同世代の味方のような、背中を押せるシンガーになりたい


今回は、仮想現実ライブ空間SHOWROOMにて弊社が主催した「Music Evolution!ライバルに差をつけろ!」というイベントにて見事1位を獲得したシンガーソングライター、伊藤ゆきさんに話を聞いた。挨拶を交わした時は物腰穏やかな印象の彼女だったが、話が核心に迫るほどに内に秘めた「音楽への情熱」と「歌で生きること」への覚悟が露わになった。幸せの意味を模索したという2年間の活動休止期間が出した答えは、「私には歌しかないんだ」という人生の道標だった。そして彼女はステージへと復活を果たし、さらには自身の想いを体現させるべく「フラワーソングプロジェクト」を始動させた。ますます突き進む彼女の原動力はどこにあるのだろうか、その思いに迫ってみたい。






――最初に音楽活動を始めたのはいつ頃だったんですか?


伊藤ゆき(以下、伊藤) 18歳くらいからです。きっかけは、小さい頃にエレクトーンを習っていて、その時から音楽が好きでした。母親もよく歌っていて音楽が好きな家庭だったので、自然に自分も歌いたいなって思うようになっていましたね。


――では、お母さんの影響で音楽を自然と身近に感じていた。


伊藤 そうですね。歌って生きていきたいなって思いが強かったです。子供の頃は、エレクトーン以外は、ずっと体育会系の女の子という感じで、部活動のバスケットボールに打ち込んでました。コーチの先生がすごく厳しかったので、精神力はそこで鍛えられましたね。


――バスケ部で活躍している時も、将来は音楽をやりたいと思っていたんですか?


伊藤 そうです、卒業したら絶対に歌をやろうと思っていました。音楽の専門学校に行くことを決めて、それを機に東京に出てきました。あとは都内でライブ活動を始めましたね。ただ、専門学校と言っても音楽が習える場所をいくつも掛け持ちしていて、それをこなしながら合間にライブ活動をするようなスケジュールでした。ほとんど都内のライブハウスだったんですが、「ここがホームだ」というような決まった場所はなくて、あっちもこっちもいろんなところでやってましたね(笑)。


――なるほど。当時はライブハウス中心だったのに、今ではSHOWROOMというライブ配信でも活動しています。どういうきっかけでSHOWROOMに?


伊藤 事務所の勧めでやり始めたのがきっかけです。生配信なんて全然やったことがなかったので、最初の頃はすごく緊張していました。


――今回の配信イベントでは1位を獲得したわけですが、伊藤さんにとってSHOWROOMはライブハウスと同じく大切な場所ですね。


伊藤 今回の1位獲得はやっぱり見てくださった皆さんのおかげです。私自身の力というよりファンの方々の応援の力なので、「一人ひとりと大切に会話をする」というのは常に心がけています。


――SHOWROOMでの配信を通じて新たな発見というものはありましたか?


伊藤 人が自分をどういうふうに見ているのかが、すごくよくわかるようになりました。そういう意味では自分の歌を客観視できるようになったかもしれません。


――それは普段のライブにもいい影響を与えてるんじゃないですか?


伊藤 そうですね、路上ライブの場合、都内でやることもあれば地元の長野でやることもあるんです。


――長野と都内では路上ライブの雰囲気って違いますか?


伊藤 都内のお客さんのほうが積極的な気がします。長野だと立ち止まってくれてもあんまりお話ししてくれなかったりしますし、恥ずかしがりの方が多い気がしますね(笑)


――では、伊藤さんが影響を受けたアーティストやご自身のルーツになった音楽について聞かせてください。


伊藤 そうですね、一番最初はホイットニー・ヒューストンが憧れでした。高校生くらいの時なんですけど、「こんなふうに歌えたらいいな」っていう漠然とした憧れがありました。当時はHYや ORANGE RANGEが流行ってましたね。なので、学校ではホイットニーが好きだということは隠していました(笑)。


――ホイットニーが好きなのも両親の影響なんですか?


伊藤 そうですね。それ以外で私が好きなのはクリスティーナ・アギレラさん、日本人だと絢香さん、MISIAさんです。


――東京で音楽活動をスタートさせてからは、どのようなキャリアを?


伊藤 実は、2年間くらい音楽を休業してまして、活動を再開してからまだ半年くらいなんです。休業するまではコーラスユニットとして3年間くらい活動していたんですが、いろんな事情で解散することになってしまって……。その後、音楽との関わり方も悩んだのですが、自分の人生の進路そのものを深く考えさせられました。人生そのものと音楽の狭間で葛藤することになって、休業中は音楽活動も一切やらなかったです。


――もう一度音楽の舞台に戻ってこようと思ったきっかけは?


伊藤 プライベートな道と音楽活動という天秤のなかで、大切なものを失うきっかけがありまして、その時に「これはもう歌うしかないな。私には音楽しかない」って思わされたんです。音楽以外の自分の人生への未練がいい意味で取っ払われて、天秤が一気に音楽に傾いたことで決意しました。


――伊藤さんが活動を再開させたことで、ユニット時代からのファンの人も喜んだんじゃないですか?


伊藤 はい。ユニットの頃からのファンの方もいらっしゃるので、喜んでくれたと思います。


――ファンの間では、伊藤さんの音楽や人柄について、どう評価されることが多いですか?


伊藤 「話している時と歌っている時、本当に同一人物なのか疑う」なんて言われます(笑)。特にSHOWROOMだと楽しそうにおしゃべりすることが多いので、歌っているところとギャップがあるよねって言われます。カバーする曲のイメージも含めてなのかもしれないですが、歌っている時は少しミステリアスで陰のあるような印象を持たれることが多いみたいです。自分でも明るく振り切れた曲よりも、少し陰のある曲のほうが声質的にも合っているのかもしれないなというのは感じていますね。


――伊藤さんのオリジナル曲にもそれは表れているんでしょうか?


伊藤 はい。「special day」という曲とか。


――この曲は自分で作詞してますよね。


伊藤 「生きている中でみんなそれぞれ苦しいことや辛いことがあると思うけど、どんな日も後から振り返ったらスペシャルな1日だよね」っていう意味の曲で、この曲を聴いてくれた人が1日を特別だと感じて過ごしてくれたらいいなっていう願いもあります。ちなみに「special day」とはちょっと違うかもしれませんが、曲作りでは“大人のリアル”を書いていけたらいいなあと思っています。ちなみに普段は鍵盤で楽曲制作しています。


――では、この曲に限らず音楽活動全体を通して伝えていきたいことやメッセージはありますか?


伊藤 同世代の味方のようなシンガーになれたらいいなって思ってます。自分自身も若い頃に比べて経験を経たということもあって、歌える内容の幅がすごく広がりましたし、同世代の背中を押せるような音楽を届けたいですね。誰かの背中を押したい、元気をあげたいっていう想いから「フラワーソングプロジェクト」っていう新しい取り組みを始めました。立ち上げたばかりで全然大きなものではないんですけど、私が代表を務めていまして、これからもっと広げていきたいなと思っています


――それは具体的にどんな活動なんですか?


伊藤 まず一つ目の柱としてボランティアの施設周りなどを通じて歌で人が少しでも元気や笑顔になる背中を押せるような活動をすることがあり、二つ目の柱に歌ってる人達が歌い手として生きていける場所を作ることがあります。音楽活動を休止していた時にずっと考えていたんですが、自分の身の周りにはいい音楽を届けるミュージシャン仲間がたくさんいるなと感じていて。例えば、施設暮らしをされていてライブになかなか来れない方や病を抱えた方など、そういう方たちに仲間たちの素敵な音楽を届けられたらいいなと思ったんです。それがきっかけで、今では老人ホームや保育園などに訪問して演奏させてもらう機会をいただいてます。すべてボランティアなのですが、ゆくゆくはこの活動を通して、メディアに出なくてもシンガーやアーティスト仲間のみんなが音楽でもっと活躍できるようになったらいいなと思っています。


――すごく素敵な活動ですね。


伊藤 妹が看護師をしていたり、周りの友達も看護の仕事についてる人が多かったり、ボランティアがすごく身近な存在だったからかもしれません。


――「Flower song project」という名前にはどんな由来があるんですか?


伊藤 「歌」って極論言うと無くても生きていけるものじゃないですか。私、花も好きなんですけど、「花」の存在もそれにすごく似ているなと思っていて。無くても生きてはいけるけど、それがあることで人生が彩られて、より豊かになるじゃないですか。そんな閃きから名づけました。


――話を聞いていると、伊藤さん自身の活動だけでなく、もっと客観的に「音楽の素晴らしさ」や「音楽の可能性」のようなものを意識されているように感じるのですが、そういうことも伝えていきたいと思っていますか?


伊藤 はい。自分の活動を通して、他の素敵なミュージシャンを知ってくれたり、このプロジェクトを知ってくれたり、音楽を楽しめる人がもっと増えたらいいなと思います。


――では、今後の目標や将来の夢などはありますか?


伊藤 まずはシンガーとして皆様に知って頂き、沢山の方に聴いてもらうこと、覚えてもらうことが目標です。2017年にはワンマンライブを計画しています。そして次に「Flower song project」を少しずつ拡大して、プロジェクトを通して、より多くの歌い手さんがシンガーとして生きていける場所を作ること、職業を歌手と言える人を少しでも増やすこと、歌に触れることによって少しでも元気に、笑顔になってくれる人が増えていくことが目標です!


――ワンマンライブでは、ぜひ生歌を聴いてみたいです。


伊藤 今日は素敵なお話をありがとうございました。








伊藤ゆき

2年間の音楽活動休止後、2016年にソロシンガーとして活動再開。関東、地元長野を中心に活動中。「Tears drop~雨上がりの空に~」でコンピレーションアルバムに参加。また、シンガー活動再開と同時に立ち上げた「Flower song project」ではボランティア施設まわりを中心に運営を行っている。

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