55ymtk　難解かつ極めてキャッチーな音を鳴らす、コンセプチュアルなボカロP

「キャッチー・転調・変拍子」をテーマに、複雑な展開でありつつも聴きやすい音楽であることを美学とするボカロP、55ymtk。（ゴーゴーワイエムティーケー）

その難解な楽曲に対して、詞遊びを大事にしつつも物語性のある歌詞を乗せることでユニークな世界観を表現している。楽曲におけるコンセプトもはっきりしていることが多く、一度聴くとまた別の曲も聴いてみたくなるなど、中毒性が抜群だというのも一つの特徴。

2019年6月に投稿した楽曲『Gossip』は、2020年10月現在で再生回数32万回以上と、スマッシュヒットを記録。さらにこの2020年1月に公開した『Thursday』、同5月に公開した『落伍者は人道主義に縋る』など、数万回再生を超える楽曲も多数抱えているボカロPだ。

・落伍者は人道主義に縋る / Dropout depends on Humanism 【GUMI】

名前に数字を含む総勢10名のボカロPによるコンピレーションアルバム『Number Compilation Album』、通称『数字コンピ』に収録されている1曲。そのタイトルにもあるように楽曲制作のモチーフとなっているのは「伍」だ。

「伍拍子」のリフが入っており、歌詞にも「伍」が5回登場。さらにコードの面でも「伍和音(テンションコード)」だけを用いており、楽曲の長さも「弐分伍伍秒（2分55秒）」。そしてタイトルに「伍」を使うという「伍点」が盛り込まれている。そんな楽曲制作のコンセプトやその表現方法からして、面白さが全開となっている1曲だ。

もちろんただコンセプチュアルなだけではなくそのサウンドは、音楽的には難解でありながらも極めてキャッチー。ノリの良さも抜群だ。ノレてかっこよくて、さらに面白いという、55ymtkの音楽の良いところを存分に味わえるだろう。

・ミッドナイト・スイマー / Midnight Swimmer 【初音ミク】Hatsune Miku

「初めて、生ドラム以外のリズムパートを使用しました」という楽曲『ミッドナイト・スイマー』。

現代的シティポップにも通ずるようなポップなサウンド感。軽やかなメロディーライン。それでいて、「主人公が人生を彷徨っている姿を、深夜徘徊し深海に潜るような描写で表現しています。風景描写・心情描写の両方を取り込むことを意識しました」と話すように、視覚的でありながらも内面を映し出すような歌詞もある。暗中模索しながらも重たくなりすぎないそのバランス感覚が実に心地よい。聴きながら夜の街をさまよい歩いてみれば、きっと一人抱えていた思いが溶け出して、少し心が楽になっていくはず。そんな雰囲気を醸し出す１曲だ。

楽曲の世界観を的確に表現したアニメMVにも注目。

・UNA-GimmiQ【音街ウナ】Otomachi Una

音街ウナ専門取扱コンピレーションCD『ウナギノボリ』に向けて作られた1曲で、同作1曲目に収録されている。

転調を念頭に置いて制作されており、全部で12回の転調がある。それだけ聴くと無秩序でとにかくカオスな世界観の1曲なのではないかと思ってしまうが、もちろんここにあるサウンド感はキャッチーでまとまりがある。ハードなロックサウンドや電波的な電子音。さらには華やかなブラスサウンドなど、様々な音や様々なジャンルの音楽をミックスしている感はあるのに、それでも嫌な違和感が全くないのだ。「とにかく複雑に尚且つキャッチーに」という制作時の信条をしっかりと体現した1曲だといえるだろう。

複雑な楽曲ではあるが、MVにはコードが記載されていたり、キーによって動画の色が変わったり、リズムパターンが各セクションで変わるようになっていたりと、誰にでもわかりやすく楽しめる要素もある。アニソンのような雰囲気で「日本語の響きを楽しんでいただけたら」という思いで綴られている歌詞も面白い。

いい意味での変態的な音楽性もありながら、メインストリームで通用するキャッチーさを兼ね備えている唯一無二のボカロＰ、55ymtk。

次回作については「明確なコンセプトがある物を考えている。メジャーキーのわかりやすいものとマイナーキーで変拍子のもの、みたいな感じで制作したい」と話してくれた。また「定期的にリード曲を出したい」とのことなので、期待して続報を待っておこう。

【読者に向けて】

来年は明確なコンセプトを持ったフルアルバムを発表する予定です。

物語のある楽曲を書きます。ぜひ歌詞もご覧いただければと思います。

引き続き、よろしくお願いいたします。

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【リリース情報】