アコギと共に吟遊詩人のように各地を旅し、歌を歌うシンガーソングライター、市川セカイ。昨年は年間160本ものライヴを行うなど、全国各地に歌を届けているシンガーだ。


ストーリー性のある楽曲を、柔らかな声で歌う。奇抜なアーティストが多い昨今ではあるが、市川の歌は非常にまっすぐだ。彼が歌うのは“失くす”こと、そして“周りの人を大事にしたい”という想い。聴く人により優しくなってもらいたいと歌うその声からは、市川自身の優しさが滲み出ている。


ライブは基本的にアコギ1本、たまに「市川セカイBAND」としてバンド体制で行うという市川だが、2015年10月に発売された1st アルバム『ベルトコンベアから流れてくるもの』を聴くとそのアレンジの厚さに驚く。表題曲「ベルトコンベアから流れてくるもの」では、アコギを中心に展開される壮大なサウンドと、爽やかで優しい歌声が印象的だ。さらに、サビの開け具合は大空を思わせる心地良さと美しさ。頭で考えるよりも先に、心の底から“美しい”と感じられる、そんな音楽だ。






同作の他の収録曲も、それぞれが珠玉の短篇小説のような輝きを放つ。中でも、筆者のイチオシは「あした予報」だ。後者は、陽気なリズムや曲中の掛け声の楽しい1曲。歌詞は、決して底抜けに明るいわけではない。それでも、明日の天気が何であろうと、きっと楽しい1日になるだろうと確信させてくれるような曲だ。YouTubeに掲載された市川セカイBANDのライヴ映像は、見ているだけで巻き込まれていくような楽しさを覚える。ライヴハウスで、一緒に歌いたくなる。






今後も市川は各地を巡り、その度に新たな出会いを重ねていくことだろう。そして、その出会いが反映されて新たな楽曲が生まれていくはずだ。


文・小島沙耶



市川セカイ

高知県土佐市出身。2006年、MANA SLAYPNILEでメジャーデビュー。2009年、バンド解散に伴い、単身上京。ソロ活動開始。2010年3月に応募総数1000組を超える中より4組に選ばれて、秦基博と横浜F.A.Dにて共演を果たす。2013年にはブルボンアルフォートミニのCMソング歌を担当した。さらに各方面で活躍するメンバーを集めた「透明なロック」を掲げる市川セカイBANDを結成したりと活躍の場を広げている。

 

市川セカイ オフィシャルホームページ

http://www.ichikawasekai.com/