ニコニコ動画の発足、及び初音ミクを始めとするボーカロイドの発売は、日本の現代音楽史における最大のイベントだった。この二つの台頭により、インターネット上で活動するアーティストが激増した。くりむぞんは、そんな中で登場した歌い手の一人だ。「歌ってみた」と呼ばれるカヴァー動画に親しんでいる人なら一度は「ルームメイトがいない間に歌ってみた」というタイトルを見たことがあるだろう。
くりむぞんは、日本の大学に通いながら独学でDTMを使った音楽制作を学び、卒業後はボストンの音楽大学へ留学するなど、しっかりと音楽を学んだ経歴を持つ。留学期間中にボーカロイド曲のカヴァーやオリジナル曲の発表などの活動を始め、現在に至るまで、インターネットを中心とした活動を行っている。
くりむぞん一覧 by くりむぞん
http://www.nicovideo.jp/mylist/3962892
ボカロのカヴァー曲では曲調によって、時に可愛らしく、時に色気満載でと声音を使い分けるくりむぞんだが、得意とするのはR&Bやバラードといったジャンル。その真骨頂ともいうべきは、2009年に動画を公開したオリジナル曲「流れ星」だ。穏やかに流れる旋律と、優しい声に癒やされる。[TEST]の奏でるギターや、管弦のアレンジも心地良く、満点の空を想起させる。
活動8周年の記念作は、みきとPが歌い手・りぶに贈った3部作、「サリシノハラ」「ヨンジュウナナ」「アカイト」のカヴァーだ。普通の男の子とアイドルの少女との関係を描いた3曲を、自らの解釈のもと歌いあげている。原曲を知っていると、最初に聴いた時にある種の違和感を覚えるだろう。しかし聴いているうちに、3曲それぞれ違う切なさを表す歌声に、ぎゅっと胸を締め付けられる。特に間奏のアレンジには、原曲にはなかった魅力がある。一度聴き終わったらきっと、もう一度頭から聴きたくなるはずだ。
声は時に、言葉や表情以上に多くのことを伝える。くりむぞんの歌声を聴くと、改めてそう痛感させられる。歌唱力よりも表現力を大切にするからこその魅力を、まずは一度聴いてほしい。
文・小島沙耶
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