n.k(エヌケー)は、YouTubeなどの配信媒体にてVOCALOID楽曲を中心に作品を発表しているボカロPである。

ボカロPとして初ミリオンを記録した「このふざけた素晴らしき世界は、僕の為にある」はYouTube再生数が700万回を超えている。
初音ミクを起用することが多く、flowerやIAの作品を手掛けることも。

昨今の音声合成ソフトは生身の人間と聞き分けられないレベルのリアルな歌声を売りとしているものも多いが、n.kのプロデュースする作品では「VOCALOIDらしさ」とも言うべき機械っぽさを残しつつ、感情豊かな調声で生命の息吹を感じる歌声となっていることが大きな特徴。
しっかりと”初音ミク(あるいはflower/IA)”でありながらも、躍動感ある生き生きとした体温を感じるパフォーマンスを引き出している。

ボカロP活動と並行してGarakt(ガラクト)の名義でシンガーソングライターとしても活躍しており、自身のボカロ曲のカバーやオフラインでのライブなども様々な活動を展開中。
持ち前のノスタルジックとポップロックが組み合わさったサウンドに、一度聴けば癖になる唯一無二な歌声を乗せ、聞く人の琴線に触れる音楽を届けている。
その活動範囲は非常に広く、マカオなど海外でのイベントにも出演。
自身の持つ独自の世界観をグローバルに浸透させている。

彼の作品はキャッチーでありながらも一癖二癖あるスパイスの効いたものが非常に多い。
王道なもの、独特な表現が満載なもの、風刺の効いたもの、小説や映画のように物語を追体験できるものなどその形態は様々。

n.k/Garaktとして一つの大きな背骨を持ちながらも、多彩な世界を展開している。


聴く者によって解釈が分かれる作品も多く、入口は同じでもリスナーがそれぞれ違う出口にたどり着くこともしばしば。
リスナーの数だけ答えがあり、ファンの数だけn.k/Garaktが存在する。
量子力学で言う“重ね合わせ”のような状態を彼の作品が持っているとも言え、それは正にシュレーディンガーの猫。
もしかすると彼は、様々な意味で”猫”と戯れているのかもしれない。




① このふざけた素晴らしき世界は、僕の為にある / 初音ミク × n.k | This Silly Wonderful World Exists For Me



2015年にリリースされた自身の初音ミクオリジナル曲を、発表10周年を記念し「ミクとn.k(Garakt)のデュエット」というスタイルでセルフカバーした作品。

同時に、セガの大人気音ゲー作品『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』への収録を記念するものにもなっている。


原曲から大幅なリアレンジリミックスが施されており、「10年前の名曲が2025年最新のサウンドでよみがえる」というファンにとっても非常に嬉しい初リメイクである。


元々「深く考えず勢いで作ろう」というテーマで制作されたという本曲。

それゆえか「n.kらしさ」が非常に色濃く出ており、ボカロ曲としては王道でキャッチーな部分を持ちながらも彼らしい一筋縄でいかないセンスに溢れている。

やや和風テイストなサウンドもthe n.kといった趣き。


リメイクに当たっては全編打ち込みだったサウンドが生バンド音源となっており、より強い推進力とグルーヴが加わり、さらにノりやすい熱い内容に仕上がっている。


「鬱屈とした世界の中でも何とか頑張って生きていこうぜ!」というメッセージが込められているようにも取れる本曲。

10年前と比べさらに暗いニュースが増え生き辛さを感じやすくなってしまった現代は、本曲がより輝きやすい時代であると言えるかもしれない。


疲れてしまった時は、本曲をバックにヤンヤヤンヤイヤと発散してエネルギーを補給して欲しい。



② Garakt『愛広者』Lyric Video



2025年リリースのn.kによる初音ミクオリジナル曲はGaraktがカバーした作品。

2ndアルバム『タマユラ』の1曲目にも収録されている。


ボカロPとしてのn.kはフックが効いた独自のアプローチを取ることも多いが、SSWとして歌う際は非常にストレートな表現を見せることが多い。

本曲においてもそのストレートで優しい歌声が印象的で、ミディアムテンポの柔らかいサウンドとともに聴く者の心にスッと染み込んでいくような甘さ、キャッチーさを持っている。

それはまるで、長時間の仕事や勉強で疲れた際に飲む一杯のコーヒーに入れる角砂糖のよう。

舌先から脳を経由しその甘さが全身に広がり、その疲れを取り除き新しい活力を吹き込んでくれる。


そんな甘い歌声で歌い上げる本作は非常に優しくて爽やか。

キーが違うこともあってか初音ミクver.以上に落ち着いた雰囲気で、聴手により強い安心感をもたらしてくれる。


何気ない日常の中で泣いて笑って、ちょっとしたことに幸せを感じる日もあれば落ち込むこともり。

時には全て投げ出したくなることもある。

アップダウンはあるけれど、それでもいつでも地球は変わらず回っている。

そんな当たり前であるが忘れがちな事実を歌っているのが本曲。

そのメッセージを受け取り手が自由に解釈して糧としていけるのもシンプルでストレートなGarakt作品ならでは。

そういった意味でも非常に優しく、複雑な世情を生きる現代人にとってより心に染みる曲となっている。


なお、アルバム『タマユラ』には非常にバラエティ豊かな魂を揺さぶる13曲が収録されているが、どの作品も違った形の”優しさ”を持っている。

ぜひアルバムとして流れで全曲を通して聴き、その様々な優しさの形を体験してみて欲しい。


③ あの子、冥土さん / 初音ミク - n.k



アルバム『タマユラ』からのGaraktオリジナル曲で、2025年初音ミクVocaloid版として発表している作品。


軽快なアップテンポで中華を感じさせるサウンドが心地良く、特徴的なメロディやリフレインが強く耳に残る。

「ナーナナーナーナーナーナ」のフレーズはつつい口ずさんでしまうほどキャッチー。


そんな明るくポップな本作だが、その歌詞は捉え方によっては”闇”と”病み”を感じさせる内容だ。


一見身の回りの世話をしてくれる親切な”メイドさん”の話だが、”冥土”さんと表現されているのは何故なのか。

“病んでいるあなた様の査定”とは何なのか。


「天国じゃなくていい」「地獄の果てまで連れてって」とは文字通りの意味なのか。

主人公が「会いたい」のは何者なのか。


何かを匂わせるパーツは沢山あるが決して直接的な答えを書かないのがとてもn.kらしく、人にとって解釈やアフターストーリーが大きく変わる曲である。


細部を描写しすぎず想像の余地を残してくれる点は、良質な小説や映画に触れた後に近い視聴後感だ。

シンプルに曲としても親しみやすく入り込みやすく、それでいて考察を巡らせて楽しむことのできる一粒で二度美味しい傑作。


さらに本作はメディアミックス展開に向いたテーマでもあるため、今後また違った形で「何粒分も楽しめる作品」に発展することも期待したい。




最後に、n.k本人に今後の活動について語ってもらった。

「11月と12月に幾つかライブを控えているので、今はそちらに向けて全力で準備を進めています。楽しい時間をお届けできればと思いますので、予定が合う方はぜひ遊びにいらっしゃってください! ※イベント詳細は後述」

「これからも未だ見ぬ音やモノ、事象や文化に触れ沢山の事をインプットし、それを音楽にして届けたいです。自身の琴線に触れる音、そして僕自身が一番聞きたい音楽を作ることが目標です。これからも音源やライブを通してそういった音楽をみなさんにお届けしていければと思っていますので、少しでも興味を持ってくださる方はぜひn.k/Garaktの作品に触れて楽しんでくださったら嬉しいです!」

様々な事象から吸収し独自の世界を築き上げ、それを「分かりやすく」「だか分かりすぎない」絶妙な塩梅でリスナーに届け続けるn.k。


これからもきっと音楽を通した”謎掛け”で我々を楽しませ、考える機会を与えてくれるだろう。

そして一通り考え感じ楽しんだ充足感が、多くのリスナーにとって日々を過ごしていく糧となっていくのかもしれない。


会場に足を運べる方はぜひ生でもn.kワールドを体感し、その充足感をさらに高めにいってみて欲しい。



【ライブ情報】



◆11月8日 Zepp Shinjuku 『しじたみん企画ウルトラハイパーライブフェス2025(確)』

OPEN 17:00 START 18:00

出演者:詩人さん/ぐるたみん/あじっこ/__(アンダーバー)/胃腸薬/n.k/柿チョコ/Kradness/しゃむおん/nero/花たん/PARED/ピコ/ぽこた/松下/みーちゃん/ゆうりちゃん!/ラブマツ/らむだーじゃん/Rio/レジ


https://l-tike.com/concert/mevent/?mid=222769




◆11月22日 GARRET udagawa 『幻燈ノ宴』
一部『暁』 開門12:30 開幕13:00
二部『宵』 開場17:30 開幕18:00

出演者:n.k , ちゃげぽよ。 , 梵人 , いいんちょ , 胃腸薬 , ぐるたみん , よるきち , KYS


https://t.livepocket.jp/e/gentou



◆12月25日 クリスマスライブ @池袋 LiveHouse mono
時間:夜

※詳細はn.kのSNSやHP等にて発表予定!