「自己内省音楽」というテーマを掲げ、内向きな世界観を淡々と描く4人組バンド、まちがいさがし。

その活動はインターネット上でのMV公開がメインとなっていて、宮城県出身ということ以外はプロフィールの多くが謎に包まれているミステリアスなバンドだ。

活動歴は意外にも長く、2011年にSCHOOL OF LOCK!閃光ライオット2011東日本大会に進出したことから本格的に始動したという彼ら。その後は4年半という活動休止期間を挟み、2016年からハイペースでのMV公開を開始。MVはいずれも数万再生以上を記録するなど、静かに、しかし確実に邦ロックファンの中に存在を浸透させてきた。

また、社会人バンドとして活動していることでも知られている彼ら。「学校を卒業して、社会に出て働き始める」という、ごく普通の道を歩んできたからこその生活感あふれるノスタルジーを描いているのも、彼らの特徴だ。

そんなまちがいさがしの楽曲を実際に聴いて、その魅力を体感していこう。



●ラヴソングに騙されて



まず紹介するのは、YouTubeでの再生回数が50万回を大きく上回り、まちがいさがしの代表曲となっている「ラヴソングに騙されて」だ。

そのサウンドは穏やかでキャッチーで、耳に心地のいいポップナンバーとなっている。しかし、曲調は決して明るく朗らかなわけではなく、小さなため息の聴こえてきそうな、いい意味でどこかネガティブで内気な感情を漂わせている。

同じような言葉を使い、代り映えのしないストーリーを描くたくさんの「ラヴソング」たち。それらに対する諦めを呟き、それでもその歌詞に心を打たれたような気になって自分を騙しながら日々をやり過ごす。

そんな、やるせない日常とそこへの諦めの感情が表れた、シニカルでダウナーな一曲だ。



●少しずつどうでもよくなる



「少しずつどうでもよくなる」は、新しい生活の中で少しずつ消えていく「過去の日常」について歌ったバラードソングだ。

引っ越し、進学、就職、転勤。様々な理由で、それまで日々を過ごした場所を離れて新しい街で新しい生活を始める人は多い。そしてそれは、親しい人たちや見慣れた街並みを離れることを意味する。

最初は誰もがそんな大きな変化に戸惑うも、時間が経つにつれて新しい日々に慣れ、昔の生活の記憶が薄れていく。そして、昔大切だったこと、愛しかった人のことが「少しずつどうでもよく」なっていく。

そんな、どこにでもありふれた小さな悲劇を静かに描くこの曲。ゆったりしたリズムと淡いサウンドながら、聴いていてハッとさせられるものがある。



●うつらないドラマ


寂しげな曲が多いまちがいさがしだが、この「うつらないドラマ」は彼らのポップロックバンドとしての表情が前面に押し出された、軽快なキラーチューンとなっている。 

そこで歌われるのは、普通ならピックアップされることもない、その他大勢の「ドラマ」だ。大きな出来事もなく、芯のあるドラマチックなストーリーがあるわけでもなく、ちょっと何か起こっても誰も気にも留めない。まさに「うつらないドラマ」という名の人々の日常がテーマになっている。 

おどけた雰囲気で代り映えのしない日常を歌いながら、最後には「ぼくはドラマしてみせるよ」と小さな冒険心を燃やす様子もうかがえて、低テンションをキープしながらも救いのある一曲だ。 



徹底的に自分の内面をテーマにしたまちがいさがしの音楽は、まさに「自己内省音楽」以上に的確にそれを表せる言葉はないだろう。

どこまでも内向きなストーリーを、飲み込みやすいロックサウンドに乗せて描く。ごく普通に生きてきた彼らのメッセージだからこそ、多くの「普通の人」である私たちには、ひとつひとつの言葉がリアルな体温をもって響いてくるのだろう。

そんなまちがいさがしというバンド、2019年2月9日には東京吉祥寺でのワンマンライブも決まっているそうで、これからのますますの飛躍が期待される。

彼らが描き続ける自己内省的な世界観に、これからも要注目だ。


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