
n.k(エヌケー)は、YouTubeなどの配信媒体にてVOCALOID楽曲を中心に作品を発表しているボカロPである。
n.k/Garaktとして一つの大きな背骨を持ちながらも、多彩な世界を展開している。
① このふざけた素晴らしき世界は、僕の為にある / 初音ミク × n.k | This Silly Wonderful World Exists For Me
2015年にリリースされた自身の初音ミクオリジナル曲を、発表10周年を記念し「ミクとn.k(Garakt)のデュエット」というスタイルでセルフカバーした作品。
同時に、セガの大人気音ゲー作品『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』への収録を記念するものにもなっている。
原曲から大幅なリアレンジリミックスが施されており、「10年前の名曲が2025年最新のサウンドでよみがえる」というファンにとっても非常に嬉しい初リメイクである。
元々「深く考えず勢いで作ろう」というテーマで制作されたという本曲。
それゆえか「n.kらしさ」が非常に色濃く出ており、ボカロ曲としては王道でキャッチーな部分を持ちながらも彼らしい一筋縄でいかないセンスに溢れている。
やや和風テイストなサウンドもthe n.kといった趣き。
リメイクに当たっては全編打ち込みだったサウンドが生バンド音源となっており、より強い推進力とグルーヴが加わり、さらにノりやすい熱い内容に仕上がっている。
「鬱屈とした世界の中でも何とか頑張って生きていこうぜ!」というメッセージが込められているようにも取れる本曲。
10年前と比べさらに暗いニュースが増え生き辛さを感じやすくなってしまった現代は、本曲がより輝きやすい時代であると言えるかもしれない。
疲れてしまった時は、本曲をバックにヤンヤヤンヤイヤと発散してエネルギーを補給して欲しい。
② Garakt『愛広者』Lyric Video
2025年リリースのn.kによる初音ミクオリジナル曲はGaraktがカバーした作品。
2ndアルバム『タマユラ』の1曲目にも収録されている。
ボカロPとしてのn.kはフックが効いた独自のアプローチを取ることも多いが、SSWとして歌う際は非常にストレートな表現を見せることが多い。
本曲においてもそのストレートで優しい歌声が印象的で、ミディアムテンポの柔らかいサウンドとともに聴く者の心にスッと染み込んでいくような甘さ、キャッチーさを持っている。
それはまるで、長時間の仕事や勉強で疲れた際に飲む一杯のコーヒーに入れる角砂糖のよう。
舌先から脳を経由しその甘さが全身に広がり、その疲れを取り除き新しい活力を吹き込んでくれる。
そんな甘い歌声で歌い上げる本作は非常に優しくて爽やか。
キーが違うこともあってか初音ミクver.以上に落ち着いた雰囲気で、聴手により強い安心感をもたらしてくれる。
何気ない日常の中で泣いて笑って、ちょっとしたことに幸せを感じる日もあれば落ち込むこともり。
時には全て投げ出したくなることもある。
アップダウンはあるけれど、それでもいつでも地球は変わらず回っている。
そんな当たり前であるが忘れがちな事実を歌っているのが本曲。
そのメッセージを受け取り手が自由に解釈して糧としていけるのもシンプルでストレートなGarakt作品ならでは。
そういった意味でも非常に優しく、複雑な世情を生きる現代人にとってより心に染みる曲となっている。
なお、アルバム『タマユラ』には非常にバラエティ豊かな魂を揺さぶる13曲が収録されているが、どの作品も違った形の”優しさ”を持っている。
ぜひアルバムとして流れで全曲を通して聴き、その様々な優しさの形を体験してみて欲しい。
③ あの子、冥土さん / 初音ミク - n.k
アルバム『タマユラ』からのGaraktオリジナル曲で、2025年初音ミクVocaloid版として発表している作品。
軽快なアップテンポで中華を感じさせるサウンドが心地良く、特徴的なメロディやリフレインが強く耳に残る。
「ナーナナーナーナーナーナ」のフレーズはつつい口ずさんでしまうほどキャッチー。
そんな明るくポップな本作だが、その歌詞は捉え方によっては”闇”と”病み”を感じさせる内容だ。
一見身の回りの世話をしてくれる親切な”メイドさん”の話だが、”冥土”さんと表現されているのは何故なのか。
“病んでいるあなた様の査定”とは何なのか。
「天国じゃなくていい」「地獄の果てまで連れてって」とは文字通りの意味なのか。
主人公が「会いたい」のは何者なのか。
何かを匂わせるパーツは沢山あるが決して直接的な答えを書かないのがとてもn.kらしく、人にとって解釈やアフターストーリーが大きく変わる曲である。
細部を描写しすぎず想像の余地を残してくれる点は、良質な小説や映画に触れた後に近い視聴後感だ。
シンプルに曲としても親しみやすく入り込みやすく、それでいて考察を巡らせて楽しむことのできる一粒で二度美味しい傑作。
さらに本作はメディアミックス展開に向いたテーマでもあるため、今後また違った形で「何粒分も楽しめる作品」に発展することも期待したい。
これからもきっと音楽を通した”謎掛け”で我々を楽しませ、考える機会を与えてくれるだろう。
会場に足を運べる方はぜひ生でもn.kワールドを体感し、その充足感をさらに高めにいってみて欲しい。
【ライブ情報】

◆11月8日 Zepp Shinjuku 『しじたみん企画ウルトラハイパーライブフェス2025(確)』
出演者:詩人さん/ぐるたみん/あじっこ/__(アンダーバー)/胃腸薬/n.k/柿チョコ/Kradness/しゃむおん/nero/花たん/PARED/ピコ/ぽこた/松下/みーちゃん/ゆうりちゃん!/ラブマツ/らむだーじゃん/Rio/レジ

https://t.livepocket.jp/e/gentou
※詳細はn.kのSNSやHP等にて発表予定!








