ボカロPや歌い手など、インターネット発の活動スタイルで話題を集めるアーティストが増えた現代の音楽シーン。その中でまた一人、大きな注目をもって音楽ファンたちに迎えられ、支持を集めているアーティストがいる。

それが、1996年生まれのシンガーソングライター、キタニタツヤだ。
ボカロP「こんにちは谷田さん」名義で2014年に初のオリジナル楽曲を発表した彼は、文学的な表現を駆使した仄暗い世界観と硬質なオルタナティブギターロックサウンドを武器に、徐々に話題を集めていく。
VOCALOID殿堂入り(ニコニコ動画での10万再生突破)を果たした代表曲「芥の部屋は錆色に沈む」に見られるような、ボカロ音楽界ではやや異質な生々しいバンドサウンドのスタイルによって、ひとつのシーンを築いた。
また、その活動と並行して、バンド「羊の群れは笑わない。」のフロントマンを務めるなどリアルでの活動もくり広げてきたキタニタツヤ。自身のボカロ曲のセルフカバーやアイドルグループへの楽曲提供などで、シンガーソングライターとしてもその存在感を増していくようになる。
 
そして2018年、彼の活動は一気に加速した。
作曲家の渡辺翔とボーカリストのsanaとともに始動したバンド「sajou no hana」はアニメシーンなどを中心に急速に話題を集め、キタニタツヤ自身もソロ名義でアルバム「I DO(NOT)LOVE YOU.」をリリース。より研ぎ澄まされたストーリー性とハイレベルなサウンドメイクで、大きな反響を呼んだ。
2019年にはチケットが即日ソールドしたワンマンライブを大盛況で終え、Village Vanguardとコラボしたワンコインシングル「Sad Girl」とオリジナルグッズをリリースするなど、その存在感はネットシーンを超えて、広く邦楽シーン・サブカルチャーシーンに知れ渡りつつある。
 
ハイスピードな活動ペースと圧倒的なクオリティの作品群で、謎めいた存在感を放ってきたキタニタツヤ。しかし、内省的でシリアスな音楽性とは裏腹に、メディアなどでは明るい一面も見せている。
インタビュー動画やキタニ自身の配信生放送などを見ても、ネット音楽家としての活動とバンドマン的な表立った活動の両方をこなし、多方面でカリスマ性を発揮する人柄が見てとれる。好きなものを「料理」と「缶チューハイ」と語るなど素朴な一面も見せ、多くの人を惹きつける「ロックスター」としての資質も感じさせてくれる人物だ。
 

・悪魔の踊り方



アーティストとしてのキタニタツヤを知る上でまず聴きたいのが、彼の最大の代表曲として知られる「悪魔の踊り方」だ。

基本的には自己の内面を見つめた曲が多いというキタニタツヤだが、この曲に関しては「他者へのメッセージ」というかたちで歌詞が書かれているという。
そこには痛烈な皮肉や、その中にも聴き手を鼓舞するような熱が込められていて、鋭利さとキャッチーさを両立させたサウンドも合わさって、強烈なインパクトを与えてくる。
キタニタツヤというクリエイターが見せる灰色の情景、そして一癖も二癖もあるいい意味で捻くれたセンスがひしひしと感じられるキラーチューンだ。
 

・Sad Girl



Village Vanguardとのコラボシングルとしてリリースされた「Sad Girl」では、それまでのオルタナティブロック色だけでなく、そこにダンスポップやゴスポップといった新要素も加えた、キタニタツヤの新境地が開かれている。

好きなアーティストにPeople In The Boxや中田裕二(ex.椿屋四重奏)、King Gnuなどを挙げている彼だが、そんな音楽的な嗜好の影響が表れているような、艶やかさとダークな色彩が見られる一曲だ。
そこで描かれるストーリーは、人間の浅ましさ、醜さ、身勝手さを生々しく容赦なく炙り出している。目を逸らしたくなるほど汚くて、だからこそ愛さずには、受け入れずにはいられない。そんな複雑な赦しが感じられるメッセージ性は、聴き手の心の影に、深く深く突き刺さってくるだろう。
 

オルタナティブロックを主軸にいくつものジャンルのエッセンスを織り交ぜ、そこに文学的で内省的な哲学を合わせて独自の作品に昇華させたキタニタツヤの音楽。
既に珍しい存在ではなくなった「ネット発の次世代アーティスト」という属性の中でも彼が一際異彩を放っているのは、このように圧倒的な濃さをもって完成された世界観があるからこそだろう。
そんなキタニタツヤだが、2019年4月6日には同じくネット発で話題を集めるシンガーソングライターの和田たけあきやseeeeecunにゲストアクトのかいりきベアを加え、ライブツアー「Vox Box」の東京公演を開催する。
さらに、5月31日には会場キャパを大幅拡大した2度目のワンマンライブ「No H(e)aven for Her」も開催予定だ。
ライブアーティストとしても話題を集めてきたキタニタツヤ。その生のパフォーマンスによる熱い感情の叫びを、ぜひ間近で体感してみてほしい。
常に進化を続け、驚きの表現を見せる彼は、間違いなく現代音楽シーンの中でも最重要の存在だ。
 
【Twitter】https://twitter.com/hello_tanitasan
 
【イベント情報】
2019/5/31
渋谷WWW
キタニタツヤ ONE MAN LIVE「No H(e)aven for Her」
OPEN/START18:45 / 19:30
ADV./DOOR¥2,800 / ¥3,300(ドリンク代別)
TICKET◆一般発売中 購入はこちら https://eplus.jp/sf/detail/2795240001-P0030002P021001
 
2019/4/6
Zirco Tokyo
「Live Fes “Vox Box”Tour 2019」
OPEN/START18:00 / 18:30
ADV¥3,500 (ドリンク代別)
◆出演
和田たけあき
seeeeecun
キタニタツヤ
かいりきベア