榊原ゆいは1990年代後半より第一線で活躍し続ける声優であり、アーティストである。
声優として『スーパーロボット大戦』レオナ・ガーシュタイン、『そにアニ』富士見恵那、『CHAOS;HEAD』岸本あやせ、『アズールレーン』オーロラ、『Dies irae』マリィなど幅広い役柄をこなす。『アヒル隊長』の声と歌唱、A.I.VOICE『琴葉茜・葵』の声も担当。
『CHAOS;HEAD』『STEINS;GATE』等の科学ADVシリーズを歌う「PHANTASM」ボーカルのFES(フェス)としても活躍。
ゲームキャラクターのモーションキャプチャのアクターなどマルチな活動を展開している。
そしてその活動の”濃さ”がとてつもないこと。
声優ファンに榊原のイメージを聞くとそんな答えが返ってくるくらい、歌って踊るイメージが強い。
多い時は1年に60曲以上の作品をリリースしたこともある彼女であるが、昨今ではソロライブの開催ペースは年々上がっており「歌って踊る」イメージはより強固なものになっているかもしれない。
ワンマンライブで多い時には30曲ほどの楽曲を歌い踊り、それを1日2公演こなしてしまう。
衣装作りや選定、所属事務所の運営なども含めて、”榊原ゆい”の活動に関わる全てを自らトータルプロデュースしているのである。
実地でのイベントやライブ、彼女のYouTubeチャンネルにおける定期ラジオ『LOVE×Radio』などでもその温かな空気感を感じることができる。
会場やラジオのお便りには「数十年来の榊原ファン」という方もいれば、「1曲しか知らないけどその曲を聴きに来た」「榊原のことは知らないけど出演作品が好きだから興味を持った」というライトな方の参加も多く、中には「15年くらい前にラジオを聴いていたことがあり、先日たまたま思い出し検索してみたらまだ元気に活動していて、驚いて思わず筆を執った」というラジオ投稿者も。
ディープなファンの方が楽しめるのはもちろん、榊原のことをあまり知らない方、長いブランクがある方でも楽しめるような空気感とコンテンツ内容となっているので、本稿を見て彼女に興味を持った方、思い出した方はぜひライブ会場やラジオに遊びに行ってみて欲しい。
ライブ前には特設ページが設置され、任意で確認できるようセットリストが公開されていることが多い(知りたくない方向けの配慮も有り)の。
事前に自分の目当て曲があるか確認してから参加を決めることができるので安心だ。
一度足を運んでしまえばそこには、見て聴いて乗って楽しめる榊原ゆいの情熱が詰まった笑いあり涙あり感動ありのステージが広がっており、気づけばその世界に没入してしまうこと請け合いだ。
① 「MONSTER」
ヒップホップ要素を含んだダークなエレクトロニカサウンドが印象的で、歌だけではなくダンス及びその振り付けや作詞作曲も榊原が手掛けている。
歌とダンスにおいては男性ダンスボーカルユニットを彷彿とさせるような、クールでワイルドなセクシーが大きな魅力。
これまで様々なキャラクターを演じ様々なテーマの楽曲を歌ってきた榊原の中でも異色の作品で、その出で立ちは”令和のディーヴァ”。
なお本アルバム2トラック目にはPCゲーム『悠久のカンパネラ』のテーマソングである「奇跡のブラーヴィ」が収録されているが、こちらは非常に爽やかで可愛い声・曲である。
全体を通して非常にバラエティ豊かなアルバムに仕上がっているため、全曲聴き通す楽しみ方も強く推奨したい。
② 「Again」
榊原が梶浦緋紗子役で出演していたテレビアニメ『乙女はお姉さま(ボク)に恋してる』の挿入歌で、作詞・作曲を榊原が担当した2006年リリースのシングル作品。
CD化するに辺り「Beautiful dayだとMVのイメージが湧かない」と感じた榊原は、「Again」をA面曲にする案をプロデューサーに自ら提案。
その案が認められこの形となったそうだ。
本アニメ制作以前から原作ゲーム作品の”切なくて美しい”描写に感銘を受けていた榊原は、その美しさを可能な限りそのまま表現できるよう尽力したとのこと。
特に季節や景色の描写が秀逸で、聴いていると目の前に少し乾いた風の吹き抜ける景色が浮かんでくるような、秋の香りが鼻をくすぐるような、肌寒くなった夕暮れに沈む夕日の温かさが肌を包むような……五感を全てで季節を感じさせてくれる作品に仕上がっている。
そのサウンドはゆったりとしながらも強い芯を持ったミディアムバラードで、きらびやかなストリングスサウンドに包まれて伸びやかにメロディを奏でる歌声が素晴らしい。
「弦楽器の収録を見学させていただけたのですが、作曲時に自身が描いていたイメージ通り……イメージ以上の美しさと鮮明さで自分の曲が彩られていく瞬間を目の当たりにしてしまって。感極まって弦楽器隊のリーダーさんに『素敵な作品にしていただいてありがとうございます!』ってお礼をお伝えしたんです。そうしたらリーダーさんが『あなたの書いた曲が素敵だからですよ』って返してくださって……。こんな素敵な音色を奏でる方がそんな風に言ってくださって、作曲家としてジーンと来てしまいました。自身の創作活動の中でも一番印象に残っているできごとの一つです!」と、思い出深いエピソードを語ってくれた榊原。
シンプルに”良い曲”である本作だが、そういったバックストーリーを思い浮かべ楽しむのも一興だ。
③ 片翼のイカロス
テレビアニメ『H2O -FOOTPRINTS IN THE SAND-』のオープニングテーマで、作詞作曲を上松範康が、編曲を藤間仁が務めた2008年のシングル作品。
メリハリあるドラマティックな展開の疾走感溢れるロックナンバーを美しい弦楽器たちが彩る、00年代を象徴するようなサウンド。
特に2番サビからラストのサビへと向かっていくパートの表現力は出色。
榊原ゆいのキャリアの中でも1・2を争うほどその歌唱力と表現力を極限まで引き出した作品である。
ライブでも特に好評な作品で、聴く者の情緒を揺さぶる生歌の迫力は圧倒的。
ぜひ生で音の波を浴びて欲しい楽曲だ。
複雑な家庭環境を抱えながらも冗談が好きで能天気で妹思い……当時の美少女ゲーム/アニメの中でも異質で一筋縄ではいかないキャラクターである。
可愛らしいキャラクターデザインとは裏腹に重さや暗さのある本原作ゲーム/アニメであるが、「はまじはその中でも明るく癒やしてくれる太陽のような存在」と柳原は語る。
「だからこそ”どのヒロインよりも一番可愛く!”という気持ちで収録に挑んでいた」という彼女だが、そのか細く可愛らしいハイトーンボイスには大苦戦。
収録が朝10時くらいから始まることの多い現場であったため、もともとの地声が少年系の低めなハスキーボイスである彼女は、誰よりも可愛く演じるために早起きしてシャワーも浴びてから現場に足を運んでいた。
しかしそれでもどうしても声が立ち上がらず、野太い声が出てしまった時に共演者たちから「オッサン出てきたよ(笑)」と爆笑され現場が和むという事件があったそうだ。
「10/11(土)に私のバースデートークイベントが、10/12(日)にバースデーライブがあるので、ぜひ遊びにいらしてください!
今回ご紹介していただいた曲もライブで歌っちゃいます。私の歌は生歌で浴びて頂いた方が絶対に楽しくて感動してもらえると思うので、ぜひ!
12月にもライブを予定しているので、生の榊原ゆいを感じに来てくださったら嬉しいです!」
「私が声を担当させていただいているVOICEROIDの琴葉茜・葵という双子の姉妹がいるんですが、彼女たちと榊原ゆいでコラボしてみたいです!
実現した時どんな形になるのか想像もつかないんですが、琴葉姉妹ファンも榊原ファンもどちらも楽しめるものにできたら嬉しいです」
ライブへの意気込みや将来の夢について聞かせてくれた榊原。
ライブに作品リリースに夢の共演に……ますます彼女から目が離せなくなりそうだ。
『Happy★LOVE×Live2025~Talk&Live 2Days Party~』
夜公演: 開場 17:00 開演 17:30
アコースティックパートゲスト:藤井陽一(ギター)
特設HP:http://www.sakakibarayui.com/info/hll2025/