言葉にできなかった声、声に出(さ)せなかった想い
5月17日に新しいアルバム『いっそやみさえうけいれて』をリリースしたばかりの真空ホロウ。サポートメンバーの正式加入を経て形となった今作への想いやバンドのビジョンに迫った。
ーーmuevo初登場ということで簡単に自己紹介をいただいてもよろしいでしょうか?
松本明人(以下、松本) 真空ホロウのヴォーカル・ギター、松本明人です。最近ハマっていることは、どこで取ったか分からないような3リットルくらい入っている赤ワインです(笑)。
ーーこんな感じなんですか、いつも(笑)。
松本 はい(笑)。
高原未奈(以下、高原) ベース・コーラスの高原未奈です。最近の趣味は、えっと、なんか言わなきゃいけないみたいになってる(笑)。日本酒ジャケ買いですね。
松本 うわあ、かっこいいね。3リットルのワインと日本酒ジャケ買い(笑)。
ーーありがとうございます(笑)。高原さんが今年から正式に加入されたことで、活動とか音に対して変化ってありましたか?
高原 そうですね。1年間サポートとしてやってた時からも、明人君の考えている音っていうのを汲み取ろうと思ってやってきたんです。今回この一緒にアルバムを制作するってことで、またそれまでとは違うというか知らなかった部分も分かるようになったので、そういうの知れたっていう点でも、今回入るタイミングで制作もできたのはよかったなと思っています。
ーー松本さんはいかがですか?
松本 アルバムにも出ているように、自分以外に何かを任せるということができるようになったっていうのはとても大きいと思いますね。
ーーこれまでのソロ形態と比べるとやっぱり今は活動の仕方として全然違いますか?
松本 まず安心感!
ーー全部を一人でやらなきゃいけないっていうのがない?
松本 いや、やらなきゃいけないんですよ、もちろん。やらなきゃいけないんだけども、+α、「もっとこうしたいのに」の「のに」を「から」に変えられるというか。委ねることができるようになったのが大きいですね。
高原 私もそれができるようになったなと思います。
ーーそもそも高原さんの正式加入のきっかけは?
松本 それまでのサポートっていう期間っていうのが真空ホロウっていうものをまたバンドにするために、例えばサポートしてくれている人が僕のことを、僕がサポートしてくれている人のことをっていうのをいわばお見合い期間のようなそういう期間だったんですね。なので元々またこうやって僕以外の方を入れて、真空ホロウっていうものを始めようっていう時期ではありました。
ーーなるほど。つづいて今回のアルバムについてお伺いします。全曲を通して「やみこさん」という存在がキーワードだと思います。この「やみこさん」は誰しもが当てはまるような存在だと感じたんですが、このコンセプトで制作するってなったきっかけは何ですか?
松本 元々真空ホロウは「真空ホロウとは?」って聞かれた時とか、あとはファンの方が「私真空ホロウのファンなんだ」って言って、友達に「真空ホロウってどんなバンドなの?」って聞かれた時に答えられないバンドであり、音楽だったんですよね。一言では言えなかったというか。今回はそれを具現化させてみました。そういうものが普遍性のあるもので世の中に沢山いるであろう存在で、僕らが名付けたのが「やみこさん」っていう名前だっただけで、そういう人達へ向けて、そういう人達が言いたいこと、そういう人達の思っていることっていうのを僕らが代弁していこうというか、その先に行く、その闇を受け入れるきっかけにしようっていうコンセプトを掲げて。このコンセプトを掲げてから一枚目のアルバムなので、それがより色濃く出ているという感じですね。
ーー形になったという感じですね。
松本 そうですね。
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ーー今回他のミュージシャンとのコラボ楽曲が3曲収録されていますが、この試みをしようと思ったきっかけはありますか?
松本 例えば俗にいうバンドというものが、3人ないし4人とかで完結できるものだとするならば、例えばヴォーカル、ギター、ベース、ドラムとかそういうものではまずないじゃないですか。なので実はもっと自由でいいんじゃないかっていう、まだ。三人だったら三人でできることとか詰め込もう と多分思ったりするんだろうけど、自由を最大限に使おうっていう。あとは僕が詞を書く時とか曲を書くことに対してもっと突破口を開きたいなっていうのがあって、新たな風を入れたいっていうのがあって。伊東歌詞太郎さんに全部頼んでみたり。人と書いてみたり、詞だけ任せてみたり、誰かとコラボしたりっていうのをやってみたっていう感じですね。
ーーそこに対する不安とか恐怖とかっていうのは特にはなかったですか?
松本 僕、好奇心が旺盛なんですよ(笑)。やってみてダメだったらダメ。
ーーコラボの相手はお2人が主導で決めたんですか?
松本 そうですね。意見を出し合いました。
ーー皆さんにオファーした理由を各々お伺いしてもよろしいですか?
松本 天馬くん(松永天馬/アーバンギャルド)はコラボやってみようって話になった時に、その日がたまたまクリスマスでアーバンギャルドのクリスマスライブを観に行っていたんですよ、僕。で、その日に相談して「天馬君歌えたりする?」って言ったら「いいよ」って言ってくれて。
ーー元々仲が良かったんですか?
松本 そうですね。一緒にツアーまわったりとかしてました。普段もよく話したりとかしてて。アーバンギャルドっていうのがすごく直接的な毒毒しさがいっぱいある歌詞だし、アーバンギャルドなことをしてるじゃないですか。で、それを 今僕が「やみこさん」みたいな事細かに設定が決まっている存在を掲げて、「こういう人たちに伝えたい」っていうのをまず全部投げて。でも僕が歌うっていうことを、つまり真空ホロウがやるっていうことを前提に書いてくださいっていう。アーバンギャルドの色を押出さなくていいっていうことを伝えて、『作詞家松永天馬』として書いてもらったんですよ。それで返ってきたのがこれでっていう感じで。UCARYさん(UCARY & THE VALENTINE)に関しては、天馬くんに書いてもらうんだったら、僕は混声がいいなと思ったんです。で、モデルさんで歌を歌えるって僕はUCARYさんが一番最初に頭に思い浮かんで、連絡先も知らないし全然会ったことも話したこともなかったんですけど、スタッフさんに「UCARYさんとやりたいんです」って言ってみました。そしたらOKいただけて。
ーーではUCARYさんとは初対面で?
松本 そうです、レコーディングで。その前にどういう風に歌って欲しいというやりとりはメールでさせていただいてたんですけど。レコーディングの時に初めましてで、全員人見知りっていう(笑)。
ーーなるほど。CIVILIANのコヤマさんはいかがですか?
松本 彼を選んだ理由っていうのは、僕とコヤマ君にすごい近しい部分が多いっていうのを、以前からファンの方や関係者の方に言われてて。声質とか、風体みたいなものが。で、もしかしたら性格もかなって思ったら、同じベクトルで同じ照準合わせて、一緒に曲かけるんじゃないかなと考えたんです。歌詞をまとめる作業の時に一緒にいてくれて、すごいまっすぐな意見を言ってくれました。
ーーどんな意見だったんですか?
松本 僕らではわからない俯瞰した目線を送ってもらったていう感じですね。
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ーーあと伊東歌詞太郎さんですね。
松本 そうです、歌詞太郎さんは元々一緒に飲んだりとかしてて。で、「歌詞太郎さん書いてください」って言ったら、「いいよ」って3時間後くらいにワンコーラスあがってきて。
ーーコラボ楽曲も含めて実際完成したアルバムを聴いた時の感触はいかがでしたか?
松本 全部が完成した帰り道はなんか感慨深かったですね。
高原 私も感慨深かったです。なんかこう、あ、できたみたいな。通して聴いた時は、我が子が育つような感じの感覚になって、泣きそうになりました。
ーー今回のリリースとツアーを通して、バンドとしてどう成長していきたいかというビジョンってありますか?
松本 今回の作品は、今まで真空ホロウの音楽を聴いたことない方にも聴いてもらえる、それぐらい間口の広いものができたと思うので、本当に誰でも受け入れて欲しいです。
高原 私が入った1枚目で、前作とはかなり色が違うと思うのでこの新しい真空ホロウっていうのを、多くの方に感じて欲しいですね。
ーー最後に読者の方にメッセージをお願いします。
松本 今回の新しいアルバムは、SNSに依存していたりとか自分では認められないけど承認欲求がすごい強かったりとか、そういう方々に響くんじゃないかなと思っております。ぜひ多くの方に聴いて欲しいです!
インタビュー・文 徳田菜摘(muevo)
写真 イトウユキ
真空ホロウ
2006年、松本明人(ヴォーカル、ギター)を中心にスリーピースバンドとして始動。2009年、『RO69』が運営する新人コンテスト『RO69JACK 2009』を優勝し、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009』に出演。2010年、RO69主催レーベル「JACKMAN RECORDS」より1stミニアルバム「contradiction of the green forest」をリリース。2012年、エピックレコードよりミニアルバム「小さな世界」でメジャーデビュー。2014年、テレビ東京アニメ「NARUTO-ナルト-疾風伝」1月クールエンディングテーマとして1st Single 「虹」をリリース。2015年、メンバーの脱退により松本明人のソロプロジェクトとして活動。2017年、高原未奈(ベース、コーラス)の加入により、バンド活動を再開。ROCK IN JAPAN FESTIVALを始め、数々のFESに出演を果たすなど、シーンの次世代を担うアーティストとして注目を集めている。
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