多くの人が動画サイトで音楽を聴く現代は、ミュージシャンにとって活躍の場が広がった時代といえる。中でも、ある楽曲をカヴァーして動画サイトに投稿する「歌ってみた」と呼ばれるジャンルでは、多くのヴォーカリスト(「歌い手」と呼ばれる)が活躍中だ。今回はその中から、めありーという歌い手を紹介しよう。
プロフィールを紹介する前に、まずは彼女の代表曲ともいえる「DAYBREAK FRONTLINE」を聴いていただきたい。ニコニコ動画では37万回以上再生されているこの曲は、まくし立てるような歌詞とずっと繰り返されるピアノが癖になる。ボーカロイド曲ならではの特徴をいくつも持った楽曲だが、めありーが歌うと無機質にはならず、やわらかさや温かさが際立つ。澄み切った高い声も、人肌のような温もりを持つ中低音も、どこか懐かしさを感じさせる楽曲にぴったりだ。約3分半の楽曲だが、ずっと聴いていたいとすら思わせる。
めありーは、もとはといえばパティシエを目指していたのだという。動画サイトへの投稿を始めたのは2013年と、ニコニコ動画系のミュージシャンとしては比較的最近(もともと、ボーカロイドや歌い手のことは知らなかったそうだ)。歌を歌える媒体としてネットを選んだ彼女は、今までに90を超える楽曲を投稿してきた。その後、めありーは見ず知らずの視聴者に自分の歌が届くことに感動し、パティシエの道ではなく歌の道へ。現在はその活動をインターネット上に限らず、ライヴハウスでの弾き語りを行っているほか、2016年にはシングル3部作として発表したミニアルバム『13月のメリー』もリリース。加えて、自身のデザインしたキャラクター「めあうさ」のグッズも人気を博している。
彼女の歌が愛される最大の理由は、透明感のある歌声だ。癖のない声は聴く人の心にすっと染み渡る。先日公開されたばかりの「ライカ」でも、その声を堪能することができる。「歌ってみた」動画では、選曲も歌い手の腕の見せ所の一つといえるが、めありーの選曲は自身の魅力を存分に引き出していると思う。
「ライカ」を聴いて強く耳に残るのは、気持ちいいくらいの疾走感と、切なさを含んだ声音。原曲の初音ミクの調教が比較的無機質なので余計、めありーの声の温かさが胸を打つ。切なさを切り取って歌に込めるのが、とても巧みだ。
前述の『13月のメリー』は、12カ月をテーマに作られたミニアルバムだ。この作品の収録曲はすべて、12人の作曲家たちによる書き下ろしだ。4月から順に4曲ずつ、3枚のCDから成る本作は、絵本を思わせる作りとなっている。タイトルが「12月」ではなく「13月」なのは、「13ヶ月目にはアルバムを手に取ってくれたあなたと、一緒に物語を紡いでいきたい」というめありーの想いがあったからだ。楽曲のみならず紙やサイズ感など、細部にまで彼女の強いこだわりが込められている。
今後は自身でも曲を作りたい、と話すめありー。その活動には様々な想いや、個々の物語が詰まっている。ボーカロイドやニコニコ動画に馴染みのない方にこそ、彼女の歌をぜひ聴いていただきたい
文・小島沙耶
めありー
ニコニコ動画などを中心に歌い手として活動中。自身のマスコットキャラクター「めあうさ」でイラストやグッズも作っている。2016年には4人のボカロPによる書下ろし4曲を収録し、春、夏、冬それぞれに1枚ずつ、計12曲で構成された三部作『13月のメリー』を発表した。
本作は5月31日に初のメジャー流通を予定している。
各店舗特典もあるのでお楽しみに!詳しくはHPにて随時お知らせいたします。
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