“男女分裂”という唯一無二の技で楽曲を歌いあげるシンガー、Rio。


そんな特徴を生かした“男女分裂”の歌唱では、いわゆる「男性的な歌唱」と「女性的な歌唱」を一人二役で届けることが出来るので、無限の表現力をもって世界観を創出する。ハイトーンのボイスの美しさに驚愕し、低音ボイスのカッコよさにハッとさせられるだろう。


そんな、他ではまず味わうことが出来ない感覚を味あわせてくれるシンガーだ。




・同一人物が男女分裂して『ディズニーメドレー』英語で歌ってみた【Rio】



「自分にできることを全て詰め込んだ」という、“男女分裂”で描く『ディズニーメドレー』。


「ディズニー作品自体とても好きというのが第一にある。さらに男女分裂のスタイルで歌唱するというのは、自分の唯一の個性だと思っている。それに加えて自身が帰国子女でもあり、英語ができるという個性も活かし、“自分にしか出来ない作品”を意識して作った」というのがこの作品だ。


男性パートにおいては王子様感のある包容力と頼りがいのある歌声を、女性パートにおいてはしなやかながらも力強い歌声を届けているから、聴けば聴くほどに作品の世界観の中にのめり込んでいく。Rioの中に、両極端な自分の理想があるからこその完成度を誇る作品となっているのだろう。


製作期間はまる2ヶ月だという。「9曲分の練習が必要であり、全てを細かいニュアンスまで緻密に制作したので、レコーディングだけでもとても時間がかかった」とのこと。さらに歌と映像のどちらもとても大事にしているRioだけに、映像に関しても楽曲ごとに衣装や髪型もチェンジしているなど、こだわりを持って制作。それも時間がかかった理由の一つだ。

そんな苦労の末に発信したこの動画は、「海外の友人からもとても評判が高かった」そう。「言語的な説明なしに友人に届けることが出来て、改めて音楽の良さも感じた。なにも知らない人にもパッと見せられる、名刺代わりの動画」と話す1作だ。



・同一人物が男女分裂して『新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED) / Ado』歌ってみた【Rio】



こちらも男女分裂で描く、『新時代』の歌ってみた動画。


同曲を選んだのは、「平成から令和に変わり、様々なことが移り変わっていっている世の中で、ジェンダーを含む、様々な分野において“個人”が主張しやすくなってきたのではないかと感じます。ONE PIECE FILM REDの本編でも、ウタちゃんの思想としてありましたが、全員とは言わなくとも、よりそれぞれが楽しく、自分らしく生きていける『新時代』になっていくことを切に願います」という自身の想いから。


切実な祈りとしても、力強く進んでいくという意志表示としても聴くことが出来る歌声からも、その想いは伝わってくるだろう。

ちなみに同作に関しては歌と映像に関して、自身より以下のようにコメントをもらっているので、紹介したい。


■歌について


「基本的に、自分は男女の歌い分けをオクターブを変えてわかりやすく行っていますが、今回は楽曲の性質もあって、サビ以外の部分を男女とも同じ高さで歌唱してみたので注目してみていただけると嬉しいです」


■映像について


「今回は、AdoさんのCDジャケットをモチーフにてさせていただきました。女性の方の衣装は、映画のウタちゃんの服装。ウィッグを被らなかった理由としては、あくまで『Rioちゃん』として、歌唱を行いたかったからといった気持ちがあります。


男性の方は黒いジャケットに青い薔薇。こちらなのですが、なかなか運命的なものを感じまして…。というのも、自分は2019年頃に『青い薔薇』を自分のトレードマークとして取り入れ、衣装もそれをベースに組みました。それと今回のAdoさんの衣装のニュアンスが、とても近いと感じたので、そちらを着用してみました。


また『青い薔薇』の花言葉は『夢叶う』や『不可能を可能に』といったものなのですが、自分の『両性』といったスタンスがもし世の中に受け入れられることが今後あったとしたなら、青い薔薇のおかげもあったりするのかな、なんて思います(笑)」


・同一人物が男女分裂して『足りない / dustcell』歌ってみた【Rio】



「ディズニーのようなキラキラな世界も好きではあるが、一方でリアリティの強い世界を描いたような楽曲や、社会の闇を切り抜いたような、ドロドロとしたような作品も同じように大切だと感じている」というRio。


この楽曲『足りない』は、ドロドロ側の楽曲だといえるだろう。同曲を選んだのは「ダークサイドの魅力も伝えていきたい」という想いから。


そんな作品の中で特に惹きつけられるのは、女性パートの歌声の描き方だ。男性パートの歌声でももちろんそうなのだが、女性パートの歌声に特にダークなムードを強く感じる。ディズニープリセンスの希望や明るさが見えてくるような華やかな歌声ではなく、もっともっとリアルな、現実世界のダウナーな空気感を纏うのだ。そしてそれが、キラキラした歌声とはまた異なる、色気という魅力を感じさせる。


衣装は男性パート・女性パート共に黒で統一されており、それもまた色気のある雰囲気の創出、ドロドロしたリアリティの創出に一役買っていることは間違いないだろう。美しさもカッコよさも感じられるそんな映像も、是非合わせて楽しんでいただきたい。



・同一人物が男女分裂して『Habit / SEKAI NO OWARI』歌ってみた【Rio】



2022年10月22日、自身の生まれ持った性別に対してずっと違和感を覚えていたことを世間に公表したRio。つまり、自分の性自認が『両性』であることを正式にカミングアウトしたのだ。それについては、自身からのコメントをそのまま紹介したい。


「発表から一週間ほどして、本当に沢山の方からご意見をいただき、色々と考えさせられました。自分は、男性の身体で生まれてきたことについて、病院にいったこともあるくらい凄く悩んでいた時期もあり、今でも正直なところ、葛藤は沢山ありますが、結論としては受け入れています。


ただそれでも綺麗になりたい、可愛く生きたい!そして、時にはかっこよくしたい!という気持ちがあり、それを少しでも多くの人に認めてもらう為には『自分は男の子でも女の子でもあるんです』という言い方をしないと、『かっこいい=男、かわいい=女』といった固定観念がまだまだ強い世の中では、本当に自分が望むようには生きられないと感じています。


でも、自分と同じように悩んでいる方々や『そんなことない、人は生まれた性別に捉われないで自由に生きていいんだ』と本気で思っている人が沢山いるということを知れて、自分はとても気持ちが軽くなりました。もちろん、この世界には色々な人がいるので、ここから先も、まだまだ悩みは絶えない世の中だとは思っています。


ですが、少なくとも生き方、趣味や振る舞い、ファッション、性的指向などについては、もっともっと誰もが何にもとらわれず自由に選択して楽しめる世の中になったらいいなって引き続き、自分は願っています。聡明でかっこよく、淑やかで可憐な“Rio”を目指して、これからも頑張っていきたいと思います」

そんなRioがこの楽曲『Habit』を歌うのは、「(ジェンダーに限らず)世の中の悪いHabit(固定観念)に捉われず生きたっていい!と背中を押してくださったのがSEKAI NO OWARIさんの『Habit』でした」ということから。


今作は、「男性の身体で生まれたって高い声で可愛らしい動き(仕草)で歌ってもいい!女性の身体で生まれたって低い声でかっこいい動き(仕草)で歌ってもいい!」という気持ちを乗せて録音・撮影。実際に男性的な見た目で高音の可愛らしい歌声を聴かせたり、女性的な見た目でクールな低音を聴かせたりするなど、自在な表現を魅せる。そんな自由な表現が、実にクールな作品に仕上がっている。

また、「動画を見ていただけたら何となく察していただけるとは思うのですが、最初はRioくん(画面右側)は、見た目に準じていわゆる『男性らしい』動きを、Rioちゃん(画面左側)はいわゆる『女性らしい』動きを意識しています。しかし動画が進むにつれて、それぞれの動き(仕草)が、徐々に逆転していくような表現に挑戦してみました。


これは、今は皆、人目を気にして本当の自分を出すのが怖いかもしれないけど、時代が進むにつれて、少しずつ本当の自分が出せる人が増えるようになるといいな…といったメッセージを自分なりに込めています」と、歌声だけではなく視覚的にも想いのこもった表現を発信しているというのもポイントだ。

最後に、そんな作品の元となる原曲『Habit』及びSEKAI NO OWARIに対して、こんなコメントをくれた。

「≪自分で自分を分類するなよ 壊して見せろよ そのbad habit≫本当に、素敵なお言葉だと感じています。SEKAI NO OWARIさん、ありがとうございます」



改めて「自分はXジェンダー、その中でも細かく言えば両性という個性を持つ。そのままの自分での活動をすることで、多様性の認識をしてもらえたらいいなと思っている」と話すRio。


個性を自分の武器にして、唯一無二の世界観を創出できるRioはきっと、同じような個性を持つ人達や、あるいは同じではなくとも周りと異なる個性を持つ人の光になれる存在だ。


もっともっとたくさんの人に注目されて然るべき存在の一人だろう。