写真:3月2日(金)エピソードrelease tour 初日@下北沢SHELTER 撮影:カゲキノリコ
2015年1月、八王子にてギター3人でrem time rem timeを結成。同年8月、八王子バンド15組を一挙に集めた地域密着型オムニバス『八王子NOW 2015』に参加。発売記念全国ツアー8ヶ所を巡って得たものを糧に、自主企画イベントなど精力的なライヴ活動を展開。幾度かのメンバーチェンジを経て、これまでに自主制作でミニアルバム1枚、シングルを1枚発売している。今年1月24日にPIZZA OF DEATH RECORDS内のレーベル・Jun Gray Recordsからリリースされた1st.フルアルバム『エピソード』は、全国流通第一弾だ。
今回はその『エピソード』から二作品と過去楽曲のレビューを通して彼らを紹介したい。
● yellow
一言で言うなら、とても綺麗で儚げな曲。聴いている方としてはそういったイメージではあるが、演奏している側にとっては、悲しみや戸惑いや苦しさや不安…そんな感情がとめどなく詰まった一曲なのかもしれない。実は、2016年に亡くなったメンバーに向けて作った曲だ。
「君の好きだったテレキャスターのギター」「6弦のビート」といった分かりやすいワードから「散らかったままの部屋 君だけがいないまま」といった、知らなければ素通りしてしまうかもしれない、記憶に刻み込まれた光景を逃げることなく綴った『勇気』を感じる曲でもある。何故なら、歌うたびに目を背けられない現実と向き合わなければいけないのだから。それと同時に思うのは『覚悟』という光。キミのことは忘れない。それでもここから、立ち止まらず歩いていこう。そうして、現在のメンバーで初めて作ったのがこの曲だという。また、ところどころに彼の使っていたフレーズも散りばめられているのだとか。
トリプルギターならではの、2つのメロディラインが重なり合うイントロが何とも美しい、ザ・エモーショナルなナンバー。信じてた心のゆく先は、ホントはまだココにあるって、信じたい。
●pool
アルバムの発売に先駆け、会場限定で販売した先行シングルにも収録された「pool」。
蝉の声、ラムネのビー玉、宿題、木造の校舎、水遊び、人のいない体育館…アップテンポに清涼感と疾走感をプラスした演奏に、歌詞の中の景色が見事にマッチしたMVは、今の東京ではあまり見ることのなくなった、懐かしい日本の夏の日を感じさせてくれる。
5人の音のどれもが決して主張をしすぎず、1/5として他の4つの音を引き立て合ってひとつの音楽を作り上げている、という印象だ。どうせなら太陽の下で、もみくちゃで汗をかきながらこのグルーヴを感じたい、そんな欲求に駆られる一曲。
●「ひかりのまち」
何だろうか、なぜかとても物淋しい気分になる。交通量の少ない広々とした深夜の一般道、たまに遭遇するのは長距離トラックぐらいで、静まり返ったアスファルトに、オレンジ色のライトがチラチラと行き交う。繰り返し唄う「プラスチックトーキョー」というフレーズは、まさにそんな情景を表しているかのよう。地方から出てきた若者が東京という街に感じる冷たさや淋しさ、というイメージが真っ先に浮かぶが、彼らの出身が八王子ということを考えると、決して距離だけのことではなく、例えば時間帯であるとか、孤独感を抱いているだとか、その人それぞれの状況によって感じるプラスチック感もあるのかもしれない。
それにしても、彼らは自分たちの曲の世界感というものを、実にうまく表現しているバンドではないだろうか。詞のストーリーをよりドラマチックに仕上げている曲があり、それをそのまま映像に変換したかのようなMVに、ひとつの映画を観終えたような感覚になる。“ひかりのまち”と感じるのは、ココがとても暗いから。この曲をカーステにセットして、自分の中の真夜中の湾岸線を走りに行こう。
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