国内ロックシーンにおいて、常に異色の存在感を放ってきた超個性派ハードロックバンド、人間椅子。
その始動は1987年。以降の邦楽ロック界でコアな音楽ファンを中心に圧倒的な高評価を集めてきた彼らは、普遍的なハードロックと和のテイストを色濃く取り入れた詞世界による「和洋折衷」とでも呼ぶべき音像で独自の立ち位置を確立してきた。
特に2010年代に入ってからは、アーティストへの楽曲提供や夏フェスへの出演、ドラマ主題歌タイアップ、MVのスマッシュヒットなどが合わさり、人気がさらに拡大。バンドの絶頂期を現在進行形で迎えながら、国外にまで話題を広げつつある存在だ。そんな人間椅子の近年の活動を紹介していこう。
・NINGEN ISU / Heartless Scat（人間椅子 / 無情のスキャット）
2019年6月にリリースされた21枚目のアルバム「新青年」。そのリード曲となった「無情のスキャット」は、現時点で700万再生を突破し、今もなお大きな話題を呼び続けているナンバーだ。
8分を超える長尺の中で目まぐるしく移り変わる曲展開、強烈なギターリフの数々、力強く重厚に空気を鳴らすベースとドラム。そこに絡み合う日本語詞の世界観。自ら「様式美」と語るハードロックの王道スタイルに乗りながら、確かな独自色を見せる人間椅子の唯一無二の個性を、ダイレクトに体感できる。
コメントでは海外からの言及が多く、アカウント公式から英語訳も掲載。国境を超えて、世界のハードロックファンの注目を集めている。
このMVのスマッシュヒットが追い風となり、アルバムは自身最高となるオリコン14位を記録。アルバムタイトルの「新青年」は江戸川乱歩が関わっていた推理小説雑誌からとられているそうで、乱歩の短編タイトルを由来に持つ「人間椅子」というバンド名ともつながりを感じさせる。
既に名盤との呼び声が高いこの作品が、これからの彼らの代表作として長く語られていくのは間違いないだろう。
CDでのみ聴けるボーナストラック「地獄のご馳走」も収録されているので、気になったロックファンは是非CDとして手に取ってみてほしい。
・「無情のスキャット」リアクション動画
チャンネル登録者が10万人を突破した人間椅子の公式チャンネル。そこではMVやトレーラー映像、ライブ映像などのコンテンツはもちろん、メンバーによるトークや生配信、自身の作品への公式リアクションなど、さまざまな動画が公開されている。
また、海外レビュワーのリアクションをまとめた再生リストなども作られており、彼らを取り巻く音楽ファンの反応を知ることができるのも見どころだ。
・哀愁のワジマシーン
バンド公式チャンネルのみならず、ギターボーカル和嶋慎治氏によるバイク・キャンプ関連の個人チャンネルも設立されている。アーティストがファンと繋がりを深めるためにYouTubeへの動画投稿を行うことがムーブメントになっている現代で、その時代の流れにスマートに乗っていく彼らのスタイルが見られるのがポイントだ。
もちろん、「一人の男の趣味」を見せて語るエンタメチャンネルとしても楽しめる。バイクファン、キャンプファンは必見だ。
・Spotify公式アカウント
https://open.spotify.com/user/h41w8p9vpxsip6l9jn8f3nn29
サブスクリプション音楽シーンでも独自の活動を展開する人間椅子。そこでは自身の楽曲配信はもちろん、主なライブのセットリストを再現するプレイリスト、テーマやカテゴライズごとのプレイリスト、さらにはメンバーが厳選した他アーティストの楽曲のプレイリストなど、膨大な数のプレイリストが公開されている。
人間椅子の世界観に触れ、さらには彼らのルーツとなったハードロックの世界に奥深く浸れるので、ロックファンはぜひチェックしてみてほしい。
音楽性はもちろん、その活動スタイルでもユニークかつアグレッシブな姿勢を見せてきた人間椅子。海外からの注目度も高まっている彼らだが、2019年12月リリースのベストアルバムでは全曲の英語訳を収録するなど、バンド自身もより海外への発信を進めている。
そんな彼らのロックバンドとしての真骨頂は、やはり「ライブ」にある。2020年の夏にも「バンド生活三十年いまだ継続中～人間椅子お礼参りツアー」と題したワンマンツアーを予定していたが、コロナウイルス感染拡大防止のために現在延期となっている。1日も早く人間椅子のライブを現場で観られる日を心待ちにしながら、今後の展開にも注目していきたい。
唯一無二の日本発ハードロックの世界に、ぜひ触れてみてほしい。
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