埼玉県出身のシンガー、チグリ・ハーブ。 

宮沢賢治の造語で、理想郷を意味する言葉『イーハトーブ』。そんなイーハトーブのような響きの名前が良いと考えていた時、ふっと浮かんだのがチグリ・ハーブだった。

2007年、ファーストアルバム『おまじない』をリリース。2010年には、セカンドアルバム『願いごと』を発売。そして昨年2019年、サードアルバム『ダイジョウブ』CD制作プロジェクトを立ち上げ、クラウドファンディングを実施。結果、見事に目標を達成し、2020年1月に同作をリリース。『ダイジョウブ』というそのタイトル通り、世の中に生きづらさを感じている人たちへ、歌とハグを届けた。

温かく包み込むような歌声だったり、民謡的に響いてきたり、その歌声の表現は豊か。しかしどんな表現をしていても共通して言えることがある。それが、そこに深いノスタルジーがあるということ。まるで胎児の頃にお腹の中で聴いていた歌声のように感じられ、故郷のような安心感を覚える。そんな歌声で心を整えてくれるシンガーだ。




・チグリ・ハーブ「願いごと」 




「東日本大震災の後立ち止まって、内面に問いかけるような静かさと強さがある楽曲」だという1曲『願いごと』。 

特に深いノスタルジーを感じる、誰しもの深い記憶にアプローチするような民謡的な歌声。温かく包み込むようで穏やかな全体のサウンド。しかし≪枯れ果てた土地に緑が芽生えて 透明な風が吹き抜ける日まで≫≪もし願いごとが叶うとしたなら 小さないのちの輝きを願おう≫と歌う歌詞には祈りや願いがあり、そこには力強さが宿る。そんな力強さや心への透過性の高いサウンドや歌声によって、きっといろいろな想いがほどけていくだろう。そして心には、シンプルな祈りや願い、愛が残るのだ。

福島県は石川郡石川町で撮影された映像も、どこかノスタルジックであり、静かさと力強さ、そして未来への希望が感じられる。是非映像も合わせて堪能してもらいたい。




・ダイジョウブ 




サードアルバム『ダイジョウブ』のタイトルトラック。「これまでは情緒や行間を読み取ってもらったりする楽曲が多かったが、この楽曲は自分の想いをダイレクトに伝えたいと思いセルフプロデュースで作った」と話す1曲だ。 

その言葉通り、歌詞には≪泣きたい時は我慢しないで泣きたいだけ泣いていいよ ずっと僕はそばに居る≫≪ゆっくりゆっくり信じながらその日を待とうよ≫と真っ直ぐな言葉が並ぶ。まるで母が子に向けて歌うような、包容力のある歌声と温かみのあるサウンドも相まって、本当にダイジョウブとハグされているような感覚で聴くことが出来るだろう。

誰かに大丈夫だと言ってもらいたい時、この楽曲は間違いなく力を貸してくれる。




・きしむ世界に放て愛の歌 




同じくサードアルバム『ダイジョウブ』に収録されているこの楽曲『きしむ世界に放て愛の歌』は、10年前からある楽曲をロックテイストにアレンジしたもの。 

ずんずんと響く重たいギターサウンドが冒頭から鳴り響くが、透明で温かいピアノの音色や穏やかなテンポ感によって、やはり包み込むような雰囲気は失われていない。攻撃的なバンドサウンドと歌声やメロディー、そしてピアノの音色の穏やかさのバランス感が新しいアレンジとなっている。

それは≪諦めず希望を描こう 人は皆 微力だけど無力じゃない≫という言葉をそのまま音にしたようなサウンドで、希望を描きたいと考える多くの人の心とリンクするはずだ。



「世代は違っても、同じことで悩んでいる方がいたら自分にできることを届けていきたい。そして音楽を届けるだけで終わるのではなく、たくさんの人たちとダイアログをしていきたい」と話す彼女。 

その歌声や言葉、サウンドはストレートに心に届く。そんな風に心に真っ直ぐ届く音楽は、間違いなくいつの時代にも必要だ。まして今の時代であれば、なおさら必要だろう。改めて、ここから長く追いかけていってもらいたいシンガーの一人だ。




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