やもとなおこのライヴ映像を初めて聴いた時、“かっこいい!”と心底感じた。ハスキーな歌声に魂がこもっていて、画面越しでもその熱量が十二分に伝わってくるのだ。小柄な女性とは思えないほどの熱量を発する彼女の歌を、もっともっと聴きたい・多くの人に聴いてほしいと思い筆を取った。
説明するよりも、まずは「泣きたいよブルーズ」のライヴ映像をご覧いただきたい。ギターを掻き鳴らし、ブルース・ハープを吹きながら叫ぶように歌うのは、赤裸々に書かれた歌詞だ。〈期待なんかすんな 僕はいつも独りじゃないか〉〈誰のせいにもすんな 僕は今日も生きてるじゃないか〉という言葉に、ハッとさせられた。背中を押すわけでも、強く励ますわけでもなく、それでもリスナーにしっかりと寄り添っている。突き放すかのように聴こえる歌詞もあるが、そこがまたリアルだ。
中学1年の時、文化祭のステージで歌ったことをきっかけに、自分の思いを音楽で解放することを覚えたというやもと。もともと内気だったのが、歌うことで自らの存在価値を見出したのだという。その根本は今も変わらず、やもとは何かを伝えるために音楽を作っているわけではない。自身の中から出てくる素直な感情を、そのまま歌で表現しているのだ。だから彼女の歌は、人の心に響く。巷に溢れる前向きなメッセージ・ソングとは違い、聴き手が彼女の歌を自分の人生と重ねあわせることができるのである。
もう1曲、やもとの曲を紹介しよう。「僕らの3万ピース」は、ブラスバンドを引き連れたソウルフルなサウンドの楽曲だ。力強い歌声で、笑顔を見せながら歌う姿は、やっぱりかっこいい。楽しそうに自らを解放する姿には、ある種の憧れさえも抱く。やもとの力強い歌声を、ぜひ堪能してほしい。
文・小島沙耶
やまもとなおこ
2009年にソロ活動開始以来ライブは毎年100本を超え、その小さな身体から放たれているとは思えないほどに大きな歌を歌うシンガーソングライター。ROCK、POPS、FUNK、JAZZ、SOUL。そしてBLUES。ジャンルレスでバラエティーに富んだ曲調は、エッジのある特徴的な声と、生々しささえ感じるほど日常を描写した歌詞や言葉遊びの効いた歌詞により、どの曲も“やもとなおこ”らしさの溢れた曲となっている。毎年コンスタントにリリースをし、2013年には47都道府県ツアーを敢行。2014年には、Zepp DiverCity TOKYOへの出演を果たす。同年秋には、約600人収容のライブハウス 渋谷TSUTAYA O-WESTにて完全一人の弾き語りワンマンライブを開催。スタンディングで満員となった会場の中、アコースティックギター、エレキギター、ピアノ、ループステーション、ストンプボックスなどを駆使した多彩なステージングで、たった1人で2時間半のステージを大成功させる。2015年10月26日リリースされた最新アルバム「moonlight serenade」におけるツアーでは、自身初となるワンマンライブツアーを東京、北海道、新潟、大阪、名古屋と全国5ヶ所にて敢行。また、このツアーでは海外公演(台湾、ベトナム)を行うなどして、国内外、ライブを主軸として精力的に活動している。かっこよさ、可愛らしさ、そして愛嬌と、華やかで目で見ても楽しめるそのステージを堪能してほしい。
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