静岡県出身のシンガーソングライター・小林太郎。

2008年、人気テレビ番組「ストリートファイターズ」の番組内の企画に、小林がギターボーカルを務めるバンド・小林太郎とマサカリカツイダーズとして出場し、見事優勝。これを機に、彼の名前はたちまちインディーファンの間で広がっていった。


翌年にはソロ活動を発表。続く2010年にはファーストミニアルバム『Orkonpood』を全国リリースした。同年にはサマーソニックを始めとした大型フェスに16本も出演するという、新人では異例の活躍を見せた。その勢いのままセカンドアルバム『DANCING SHIVA』を同年内にリリースし、全国ツアーを敢行。ソールドアウトを続出させるという人気と確かな実力を見せた。2011年には小林太郎とYE$MANという名義でバンド活動を始め、ソロとしての活動は一時停滞したが、翌年にはソロ活動再開を発表。2013年にはファーストEP『MILESTONE』を機に、ついにメジャーデビューを飾った。以降もフルアルバム、シングルのリリースを重ね、ROCK IN JAPAN FESTIVALやCOUNTDOWN JAPANにも継続で出演するなど、大きな舞台で活躍する小林。現在は、前レーベルから独立し、自身のレーベル・MOTHERSMILK RECORDから活動し、より自分らしいやり方で音楽を発信している。


様々なタイアップを経て、幅広いファンを獲得する彼はまさに今活躍中のアーティストだ。 そんな小林太郎の人気に火をつけたタイアップ曲と、先月リリースされた新作EP『SQUEEZE』からイチオシ曲をピックアップし、彼の音楽の魅力について迫りたいと思う。



●「美紗子ちゃん」PV|小林太郎 -公式



ファーストミニアルバム『Orkonpood』収録の「美紗子ちゃん」は、インディーデビュー作品にしてさっそくタイアップソングとして多くの人に知れ渡った。大人気ドラマ作品・TRICKのスピンオフ作品である「警部補 矢部謙三」の主題歌として起用され、以前まではティーンエイジャーやインディーファンのリスナーが多かった小林は、幅広い年齢層のリスナーを獲得した。

ノスタルジックな空気感。切なくてあたたかいバンドサウンド。そして、心地良くも、胸を震わせる味深い小林の歌声には、涙を誘われるほど心を奪われてしまう。 想いが昇華されていく様を歌う歌詞は、とても詩的。身体と心と現実の間で彷徨う姿が、マイナーコードで繊細に描いていくバンド・アンサンブルと合わさることで、青春の香りを感じさせる。 


小林の歌声は、まるで天からの恵みだ。少ししゃがれた声はどれだけ張りあげても、優しく響き渡る。世界の隅っこから泣き声をあげるような、もの悲しさや哀愁を漂わせつつも、凛とした歌声で聴いている人の心を掴んで離さない。そして言葉をひとつひとつ誰かに届けるような丁寧さも感じられる。


心と心を繋ぐ歌声が、小林太郎というアーティストの最大の魅力である。



●「Jaguar」MV | 小林太郎公式



5月にリリースされたニューEP『SQUEEZE』から、まずご紹介するのは攻めきったパワフルなナンバー「Jaguar」。先述の「美紗子ちゃん」とは打って変わったガツンとくるエネルギッシュなバンドサウンドにこそ、彼の本性が見える。


J-POPやJ-ROCKを嗜む幼少期から始まり、The Beatlesをはじめとした60年代ロックンロールへの憧れ、そしてNirvanaやDinosaur Jr.といった80年代グランジ、オルタナティヴロックからの刺激が彼の音楽的感性に影響を与えている。その感性が本性を剥き出し、コテコテのグランジテイストに挑んだ結果がこの楽曲なのだ。彼の本質的に得意とするジャンルはこちらなのだと思わざるを得ないほど、マッチしている。

 

序盤から掻き鳴らされるディストーショナルな歪みはゴリゴリで刺激的。渋い小林の歌声が地の底から張り上げるように響き渡るのが、なんとも野性的でかっこいい。ロックスターさながらの貫録さえも感じさせるだろう。 


こういったグランジ譲りなロック魂が小林の楽曲には随所に感じられる。 色んな音楽にインスピレーションを受け、アウトプットに繋げているからこそ、より幅広いリスナーを獲得しているのだろう。


MVでは小林が長年主題歌を務める「仮面ライダーアマゾンズ」シリーズに出演する勝也、俊藤光利、小林亮太が登場。会社員たちが繰り広げるオフィスロックバトルと間で歌う小林の姿も見ごたえのあるMVとなっている。合わせてチェックしてみてほしい。 



●響


『SQUEEZE』からもう一曲お届けしたい。

ストレートなロックサウンドに爽快なアップチューンの「響」は、小林の素直な一面を映している。曲展開もとてもシンプルで、不必要なからくりは一切削ぎ落としたシンプルイズベストな楽曲。だからこそダイレクトに浮かび上がる歌詞のメッセージ性が、この曲のポイントだ。


「誰も君を縛れやしない」その言葉が力強く生きる歌詞は、ありのままに生きる人間への応援歌。こういった直接的なメッセージがある歌詞の曲も、そうでない曲でも、不思議と彼の歌を聴いていると、生きていたいと思える。小林の楽曲には、生があるからこその悩みや葛藤、あるいは喜びが秘められている。ありのままに生きているからこそぶち当たる思春期や深い悩みを、小林はありのままに歌っている。アタックの強い音、爽快なチューンの上でも聴きやすいなめらかな歌声は、生きていることの喜びや大切さを教えてくれるようだ。これぞまさに、小林の歌声が持つ天性の才能。リスナーの心に届き、「生きていたくなる」と思わせる歌声や詩的な歌詞が小林の音楽の魅力なのだ。



あらゆるジャンルから受けた影響をアウトプットに繋げ、心に染みわたる天性の歌声と生を映した歌詞を用いて音を紡ぐシンガーソングライター・小林太郎。


自身の音楽性の幅広さだけではなく、タイアップというチャンスを活かしさらに多くの人々から愛される彼は、天性の才能だけではなく、チャンスをモノにする実力も持っている。

次はどんな場所で、どんなところから彼の音楽が聴こえてくるか、楽しみで仕方がない。しかし、その前にチェックしておきたいのがmuevo voice読者のホンネ。今の小林太郎を知るには5月発売のEP『SQUEEZE』を手に取ってもらえるとわかるだろう。ライブやサーキットイベントへの出演も続々決定している。ぜひ小林太郎の今を、いち早くチェックしてみてほしい。



【CD情報】


5月23日(水)リリース ​「SQUEEZE」

MTMR-001/¥1,800 [MOTHERSMILK RECORD] 

 1. Squeeze 

 2. Jaguar 

 3. 響 

 4. 狼 

 5. バラード 


【HP】https://www.kobayashitaro.com

【Twitter】https://twitter.com/taro_kobayashi