千葉県出身・東京都在住のシンガーソングライター・エッセイスト、のうじょうりえ。


日々の心象風景を『生きること』に視点を置いた文学的歌詞と共に、真摯で圧倒的なリアリティを持った美しい歌声とアコースティックサウンドで、自分自身と向き合う為の音楽を発表。耳の早い音楽ファンや、アーティスト達の間でも話題となっている。


デビューアルバムが発表され、レコーディングの忙しい合間を縫って、のうじょうりえ本人から楽曲やリリースの話を伺った。




・のうじょうりえ『enough』



「今までは『音楽で人を支えられる様になりたい』と思って活動してきたんですが、「優しい人」だと言われてしまうことへの違和感だったり、どこか自分の正しさを押し付けているように感じるようになったんです。ある時、『音楽の主役は私じゃないんじゃないか。あくまで私の音楽を聴いてくれた人も主役で、聴いてくれた人が自分自身と向き合ったり、私にとっても誰かにとっても、例えば自分を好きになる為の「きっかけ」になれる歌を歌いたい』と思う様になりました。それから歌詞や曲と、より深く向き合える様になれました。この曲は、自分の人としての成長や変化そのものを具現化したような楽曲です」と話す『enough』。


「意図的に思ったわけじゃなくて、活動を続け、人と出会い、向き合っていく中で、自然にこの考えに行き着いた」という彼女の嘘のないリアルな想いは、《救いの歌を歌いたかった わたしの為じゃなくて》と歌う歌詞にも表れているように感じられる。


まっすぐに自然体で美しく響く歌声と、リアルを切り取ったこの曲が、きっと誰かが変わるきっかけになるはずだ。


・のうじょうりえ『リンゴとライト』 (Documentary Music Video)



「実家に帰った時に母が嬉しそうに父の話をしていたんですが、庭を眺めながらぼそっと『幸せだな』と寡黙な父がつぶやいたそうなんです。その光景を見たおしゃべりな母が、娘の自分にその事を幸せそうに話してくれたのがきっかけで書きました。父がどうして『幸せだ』と呟いたのかは分からないんですが、愛とかそういうものの本質を感じてて、自分自身もいつか父の様に思える日が来たらいいなと思って書いた曲です」。そんな風に話してくれた『リンゴとライト』。


その言葉の通り、この楽曲を聴くと、家族のやり取りを通し、愛情というものを考える。誰かと生きることとは何か、愛とは何か、そんなことを考えさせられる1曲だ。



6月18日にはデビューアルバム『君を助けない』をリリース予定。
今回はそのデビューアルバムについての話も伺っている。
上記楽曲についてのお話と重複する部分もあるが、デビューアルバムについての理解をより深めるためにも、ノーカットでお届けしたい。

「優しい歌や救いの歌が歌いたいと思っていたけど、改めて、自分の過去の楽曲の歌詞を振り返った時に、自分の音楽で人に影響を与えようと思うことをおこがましく感じてしまったんです。だから、無理に音楽で人に影響を与えようと思うのではなく、自分自身や聴いてくれた人が、自分自身と向き合えるための音楽でありたい、そのためのヒントになるような歌を歌いたい、そんな歌を探したいと思うようになった」

「重い病で闘病している友人がいて、病気や心と向き合うこと、生きるということをより深く知っていく中で、音楽は医療にはならない、音楽で物理的に人を救うことは出来ないんだと、音楽や自分自身の無力さを知ったんです。でも同時に、音楽で人間は救われなかったとしても、人生において、生きる理由や希望は必要なものだともその友人に教えてもらいました。音楽は救いじゃなくて、あくまで小さな希望であればいいんじゃないかと。思い返せば、自分がファンだったアーティスト達が自分を認識して『君を助けるよ』と言われた事はない、直接助けられたことはない、それでも音楽に小さな希望を貰ったんです。「君は、誰かの助けがないと生きていけない人間なんかじゃない」って教えてもらった。だからこそ私も「助ける」なんて言わずに、誰かが自分で自分を好きになる、自分で自分を大切にしようと思える、そんなきっかけになる歌を歌いたい。そんな小さな音楽になりたいんです。」

「人って、助けて貰い過ぎると依存したり甘えてしまったりして、自立できなくなるじゃないですか。誰かに感謝されなくても、その誰かが自分の足で歩いていく為の音楽になりたいと今は思っています。あくまで聴いた人が自分と向き合ってくれたらいいな、と。今までは、どこかで嫌われたくないから、当たり障りのない良い人を演じてしまったり、人の目を気にしていた部分もあったかもしれないけど、これからは本当のことや、誰かへの素直な気持ちを大切に、優しさや人間の本質と向き合って、偉そうじゃない、自然体な音楽を歌っていきたい」


そんな想いでつけられたタイトルが、彼女のデビューアルバム『君を助けない』。
一見鋭くインパクトのあるタイトルに「誰かの生きる小さなきっかけにさえなれたら」という彼女の想いが深く反映された1作だ。

これまではシンガーソングライターとして一人で活動をしてきた彼女だが、今回のアルバムは『それでも世界が続くなら』がプロデュースするレーベル『YouSpica』からのリリースとなる。それについても「レーベルと楽曲について深く話し合うことで、今まで知らなかった自分に気づいたりと、音楽についてより深く向き合うきっかけになった」と話してくれた。


「レコーディングの手法も機械的なことは極力減らし、クラシックに近い、生々しい手法を選んだので、より呼吸や心が伝わるようなレコーディングになったと思います。そういう音楽的な部分もアルバムを通して感じてもらえたら」とのことなので、是非6月を楽しみに待っておいていただきたい。



【リリース情報】



のうじょうりえdébut Album 

『君を助けない』
2025年6月18日、全国リリース決定。

8songs

発売:YouSpica AOVA
販売:PCI MUSIC(ポニーキャニオン)

予約:

初回限定盤(CD+エッセイ(文庫本))

https://tower.jp/item/6802652

通常盤

https://tower.jp/item/6802655