堅苦しくないのが彼らの魅力でもある。
MVが公開されているリード曲「Fragment(s)」はまさに、わかりやすい王道ジャパニーズロックだ。
サイケデリズムなシンセやタッピングギターで彩るキラキラとした音像の中、大島は余裕綽々に歌うが、ひしひしとエネルギーを放ち続ける。
ワンフレーズ目が終わると各パートの見せ場を作り、2番サビにかけて再び盛り上げを見せては転調をかけていく。シンプルでキャッチーな歌メロはそのままに、音楽が変貌していく様は聴いていてとても楽しくなるだろう。
楽器の音をひとつずつ重ねていって変化をつけていくことで、音楽にボリュームが出で、よりストーリーが膨らむのだ。
疾走感あるエッジィなギターが先導し、ドラマチックに駆け抜ける。
聴いていて爽やかな心地になり、聴いたあとにはすっきりとした満足感がある。
この感覚こそ、Cuckoo(クーク)の魅力だ。
おとぎ話と現実をコネクトする『[fractalə dystopia] 』で、ひとつの“Cuckoo(クーク)”を完成させた。今後は大島のソロプロジェクトとして動いていくのか、はたまたメンバーが加わるのかは誰もまだ知らない。
しかし、彼らのは第2章は、もう始まっている。
ライブも続々と決まっていて、周年イベントも開催予定だ。
これからも「誰も知らない物語」を描き続けるCuckoo(クーク)の新章を、ぜひ見逃さないでほしい。
【リリース情報】
1st full album [fractalə dystopia]
2018/5/5 Release
CKCT-0525 ¥2,500(tax in)
<収録曲>
1. CONNECT -to the world
2. battlecry
3. オオカミのうた
4. タイムマシン -Another Future-
5. juvenile
6. SMASH!!!
7. Fragment(s)
8. Eutopia
9. Polyglot(s)
10. シロクマの国 -Country 335-
11. Cygnus
12. CONNECT
【ライブ情報】
2018.09.02(日)@新宿Zirco Tokyo
"9/9じゃないけどクークの日" -一週間早いけど気にしないでお願いSP!-
※詳細は後日解禁
【HP】https://eggs.mu/artist/cuckookuku
【Twitter】https://twitter.com/cuckoo_info