アーティストのK(Vo, Gt)がフロントマンを務めるuchuu,というバンドは、大阪を拠点に活動を広げ、瞬く間にその中毒性のある音楽と世界観で注目を集めている。今年6月にリリースされた1stオリジナルアルバム『+1』の反響も大きかった。今回はバンドの核でもあるK(uchuu, Vo, Gt, Programming)のクリエイターとしての側面に着目してみた。するとそこには、無限に広がるイメージの宇宙があった。
▼レコーディングからミックスまで。すべてを自ら手掛ける理由
K 楽曲制作・レコーディング・ミックスというのは、僕の中では一つのワークフローなんです。自身がミックスしなければ完成し遂げることが出来ない。例えば、録音したドラムのミックスバスに、iZotopeのプラグインを通し、MIDIでさらに演奏を録音する。なんてことは、通常のバンドレコーディングでは、なかなかやりませんからね(笑)。なので、レコーディングやミックスの作業を自身で行うというのは、すごく自然な流れだと思っています。
▼アルバム『+1』での一番のこだわり
K 一曲一曲の個性がとても強いので、歌のマイク選びにはこだわりました。いつもヴィンテージの87にAMEKのプリが基本でしたが、曲によってマイクを変え、自身で歌のマイクプリを探しまわって、今はUniversal Audioの6176プリが一番好みで、歌は今回ほぼすべてこれで録音しました。今は早く自分に合うマイクを見つけたいと思っています。
※アルバムの収録も行った「 STUDIO BOKU NO IE」の全貌公開
アルバムのレコーディングも行われたというKの自宅スタジオの様子
▼アルバム『+1』のジャケットに隠されたトリックとは
K 昨今CD離れが叫ばれていますが、僕はCDで育った世代ですし、歌詞のある音楽を鳴らしている以上、「みんなにも詞を読んでもらいたい」という純粋な気持ちがアルバムのジャケットに仕掛けを作ろうと思った動機です。「手に取りたくなるジャケットとは何だろう? CDショップ・みんなの持っているCDラックなど、時代というフォーマットに乗った上で面白いものって何だろう?」と考え、今回のアートワークにたどり着きました。あくまで一見は、プラケースに入っていて分からないけど、開けてみると、そこに驚きやワクワクがあればいいなって。僕の「無理」を聞いてくれたスタッフやマネージャーには、本当感謝です(笑)。
▼アートワークへのこだわり
K 単純に好きなことなんです。デザインしたり、コンポーズしたり、0から1を生み出すことが。さらにそれが育っていくのを見るのが本当に楽しいし嬉しいんです。自分たちが信頼する、言わばメンバーのような人にお願いすることが出来ればいいんですが、これから出会えるのかな〜って思っています!(笑) 今は、好きなことですし、チームのみんなが僕のデザインを信頼してくれているので、可能な限りは責任を持って制作したいと思っています。
▼「Yellow」や 「HAPPY」ではミュージックビデオのディレクションにも挑戦
K 僕の中では、音楽も映像もアートワークもすべて「イメージの世界」です。そこに隔たりがなくて、音楽を制作しながら風景も角度も色も形も人も温度もすべて一緒に出来上がるんです。なので、例えば「HAPPY」を作っているときにMVラストのシーンでもある、みんなが踊っているスローな映像が浮かんでいました。それを具現化する作業がもしかするとMVなのかもしれませんね。とはいえ、一人の小さな世界でしかないので、音楽以外のことは信頼出来る仲間に任せていきたいなって思ってます。(笑)
▼史上初となる最新技術を取り入れた話題のMV「SI(G)N SEKAI」
K 演奏している前に特殊なスクリーンがあって、外側からは映像が見えるのですが、演奏している僕らにはまったく見えないんです。一度撮ってみて、プレイバックして見た際には驚愕しました。想像をはるかに超える凄さで。撮りながらブラッシュアップされていき、完成へと向かって、みんなで一つのものを作り上げていく、あのチーム感が大好きでした。GROUNDRIDDIMとVJ Chaosgroove、そしてuchuu,。この三者が「現場」で創り上げた作品です。表現とテクノロジーの関係性は僕の中でとても大事なものですね。イマジネーションを具現化する上でテクノロジーが進化すると、よりリアリティなものを届けられるので。
▼表現の原動力は「人」
K 原動力は、「人」です。伝えることの出来る、言い換えれば受け取ってくれる人たちが存在してくれる。これこそが僕の原動力ですね。受け取ってくれた人の人生が、ほんの少しでも豊かになればいいなと思って音楽をしているので。なので、僕自身も旅行をしたり、日常の無意識を意識してみたり、より多くの素晴らしい景色を見て、より多くを経験して、インスピレーションの扉の鍵を探し続けています。
▼Kにとっての音楽
K 表現に関して音楽だけとりわけ分けていることはないのですが、音楽は「生き物」ですかね。僕が居なくなっても生き続けますし、育ち続ける。そんな、みんなとのコミニュケーションツールかもしれませんね。限られた人生の中で、より多くの人と出会うことで自分の表現も豊かになり。先ほども言いましたが、受け取ってくれた人の人生が、ほんの少しでも豊かになればいいなと思います。
文・林 佳奈(muevo)
uchuu,
K(Vo, Gt, Programming)、Nao(Key)、Hiroshi(Sequence, Per)、Airi (Dr)、sujin(Bassguitar)。2010年頃より活動を開始。大阪を中心に精力的にライヴ活動を展開し、大阪のインディ・シーンの中核を担うまでに成長。2013年6月に1st EP『Re;Welt』、同年12月に1stミニアルバム『Weltraum;Gate』を発表。2015年4月、3rdミニ・アルバム『HELLO,HELLO,HELLO,』をリリース。2016年6月に1stアルバム『+1』を発表した。
uchuu, オフィシャルホームページ