写真左から坂東志洋(Dr)、武市和希(Vo,Gt,key)、井上雄斗(Gt,Cho)


mol-74(モルカルマイナスナナジュウヨン)と読む。この不思議な名前のバンドが奏でるのは、魂を洗うかのような神秘的な音楽だ。


mol-74の楽曲の多くは、幻想的なヴェールを纏っている。例えば2015年1月にリリースされた『越冬のマーチ』の5曲目「アルカレミア」は、穏やかな音と声で歌われる。決して激しい音を鳴らすわけではないけれど、徐々に感情が高まっていく、不思議な曲だ。同年11月にリリースされた『まるで幻の月をみていたような』の3曲目「不安定なワルツ」は、霧の中から聴こえてくるかのような雰囲気を持つ。たゆたう水面を思わせるギターに、武市和希(ヴォーカル)の澄んだハイトーン・ヴォイスが乗せられる。聴いているだけで、吸い込まれそうになるほどの透明感だ。

一方、最近の楽曲では、彼らは今までと少し異なる表情も見せている。8月17日にリリースされた『kanki』に収録された「%」は、爽やかなメロディが特徴的な楽曲。これほど明るい曲調はmol-74には珍しいが、ポップな曲であっても彼ら特有の音の美しさは健在だ。振れ幅の広がった彼らが今後どのような音楽を作り出していくのか、楽しみである。






彼らの曲は、具体的な言葉をあまり多くは重ねない。その詞には、必ず行間が残されている。上記で紹介した「アルカレミア」は〈もう遅いことならば 全て分かっているけれど まだ間に合うのなら もう一度〉と繰り返し歌うが、その歌詞が表す内容は詳らかにはされていない。聴き手がそれぞれ自分の想いを投影し、自分にとっての景色を想像しながら聴くことができるのだ。だから、mol-74の魅力は文章では伝わらない。実際に彼らの音楽を聴き、ライヴに行かなければ、その魅力に気付くことはできないと思う。8月にリリースしたばかりの新作『kanki』とともに回る10月以降のツアーで、直接その全貌に触れてもらいたい。


文・小島沙耶



moi-74

武市和希(Vo,Gt,key)、井上雄斗(Gt,Cho)、坂東志洋(Dr)。まるで雪片のような音像と、武市のファルセットボーカルが描きだす情景はmol-74の音として唯一無二の世界観を展開している。2016年10月27日から名古屋CLUB UPSETを皮切りに『kanki』リリースツアーをスタート。詳細はホームページでチェックしよう。


mol-74 オフィシャルホームページ

http://mol-74.com/