東京出身のアーティスト、三上ナミ。

昭和歌謡をこよなく愛し、昭和歌謡とクラシカルなムードの音楽を掛け合わせた独自のサウンドを、主に楽団「三上ナミと謎カンパニー」で鳴らしてきた。楽団のメンバーには三上のほかに、ピアノを担当する「謎の地方公務員」とベースを担当する「謎の運び屋」がいる。
現在はベトナム在住だという彼女。そこに行き着くまでに、昭和歌謡曲のカバーやオリジナル楽曲を引っ提げて、世界21か国を旅してきた。そんな経験を経て、2017年6月よりベトナムに移住。ベトナムではホーチミンのテレビ制作会社で働いるため、日本に帰ってきたタイミングで国内公演を行っている。
元々は2007年、「うさぎのなみ平」という名前でライブアイドル活動を始めたのが、現在の活動の源流だ。その後2009年からは作詞家としても活動を始め、2010年からは世界を回るように。そして2012年に現在の三上ナミに改名し、楽曲の世界観も自身が好きな昭和歌謡感・アングラ感のあるものへとシフトしていった。2014年には三上ナミと謎カンパニーを結成し、以降2枚のアルバムリリースや3度のワンマンライブなどを経験。しかしそんな三上ナミと謎カンパニーも2020年4月には活動休止を迎える。
「ベトナムと日本の架け橋になれるようなアーティストになりたい。」という彼女の今後の活動に、ますます注目だ。




・三上ナミと謎カンパニー – 胸騒ぎのタンゴ 




2019年6月23日新小岩オルフェウスで行われたライブより、「胸騒ぎのタンゴ」の演奏模様。タイトル通りのタンゴのリズムに乗せて、彼女の音楽の特徴ともいえる妖しく懐かしいムードのサウンドが奏でられている。踊れる昭和歌謡とでもいうべきこのサウンドを耳にすれば、すぐに非日常へと誘われるだろう。 

非日常感があるのは、楽曲だけではない。ライブ自体の非日常感も強い。赤い衣装に身を包んだ三上(これも昭和レトロな雰囲気)と覆面で演奏するメンバー。さらに間奏部やイントロではマイクをスタンドにおいて鍵盤ハーモニカを演奏する三上。どこをとっても非日常感であふれている。まるでショーのようなライブは、彼女の大きな魅力の一つだ。




・三上ナミと謎カンパニー – お役所仕事 




「曲ごとの世界観の違いを楽しんでほしい」という彼女。この楽曲の世界観は、風当たりの強い地方公務員の気持ちと、市民代表の気持ちの対比という独特な世界観となっている。 

≪僕は小さな町に勤めてる/ただのしがない公務員≫≪それでもこの町の為、人の為/身を粉にして働いてます≫と地方公務員が歌ったかと思えば、市民側は≪そんなことないでしょ知ってるわよ/楽な仕事よ公務員≫と歌うなど、ストーリーがしっかりしていてミュージカル調に掛け合いが進んでいく、引き付けられる構成だ。
そんな面白い作りのこの曲だが、やはりサウンドには昭和歌謡とクラシカルな音楽を掛け合わせたようなムードが漂っている。サウンドの世界観と歌詞の世界観が相まって、まるで昔の「みんなのうた」に出てきそうな一曲になっているのが印象的だ。
「ライブでは盛り上がる楽曲なので、楽しんでほしい」というだけあって、アップテンポで小気味良いのも特徴。




・三上ナミと謎カンパニー – 花咲か乙女 




2019年4月6日に新宿Cat's holeにて行われたライブから、自身曰く「落ち込んだ時に、その時の気持ちを歌にした」という楽曲「花咲か乙女」。 

和装を身にまとい、花びらをまき散らすという冒頭からすでに異色な雰囲気は満載。ただメロディーは、これまでに紹介してきた2曲と比べると、より昭和歌謡感が強い。それにともなって全体のサウンドもどちらかといえばストレートな音を鳴らしている印象だ。
そんな比較的にストレートよりなサウンドに特有なムードをプラスしているのは衣装やライブ演出だけではなく、≪頭を垂らす君影草は/うつむく先に何を見つめる≫≪私を照らすことない光/誰ぞ照らしているのでしょうか≫と、独特な表現が織り交ぜられている歌詞もだろう。
サウンドだけではなく、色々な角度から自分が構築したい世界観を表現できるアーティストだということが、この楽曲から改めて分かる。



「面白さを常に求めて、歩くからくり屋敷のような存在になれると嬉しいです。」と語っている彼女。5年続いたという楽団の活動休止を経て、次に何を仕掛けてくるのか。今から楽しみでならない。 




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