自らを“直球怨念型シンガーソングライター”と表現するシンガーソングライター、萌江。
さらにいしのまき観光大使であり、地元・宮城の特産品である「ホヤ」のおいしさを全国・全世界へと発信するホヤのアイドル“ホヤドル”としての顔も持つ。
そんな二面性からも分かる通り萌江というアーティストは、一人百鬼夜行とでもいうべき、いろいろな顔を見せるアーティストだ。楽曲の幅が広く、それぞれの楽曲によって違う歌声を聴かせるというだけではなく、一つの楽曲の中で様々な顔を見せることもある。
シンガーソングライターを目指したきっかけは、高校一年生の時に体験した東日本大震災。祖父を津波で亡くしてしまったり、避難生活が長く続いたりする中で、音楽に救われてきた。そして自分でも音楽で人を元気にしたいと思うようになり、シンガーソングライターを目指し始める。
その後結婚を考えていた彼にフラれたことをきっかけに、その彼が反対していた音楽の道を進む決心をつけた。以降現在に至るまで、ライブ活動やリリース活動だけではなく、宮城のラジオ局「Datefm」や「ラジオ石巻」にてレギュラーを担当するなど、幅広く活動中。
・萌江「ほやのマーチ」
“ホヤドル”としての一面を色濃く反映した楽曲「ほやのマーチ」は自身いわく「石巻をテーマにしており、ホヤのことをもっとしってもらうために作りました」という1曲。
その可愛らしいタイトルからも分かる通り、楽曲は全体的にほのぼのとした雰囲気。NHKの「みんなのうた」で流れてきても全く違和感なく聴くことが出来るような柔らかいサウンドだ。
そんなサウンドに合わせるように、萌江の歌声もどこか力の抜けたような温かみのある歌声や、歌のおねえさんのような快活でカラッとした歌声になっている。
酒のつまみとしてホヤを嗜むような大人が聴いて楽しめるのは勿論のこと、そのサウンドや歌声の雰囲気によって、ホヤという名前を聞いたことがないような子どもまで楽しめる楽曲だといえる。
・萌江「嘘つき 〜呪ってもいいよね?♡〜」
逆にこちらの楽曲は“直球怨念型シンガーソングライター”としての表情を反映させた楽曲。
冒頭の≪あたしだけって言ったよね≫とうたう歌声からして、ほやのマーチで聴かせていた歌声とは遠くかけ離れている。息多めのかすれた歌声はまさに怨念めいた声で、まずそこでドキッと、あるいはゾクッとさせられることだろう。
歌詞だけ見ると≪許さない 許さない 許せない≫≪死ぬまで呪ってやるから≫と、かなり怖い雰囲気だが、その実サビのメロディーは明るくキレがあったり、サビの終わりは≪いいよね?♡≫とハートマークがついていたりと、重たすぎない仕上がりになっているところもポイント。ハートマークの部分は歌声も実際にハートマークが浮かぶような可愛らしい歌声で、表現力の高さに驚かされるだろう。
・萌江「ぱっつん!」from「萌江 5th Anniversary Live〜元カレにフラれて5年記念日ライブ〜」
件の元カレにフラれて5年記念という、なんとも攻めたアニバーサリーに行われたライブから、楽曲「ぱっつん!」の披露模様。
憑依型であり、高い表現力を持つアーティストである萌江は、エンターテイナーだと称されることも多い。このライブ映像でも、歌詞に反して笑顔がはじけるステージングに、様々な表現を聴かせる歌声と、彼女のエンターテイメント性を感じ取ることが出来るだろう。
「ぱっつんの前髪と一緒にあなたとの縁もぱっつん」という意味が込められているこの楽曲。サウンドは煌めくほどにポップでキャッチー。こんな楽曲があれば、元カレや片思いの相手への思いも笑いながら明るく切り落とせるのではないかと思えるほどにポップだ。失恋で思い悩んだ時に触れてみてほしい1曲。
「石巻の観光大使としての顔と、直球怨念型シンガーソングライターとして見せる顔の、両極端な二面性のギャップを楽しんでほしい」という彼女。
様々な顔を見せて、様々な歌声を聴かせる彼女の音楽であれば、いつまでも追いかけ続けても飽きることはないだろう。次はどんな顔を見せてくれるのか、わくわくしながら追いかけられる稀有なアーティストだ。
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